俺日:エイプリルフール特別編!その2~嘘つきは変態の始まり~
こちらの季節特別編はものすごく久しぶりの更新ですね。
今日はエイプリルフールということで、急いで書き上げました。
今回、挿絵はデジタルで挑戦してみました。マウスです。ペンタブ無いです。
それでは、行ってらっしゃい。
時は4月1日。全国的に嘘が大荒れするこの日。
そう、エイプリルフールだ。
ところで皆さんはエイプリルフールをご存知だろうか? いやまぁ、そりゃおそらくほとんどの方がご存知だとは思うけど。
……もし万が一ご存知ない方がいるかもしれないので、とりあえずざっと説明しておこうと思う。
エイプリルフールというのは、簡単に言うと嘘をついていい日なんだ。
嘘をつき、相手を騙し、それでも最終的には嘘だとばらす。要するに嘘ついたり、騙されたりして、『嘘』を楽しむ日なのである。
と、言うわけでだ。
俺は今日、ありとあらゆる知り合いにホラ吹いてまわろうと思います。……え? 俺の年? 17歳だよ。高校生だよ。いいじゃねえか高校生でハッスルしたって。
イベント事は盛り上げる。それが俺のポリシーなんだ。
それじゃ、ちょっくら誰かを騙しに行くとするか!
俺日:エイプリルフール特別編!その2
~嘘つきは変態の始まり~
チュンチュンと小鳥がさえずる午前9時ちょっと過ぎ頃。
俺、山空 海は、上半身裸で姿見の前に佇んでいた。
「ふふふ……まずはやっぱりアイツだろう……」
悪戯心丸出しで怪しくニヤける俺は、昨日の夜近所の百均で買った『かの有名な七つの傷シール』を己の肉体にペタペタと貼り付けていく。
そしてその後そんなに時間もかからないうちに七つ全て貼り終えると、俺は姿見に向かってボディービルダーがするような、筋肉を存分に表に出すポーズを次々に決めていく。
今の俺の気分はそう、すでに世紀末だったのである。
「しっかし、俺ってば筋肉ねぇな……」
鏡に映った自分の身体を眺めていると、つくづくそう思ってしまう。
このシールの元となった傷を持つホアタァな方と比べると、俺の肉体はあまりにも頼りない。自分で見てもそう思うほどに、俺は華奢なのだ。
別に太っているというわけではないと思うのだが、見た感じ腹筋なんぞ割れておらず、力こぶはあまりにもプニプニしててまるでこんにゃくのよう。
最近は、昔よりも動きまくっていて心身ともに疲れきっているはずなのだが……なぜこんなにも情けない身体なのか。こんなんじゃ恥ずかしくてみんなと一緒にプールも行けねえよ。
「……親しい友達がいるとこんなことも気にするようになるのか……。なんか新鮮だぜ……」
まぁなんだかんだ言っても本編ではすでに親しきみんなとプールへと足を運んでいるのだが、あの時は女子なんてあのガキンチョとアイツの妹だけ。
ガキンチョは文字通りガキンチョだから俺の肉体なんて気にしないだろうし、もうひとりの方は物凄く照れ屋であがり症なので、たとえ相手が俺だろうと『男』の肉体を見るのはちょっと意識しちゃって無理だと思うし。
残りのメンバーはもう全員男だったから、男は多分そもそも気にしないだろう。
そうつまり、前まではこの身体で人前に出ても全然大丈夫だったわけだ。……でも今は違う。
今は、俺の知り合いに新たに女子がいる。
しかもそいつは、自分で言うのもなんだが俺にベタ惚れしている奴なんだ。ベタ惚れしているということは、俺のことが好きだということ。好きな人の肉付きなんかは絶対に気になるはずなのだ。多分。
まだまだ季節は4月で春真っ盛りな時期だが、春が終われば夏が来る。夏が来ればプールにだって行くだろう。もしそうなると、当然アイツもついてくるはず。
自慢じゃないが、俺はまだ奴には自分の肉体を晒したことがないのだ。なんか露出狂みたいなセリフだが、とにかくそういうわけで。
そんなアイツが、俺のこのナヨナヨとして、もやしみたいに頼りない肉体の持ち主だと分かると、きっと幻滅するに決まっている。それは個人的になんか嫌だ。
自分のこんな頼りない肉体を晒すくらいなら俺は今から筋トレに励む。
よし、そうと決まれば筋トレだ。まずはスクワット100回に挑戦だ!!
「フッフッフッフッフンッフンッフッフッ」
スクワットのやり方といえば、頭の後ろで両腕を組み、その場でまっすぐと膝を曲げ腰を下ろしたあと、その体制を崩さぬままゆっくりと立ち上がる。
そんな感じで、腰を下ろすタイミングで息を吐き、立ち上がるときは歯を食いしばり、ちゃんと立ち上がれたらまた次へ行くために息を吸うのだ。
以上のことを高速で繰り返すと、先程のような「フッフッフッフッ」というリズミカルな「フ」が口をついて出てくるのだ。まぁほぼ鼻息の音なのだが……。
だがしかし、その完璧な形は長くは持たない。
しばらくすると、この「フ」が、吐息混じりの色っぽい「フ……ゥ~ンッフゥン」みたいな感じになってくるのだ。
そしてそのタイミングこそが、俺が己の体力の限界を悟り若干後悔し始めている時なので目安にしてくれるとありがたい。
「フッフッフッフッ……ハッ……んッ……フッ……ふぅん……ぬぅぁあ……ふんっ!!」
さすが俺様といったところだろうか。開始10秒足らずでもう悟りの兆しへと突入気味である。
だがしかし、今回の俺はいつもとは違うんだ。ここで諦めたら男がすたる。目指せ100回新記録!!
「う……んっはッ……!! ふんっ……うっ……んんっ……!! ぬぁっ……ぬぅ……ぅんぁあっ……!!」
太ももとふくらはぎ、腰や肩や腕。ありとあらゆるところに今まで経験したことないような負荷がかかっていく感覚。このまま筋肉が壊死してしまってもおかしくないほどの運動。
軽く意識が飛びかかっている俺の中にはもう、「気合」と「根性」の、青春スポ根のような単語しかなかったが、これも全部、近い未来みんなとプールへ行くため。友達と。女子と。みんなと楽しく出かけるのは俺の永遠の夢なんだ。
……昔はこの俺に異性の友達が出来るなんて思ってなかった。肝心の相手はちょっと頭のネジが一本緩んでいるような奴だけど、俺にとって大切な友達には変わりないんだ。
だから俺は頑張れる。そんな奴らと一緒にプールに行くために、俺は頑張れるんだァァっァ!!!!!
「ぬぉああ……!!! んっ、ふっ……!!!」
「こここここんな朝っぱらからナニしてるんですか先輩ーーー!!!!!」
噂をすればなんとやらだろうか。
バンッ!!! という豪快な音と共に、俺の部屋のドアが開け放たれと思いきや、そこには顔を真っ赤にして取り乱している奴が……。
「う、うわあぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!!!」
「き、きゃぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!!」
俺と奴の悲鳴合唱は家中を駆け巡り、駆け巡りすぎて外にまで漏れ出し、電線に止まっていたであろう小鳥がバサバサと羽音を立てて逃げていく音が家の中にいる俺にまで聞こえてきた。
だがしかし今はそんなことどうでもいい。
そうなのだ。元はといえば俺はこの肉体をコイツに見られたくなかったがために鍛えていたのに、もう、見られてしまったのだ。
なんのための努力だったのか。なんのための決意だったのか。
俺の一世一代の頑張りは、この日、二人の悲鳴によってチリと化したのであった――――――――
○○○
「――で、海兄ぃ。本当はどうなの?」
「だからさっきから言ってるじゃねえかよ!! 俺はただスクワットをだな……!!」
「どこの世界に上半身裸で変なシールくっつけてスクワットしてる気持ち悪い男がいるのよ!!」
「ここに居るわ!! 気持ち悪くて悪かったな!!」
「またそんなこと言って!! えいぷり……ふるー……? とかいう日だからって適当なこと言っても私は騙されないよ!! ユキちゃんだって泣いてるじゃん!! ねぇユキちゃん?」
「はいです……泣いてますです……」
「こんな事実、嘘になるなら俺が一番嘘にしたいわ!! あと泣いてる奴は泣いてるなんて言わねぇよ!!」
二人の女子に囲まれ睨みつけられながら、はぁはぁ……と、肩で息をしつつ正座してる俺。
なぜこんなことになってしまったのか。それはそう。あのあとのことになる。
そう、あのあと。俺がスクワットしてるのを目撃されたあとのことだ。
俺の姿を見たコイツ……白河 雪ことユキは、一人で勝手にパニックになって一階のリビングにいたみんなに色々と誤解を吹き込んだ。
そんなユキの言葉を聞いたみんなは、それが誤解だとも知らずに信じ込んでしまって……。
「見損なったよ海兄ぃ!!」
とまぁ、こんな具合に今に至るのである。
ユキの誤解を間に受けたみんな。……主に竹田 琴音を筆頭とし、オメガ、エメリィーヌの三人が俺の部屋に侵入してきたかと思うと、その場で俺は拉致られ一階へと運ばれた。
そしてそのまま床に正座させられているのだ。
「そもそも、先輩はデリカシーが知欠してるんですよ!! 普通女の子が家にいるのわかってて上半身裸でスクワットなんてしないですよ!?」
「いやいやここ俺の家だから。もう俺も慣れてきて感覚麻痺してるけどお前ら不法侵入だから」
「話をそらさないでくださいです!!」
今もなお顔を真っ赤にし、それでも鋭い口調で俺を怒鳴りつけてきたコイツは二度目になるが白河 雪だ。
嬉しいことに俺のことを好きでいてくれているらしいのだが、ちょっと妄想癖がありアタマが弱いので、とても残念な女の子。15歳の高校1年生。
初めて会ったときは持ち前の綺麗で艶やかなその黒髪を後ろで二つに結っていたのだが、今はなぜか軽くポニーテールにしている。
髪型が変わればだいぶ印象が変わるが、全てにおいて似合っているところから見るとユキは結構美人な顔立ちになるのだろうか。よくわからないけど。
……そして、そんなユキととても仲の良い女の子が……。
「海兄ぃ、ちゃんと話聞いてるの!?」
ご存知、竹田 琴音である。
中学一年生の13歳にして、とても恐ろしい女の子だ。
まだまだ子供のあどけなさが残る顔立ちで、全体的に発展途上な彼女だが、怒るとすごく怖いしなにより強い。琴音なら漫画とかによくある首にチョップしただけで相手の意識を奪うわざとかも繰り出せるんじゃないだろうかと錯覚してしまうほどに強い。
実は彼女、こう見えても結構恥ずかしがりで、人見知りなんかも激しく、人前に出るとすぐに何も言えなくなってしまうほどのあがり症なのだが……最近はとある変態のおかげか感覚が麻痺してきているらしく、あがり症を克服しかけているとかいないとか。
ちなみにその変態っていうのが……。
「こっとねちゅわぁぁぁァっぁあああん!!!!」
まいどまいど開口一番は必ずと言っていいほどに高確率でこのセリフを叫びながら、お気に入りである琴音に抱きつこうとしてキツイ制裁をくらっている……鳴沢 恭平こと、オメガである。
コイツは自他共に認めるイケメンなのだが、やはり自分がイケメンだと自覚している奴に残念じゃないやつなどいない法則なわけで。3歳以上、中学生以下は恋愛対象外という極度のロリコン。
だがそんなオメガは高校2年の16歳なので、意外と同世代もイケるらしいことが判明した今日この頃。
そんな彼は発明家であり、作曲能力にもたけており、メガネであり、銀髪でもあり、おまけに俺の家に居候中というまさにオールマイティーな謎スキルを持ち合わせる変態なのだ。
あ、そうそう。「オメガ」ってのはオタクでメガネな事から付けたコイツのあだ名で、俺だけが愛用しているんだ。
「いつもいつも事あるごとに「琴音ちゃん琴音ちゃん」って……恭兄ぃは他にやることないの!?」
「そんなもの、琴音ちゃんの可愛さに比べれば廃品だよ」
「廃品って……ゆ、ゆに……ゆーにー……? あ、ユニコーンな例えだね」
「こ、琴音ちゃんもしかしてユニークって言いたい……?」
ご覧のとおり、琴音と変態はそれほど悪いというわけでなく、被害者たる琴音にとってももういつものことなので一種の儀式みたいな感じになっちゃってるんだと思う。
ついでに、琴音の英語の苦手っぷりも並行して通常運行である。変態であるオメガをも圧倒するそのバカっぷりに、俺は呆れを通り越してもはや感心する始末だ。
「誰が馬鹿だ!!」
「え、あ、俺また喋ってた?」
「バッチリ聞こえてるよ!! 傷つくからその無意識に喋っちゃうクセ何とかしてよ!!」
なんかしらんけど理不尽にキレる琴音。そう、こんなことになってしまったのも、全ては俺の“クセ”のせいなのである。
俺という人間は、なぜか無意識のうちに考え事を暴露してしまうという親切設計らしいのだ。もちろんのこと指摘されるたびに暴露しないように意識するのだが、意識してしまうと今度は表情に出やすいらしく……。
みんな超能力者なんじゃないかと疑ったこともあるくらいに、俺の考えはバレバレらしい。悲しいぜ。
「まぁ、カイの場合みんなが超脳力者なんじゃなく、カイが分かり易すぎるだけなんヨがね~」
ほら、早速俺の考えを読み取ったガキンチョがここに。
落ち着きがないのかなんなのかわからないが、意味もなくテーブルの周りををふらふらしているこのガキンチョの名は、エメリィーヌ・ジョセフ。
「ジョセフ言うなんヨ!!!」
「あ、すまん」
言葉の通り、エメリィーヌは自分の名前のジョセフを大変嫌っているらしく、それを口にするとすごく怒る。
今はまだガキンチョのくせに、将来は絶対に美人になるであろう顔立ちと風貌をちらつかせる超絶美少女な宇宙人。
そう、コイツは“宇宙人”なのだ。
非現実的なのは分かっている。でもある日いきなり空から降ってきたところを目撃してしまった俺にとって、もはやそんな単語こそまさに非現実的なのである。
天然のウェーブを彩りキラキラと輝くセミロングな金髪を風になびかせているコイツは、遠くの惑星からこの地球にはるばる家出してきたらしく、今現在俺の家に居候中。
オメガの銀髪は染めているので人工的に作られたものだが、エメリィーヌの金髪は天然モノ。たとえ丸坊主にしても黒じゃなく必ずその色の毛髪が生えてくるというのは、日本人で黒髪しか生えてこない俺にとってはなんだかちょっと不思議な人体の神秘である。
「……あ、そうそう。いいかエメリィーヌ!! 俺は考え事を暴露してしまうんじゃない。嘘が付けない心優しい人間なんだよ!!」
「どの口が言うんヨか」
うっわCOOLだねキミ。
「まぁまぁ、そういう性格が海のいいところでもあるわけなんだしさ。別にいいじゃねーか」
唯一俺のことをかばい、なだめてくれたのは琴音の実の兄であり俺の中学からの親友でもある竹田 秋。俺と同じ17歳の高校2年生。
全てにおいて普通な地味な奴だ。
「ってうぉーい!!! いつもいつも斬新な紹介してくれるなお前は!!! ありがとよ!!!」
「いやいや、当然のことをしたまでさ。礼には及ばねえよ。」
というわけで、俺を含め以上の6名が俺の仲間たちで……。
「おい海てめーまとめんな!! 謝るから俺のことをちゃんと紹介してくれよ!!」
「何も悪くないのについに自分から謝っちゃったんヨ」
「秋先輩……なんて不憫な子……」
「俺は不憫じゃねぇーーーー!!!!!」
エメリィーヌとユキの畳み掛けるような憐れみの目に、地面に両膝を付いた秋はなぜか両手でガッツポーズをしながらエビのごとく後ろに反って涙を流している。
お前はもうリアクション芸人にでもなればいいと思う。
「海も頼むからちゃんとした紹介してくれ!!」
親友に泣きながらお願いされたとなっちゃ、これは紹介せざるを得ない。
というわけで、秋は琴音というわがままな妹を兄としてずっと面倒見てきたからなのか、いつも落ち着きがあるという印象が強い。正直、秋が本気で誰かに怒っているところを俺はあまり見たことがないし、コイツが怒るときのほとんどは誰かのためだったりするので基本的には心の優しい奴だ。
ユニークな奴らが揃う中、普段から普通な秋は、みんなから地味人間だといじられるポジションが定着してしまったり、忘れられたりと、とにかく色々と悲しいやつなのである。
「ウチはシュウは優しいから好きなんヨ!」
エメリィーヌも自分で言っているとおり、最近エメリィーヌと秋はとても仲がいい。やはり現役兄貴というスキルがあるから子どもの心をつかめるし、優しさオーラが全身からにじみ出ているおかげで子供に好かれやすいのかもしれない。
なにはともあれ、良い奴だってことは間違いないだろう。凄く良い奴。
「あれ、なんか褒められてる気がしないんだけど」
「褒めてるよ」
「そうか。ならいいんだ」
では改めて、秋と琴音。エメリィーヌとユキとオメガ。そこに俺を含めたこの6人が、基本的に俺の家に集まってグダグダと遊んでいる。というわけだ。
エメリィーヌとオメガは居候だからいいとして、それ以外の3人は不法侵入だけどな。
「……で、海兄ぃ。制裁される心の準備は出来た?」
「え、急に何の話……?」
「海兄ぃが全裸で鏡を見ながらハァハァ言ってたって話」
「なんだそれ変態じゃねえか!!!」
「だから怒ってんでしょ!?」
「でも誤解ですから!!」
「嘘つくな!!!」
「嘘じゃねえよ!!!」
そうだった……俺はあらぬ誤解で裁かれるか否かの瀬戸際だったんだ……!!
運の悪いことに今日はエイプリルフール。俺が発言した証言すべてをエイプリルフールの嘘として処理されてしまうという、明らかにこちら側に不利な状況下に俺はあるのだった。
「ゆ、ユキは聞いちゃったんですからね!! 先輩が『ユキ』ですとか『肉体』ですとか『露出』ですとか呟いたあと、急に喘ぎだしたのをバッチリ聞きましたです!!!」
「誤解もここまで綺麗にいくと逆に清々しいわ!!」
「た、確かに妄想するのは先輩の自由ですし、その……そういうことをするのもわ、わかりますし……そのことは別に咎めるつもりはありませんですけど……でもやっぱりそういうことはその……と、とにかく先輩のバカ!!」
「ほら、ユキちゃん泣いちゃったよ!? どうすんの!?」
「いやいやどうもしねぇし!! なんならそういうこともしてねえし!! いやそもそもそういうことってなんなんだよ!!」
俺とユキ、二人して顔を真っ赤にしたまま、誤解はどんどん広がっていく。
エメリィーヌと秋、そしてオメガは、女子二人の威圧感からか数歩離れたところで温かい視線を俺に送ってきていた。
ふと「シュウ、“そういうこと”ってどういう事なんヨか?」というエメリィーヌの純粋な声と、その声を聞いて「そ、そういうことっていうのはつまり……そういうことだな。うん」という全く回答になっていない回答をした秋の声が聞こえてきたのだが、まぁそれはどうでもいいことだろう。
そんなことよりも今は、誤解を解いてこの窮地を脱せねばならない。
だがしかしいくら説明し誤解を解こうにも、エイプリルフールという枷があるせいで全て嘘だと思われてしまっている。
そこで俺は思った。
それならば……。
いくら発言しても嘘だと取られてしまうのならば……。
あえて誤解を受け入れてしまえばいいんじゃないだろうか!?
誤解を受け入れてしまえば、今度はそれが嘘になり、イコール真実を信じてくれるのでは? という浅はかにしてややこしい作戦だ。
あまりにリスクが大きすぎるが、なぁに、どうせこのままでもこいつらは信じてくれそうにない。ならば試してみる価値はあるというものなんじゃないだろうか?
そうと決まれば即決行だ。今やらずしていつやるのか。そんなもん……今しかねえだろ!!!
「……わかったよ。正直に言おう。俺は変態だ」
肉を切らせて骨を立つとはまさにこのことである。
今の姿を俺の両親が見たらなんていうのか。そんなことを思うと軽く涙が出そうである。が、俺はまだまだ肉を切らねばならない。
「俺は部屋で裸になって、自分に見惚れていた。そしてユキでイケナイ妄想に入り浸り興奮して次のステージまで行こうとした。が、ちょどその時にユキに見つかってしまいこうなってしまった。俺は今途中で止められてムラムラしているんだ。今だってユキや琴音を見るだけでイケナイ妄想がとめどなく溢れ出てきてしまっている!! だからお前ら調子に乗ってっと襲っちまうぞバカ野郎がぁぁぁぁ!!!!!」
俺は今自らを変態と認め、さらにそれを友人たちに布告しているのだ。常人ならきっと耐え切れないだろう。
……だが、俺は言った。たとえ自らを傷つけても勝利を勝ち取りに行った! 戦った!!
何もしないでそのまま地獄行きのエスカレーターに身を任せている奴らとは違い、俺は自ら行動を示したんだ。
この思い切りが吉と出るか凶と出るか。雰囲気的には鬼が出るか蛇が出るかの方がしっくりくる気がするのが不安だが、そんな不安なんぞに構っていられない。俺は、そういう戦いを強いられているんだ!!
「ひ、開き直ったぁぁぁ!!! ユキちゃん海兄ぃのヤツ開き直ったよ!! どうする!? 怖いよ!! 正直怖いよ!! 海兄ぃ顔怖いからそれが余計怖さを引き立たてるよ!!」
「ごごご、ごめんなさいです先輩!! ユキたち調子に乗ってましたです!! 今日はエイプリルフールですからそういうドッキリのつもりだったんです!!!」
「……え?」
大量の冷や汗を吹き出しながら、琴音とユキはこれらが『嘘』の芝居だったとあっさり種明かししだした。
ふと周りを見渡してみると、秋も、そしてエメリィーヌまでもが、ぷるぷると身体を震わせ笑いをこらえているように思えた。
……なるほどつまり、俺はみんなに騙されてたってことか。はは、完敗だ。すっかり騙されたよ。
確かに、違和感はあったんだ。
いつもなら『怒ってる琴音ちゃんキタコレ!! 可愛い可愛い!! この角度もいい!!! ふおおおおお琴音ちゃんアルバム69冊目がとうとう埋まっちゃうぞよ!? デュフフフフ……フィーーーーバァーーーー!!!!』とか言いながら被写体である琴音を写真に収める変態モードになっているはずのオメガも、今回に限っては数歩離れたところからずっと大人しくカメラを向けているだけだったし……。
ユキもユキで、いつもなら恥じらいなんて二の次で、いやむしろ積極的に向こうから迫ってくるぐらいの女の子だったのに、今回に限っては顔を真っ赤してだいぶ恥ずかしがっていたしな。
普通の女の子なら正常だろうが、ユキに至ってはまずありえないことだ。
琴音だってそうだ。
アイツは多分、この6人の中じゃ一番他人のことを気にかけ、誰よりも理解し、よく見ている子。そんな琴音がユキの言ったことをすべて丸々鵜呑みにするはずがない。
もし百歩譲って信じたとしても、ぶっちゃけ俺が姿見越しで自分の裸に見惚れていたくらいじゃ琴音はそんなにキレない。むしろ呆れる。いくらユキのためとは言えこんなに怒るとか不自然すぎる。
ついでに言えば秋だって、いつもなら「まぁまぁ落ち着けよ」とかなんとか言って仲裁に入ってくれるのに、今回だけは遠くで眺めてるとかもう不自然の塊だ。
アイツの人の良さは俺が一番……とはいかないまでも、それなりに理解してるんだぞ。ごまかせるわけねえだろ。
エメリィーヌは……まぁアイツはいつでもどこでも通常運行だしな。強いて言うなら静かすぎるということぐらいだろうか。
おそらくドッキリの邪魔をしないようにおとなしくしてたんだろうな。不自然だぞ。
「と、いうわけでさ。ゴメンな海。でもエイプリルフールだしさ、大目に見てやってくれよ?」
ずっと無言で正座している俺を見て、いつもの如く人の良い秋が俺をなだめに来てくれた。そしてそんな秋につられるように、ほかの奴らもなだめにくる。
「か、海兄ぃ……ほ、ほらその、面白そうだったもんでつい……ね!」
「ドッキリ大成功ですよ先輩! ほらほら、ユキたちもう怒ってないですから笑ってくださいです」
「いやーありがとう山空。キミのおかげでいい動画が作れそうだよ」
いやオメガお前それビデオカメラだったのかよ。
「……カイ、なんか怒ってないんヨか……?」
俺からドス黒いオーラでも出ていたのだろうか。
エメリィーヌは感づいたようだが、ほかのやつらはまだ事の重大さに気づいていないようだった。
怒ってるかって? あぁ、腸が煮えくり返って、臓物のごった煮ができちゃいそうなくらいキレてるさ……。
そもそも、エイプリルフールだからってなんでも嘘をつきゃいいってもんじゃないんだ。
相手をいたわり、気遣い、なるべく傷つけないような嘘をつき盛り上がる。これがエイプリルフールってもんじゃないのかよ……。
例えばほら、エメリィーヌに「今日の夕飯は唐揚げダヨ! ハハッ☆」という嘘をついたとする。そのせいでエメリィーヌは出てきもしない唐揚げをずっと、ずっと楽しみに一秒一秒を過ごすんだ。
でも唐揚げは嘘がゆえ、夜の食卓には無情にもホウレン草のおひたしが顔を出すんだ。
このとき初めてエメリィーヌは嘘だと気づくけど、もはやそれは“嘘”じゃない。“言葉の暴力”なんだよ。
俺にとって、友達っていうのはとても大切で、憧れで、宝物なんだぞ。
そんな俺が「自分は変態だ」とカミングアウトすることで、俺は宝物であるみんなに、心を、そしてプライドをズタズタにされた。
確かに勝手にカミングアウトしたのは俺の方だ。だが、俺をそこまで追い詰めたのはお前らだ。
俺は許せない。人の良心を弄んだだけじゃない。秋以外のやつらは謝罪の言葉すら口にしなかった。
絶対に許さねえ。マシンガンスカイと呼ばれたこの俺に駆け引きを使ったんだ。お前ら、覚悟できてんだろうな? 口先の上手さは嘘の上手さ。俺の土俵に上がってきたこと、とくと後悔しやがれ!!
「ふ……ふふふふ……くくく……」
「……!?」
ゆらりと立ち上がる俺の姿を見たみんなの中で、琴音とエメリィーヌの二人だけはすぐに俺の異常性を感じ取り一歩後ずさった。
さすがは察しの良い二人だと言ったところか。他のユキとオメガは今の俺に違和感こそ感じているものの、眉をしかめるだけで後ずさったりはしない。
「お、おい海……? お前何する気だよ……?」
「え、秋先輩何言ってるんですか……?」
やはり秋も俺の異変を察知しているのだろう。
それに引き換え、ユキはなぜみんなが焦りだしているのか気づいていないらしい。
「せ、先輩……?」
俺は、一歩。また一歩とユキに近づいていく。
何が起こっているのかわからないユキはただ戸惑ってその場を動こうとしなかった。
そして、俺はユキのすぐ目の前に立つと、独り言のようにつぶやく。
「いいかユキ……さっき俺は、『俺は変態で、今もなお興奮していて、お前らを襲ってしまうかもしれない』そう言ったな?」
「は、はい……そのようなこと言ってた気がします……でもそれは嘘なんですよね……? ユキたちが先輩の言ったこと全て嘘だって決めつけたから逆のことを言って信じさせようっていう嘘なんですよね……?」
……コイツら、そこまで理解しててもなお俺を攻めつづけたってのかよ。すげぇな。
「先輩自分で言ってたじゃないですか!! 全部ユキたちに信じてもらえるようについた嘘なんですよね!?」
俺が自分で喋ってたんかい。作戦までモロバレだったとかもう俺なんかかっこわりぃなおい……。
……だがしかし、それはそれ。これはこれだ。
今の俺は本気モード。本気になった時の俺は考えを喋らないように気をつけているし、作戦を実行するときはもう何も考えずに進めていくから表情には出ない。
つまり、本気になった時の俺ほどわかりにくいものはないということが最近わかってきたんだ。
さぁ、本気の俺に恐れおののくがいい。
「おい海、お前今もなお思いっきり全部喋ってるぞ」
「え、マジで?」
調子に乗るとろくなことがない。
それを俺に分からせるかのごとく、秋は皮肉にも俺に告げたのだ。
それなりに俺から離れている秋にまで聞こえているということは、もう全員に聞こえてしまっているということになる。その証拠に……。
「海兄ぃ……」
「先輩……」
「カイ……」
「こっとねちゅあわわっわん!!!」
「空気読みなよ!?」
みんな(一部を除き)肩を落として呆れ返ってしまっていた。
まぁ、そりゃね? 大事な友達たちに本気になれって方が無理な話でね? 正直そんな怒ってもないし、ただ騙されたから騙し返してやろうという浅はかな決意の元決行した作戦であってね?
えーっともう、なんというか……台無しだよチックショウ!!!
こんな俺の発言が全て俺の作戦だということがモロバレした状況で騙し返せるわけがない!! こんなの、お化けが後ろにいるぞ!! で相手を騙そうとするようなもんだ!!
「え!? お化け!? うわぁあああ!!!!!!!」
……俺はなにかの病気なのだろうか。またしても口に出してしまっていたようだ。
というか、まさかお化けが後ろにいるぞで騙せるとは思わなかったなぁ……。どんだけ怖がりだよ秋。いや、お前が極度の怖がりなのは知ってたけどもさ。
「うわっぁぁああ! お化けがお化けが!! うわぁぁああいやぁぁあああ!!!!」
一度お化けの姿を脳内で想像してしまったものだからその姿が頭から離れなくなってしまったのだろう。秋はもういてもたってもいられなくなったらしく、いきなりエメリィーヌのそばまで駆け寄ったかと思うと、そのまま抱きかかえた。
「……? シュウ……?」
「お、おおエメリィーヌ!! どど、どうしたんだ!?」
「そっちがどうしたんヨか!!」
「あ、いやそのあれだ。俺ロリコンなんだよ」
「最悪なウソなんヨッ!!!」
「じゃなくてあれだ、そのエイプリルフール……だから?」
「だからどうしたんヨか!!!」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ仲の良い二人は放っておいて、とにかく一度でいいからこいつらを騙したい。エイプリルフールだし、やられっぱなしはちょっとプライドが許さないんだ。
俺のクセのせいで信憑性が0%になってしまったが、なぁに、こんな状況全然苦にもならねぇ。
琴音なんかもう飽きて、ソファーに座り温かい紅茶を飲んではいるが、これから騙してやるから覚悟しろよ琴音。
俺のこの喋ってしまう癖。今は気をつけているので喋っていないと断言できるし、顔に出やすくとも手のひらで顔のした半分をさりげなく覆えばバレっこない。
一番厄介なのが喋ってしまう癖だが、ならむしろこの癖を利用するんだ。
残念だったなお前ら。俺を奇策に走らせたら、もう、止まらねえぜ。
ある程度作戦が固まった俺は、まず最初に完全にジト目で俺を見ているユキから洗脳を開始する。
「……しかしあれだな、確かに冗談で言ってたけど……あながち嘘ではないんだよな……」
「へっ!?」
手を顎に添えて俯き、ボソボソと、まるで俺が考え事を暴露しているかのように独り言を呟いていく。
俺とユキは超至近距離なので、ユキだけに聞こえるように声の音量を抑えるのは簡単だった。
言っちゃ悪いがユキは単純だ。
琴音や秋などのように、昔から俺と一緒に連み、俺のイタズラを幾度となく経験してきた二人は、そこら辺の人よりも悪知恵が働くようになってしまった。
だがユキは一途で、努力家で、頑張り屋で、なんでも一人で抱え込んで。要するに単純なので、俺のこの突然の演技にも騙されてしまうのだ。
「……そりゃあ俺だって健全な高校生だし……そういう事に興味がないといえば嘘になる…………もしかするとユキなら許してくれるんじゃないだろうか……? ユキは俺のことが好きでいてくれてるらしいしな……俺もユキのことを好きか嫌いかで言えばそりゃまあ好きだし……意外と喜んでくれるかもしれないな……うん、そうだよ……よし……襲うか……」
「なっ……!!」
自分で言ってて恥ずかしくなってきたが、そんなもの先ほどの「俺は変態です」発言に比べれば軽いもの。
俺の予想通り、ユキはすっかり俺の呟きを信じ込み、顔を赤く変色させていた。
そして完全に真っ赤になったタイミングで、俺はとうとう動き出した。
「ユキ!!」
「ひゃあぁ!?」
彼女の名を叫ぶと同時に、俺は手首を強引に引っ張りドアの外へと向かう。
なんかものすごく可愛らしい悲鳴がユキの口から漏れていたが、それはまあこの際気にしないでおこう。
「ちょ、海兄ぃ!? どこ行くのー!?」
琴音の声を背中で感じながら、俺はユキを連れてリビングを飛び出し左折して、階段を駆け上がり自室へと駆け込んだ。
ユキは訳も分からず俺と歩幅を合わせることしかできない。だけど、抵抗せずに歩幅を合わせてくれるということは俺のことを信じてくれている証拠でもあるので、少しやりづらかった。
だがしかしこの戦いに情など無用。悪いがユキ、俺の嘘に呑まれてくれや。
「ユキ!!」
再びその名を口にし、俺はユキを、今はもうエメリィーヌ専用となったシングルベッドへと押し倒す。当然のことながらこれ以上先のステップへ進む気はないので、数秒が経過したらこのあたりでドッキリ大成功と宣言してもいい頃合だろう。
「せ……せん、ぱい……」
「ユキ……」
もうこれ以上ないくらい顔を紅潮させるユキの瞳はウルウルとし、その中に部屋の電球の光が映り込み反射して余計輝きを増している。
はぁはぁと肩で息をしている彼女を見て、とうぜん俺が何も感じないわけもなく。おそらく俺の顔は目の前のコイツと同じくらい、真っ赤になっていることだろう。
だけどそれも計算のうちである。
自分で言うのもなんだが俺は純情だ。女の子に対して免疫もなく、たとえ知り合いだろうが相手が異性というだけで緊張してしまう。
そんな俺が一応後輩である女の子をベッドに押し倒したとして、正常でいられるわけがない。無表情でいられるわけがない。
だからこそ。だからこそ、俺が顔を真っ赤にさせれば嘘の信憑性が著しく増す。そんなことを計算に入れての行動だった。
――――そして、ここからが予想外の出来事である。
「こ、来ないでくださいっ……!!」
どん……と、ユキは俺を突き飛ばしたのだ。
別に予想していなかったわけじゃない。いくら相手が好きな人だからって、無理やり襲われたら嫌に決まっている。そんなこと、いの一番に理解していた。
そもそも、騙す相手が嫌な思いをしたらそこで俺の復讐は終了。それだけで「ドッキリ大成功!!」とバラす価値がある。嘘だとばらして相手が安心してくれればそれはもう理想的な終わり方だ。
そしてもしもむしろ逆に向こうが受け入れたのなら、それもまた「ドッキリ大成功!!」と言って残念がらせ復讐完了することも可能なので、それも嘘をついた価値があるというもの。
つまり俺は、押し倒した際のユキの反応がどちらに転ぼうと、理想的な終わり方ができると考えていたんだ。
で、結論を言えば、ユキは嫌がったのでここでネタばらしをすれば、俺のユキへの作戦は全て終了。丸く収まる。そういう予定だった。
ガシャンガラガラ……!!!
突き飛ばされた勢いでバランスを崩し、俺はベッドから滑り落ち書棚に頭をぶつけ、その振動で書棚にしまってあった数多の漫画や小説が雨のように降り注いだ。
たった数秒間の短いあいだで、本の中に生き埋めになった俺の図が完成したのである。
そしてそのあいだに……。
「……ご、ごめんなさいです!!」
暗闇の向こうからユキの声が聞こえた。そしてそのあとすぐ、階段を下りてゆく足音も聞こえてしまう。
……そう、俺が嘘だと伝える前に、ユキは“事実”という“大きな誤解”を担いでみんなの居る一階へと逃げてしまったのである。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
この流れは非常にヤバイ流れである。
この流れは非常に疎外感を覚える流れである。
この流れは非常に―――――――――――
●●●
「海兄ぃいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!」
うわぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああやっぱりいぃいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!
「ご、ごめんなさいぃいいいいい!!!!!!!!」
とても美しい土下座を見せた少年は、その心中で「今日一日の全てをエイプリルフールとして対処して欲しい」と祈っていたそうな。
エイプリルフール特別編!その2 完
海「はぁ、散々な目にあったぜ……」
秋「いやあれは普通に海が悪いだろ」
雪「そうですよ。乙女の恋心をなんだと思ってるんですか先輩は」
海「あぁ、本当にごめん。僕はもう嘘なんてつかない」
エ「見え透いたウソなんヨ」
海「バレたか」
秋「つーかお前、『白河に肉体を見られたくない!』的なこと言ってたけど去年のエイプリルフールの冒頭で見られてっからな?」
海「あれ、そうだったっけ……?」
雪「はいです。結構イイ体つきでしたですよ!」
海「マジかよ……クソッ、もうこうなったらユキ! お前のも見せ……」
琴「海兄ぃ、まだ懲りてないみたいね」
海「ごめんなさい!!!!!」
恭「僕も琴音ちゃんに同じことしようかな」
琴「ダメに決まってるでしょ!!」
秋「てか今回なにげに小説のラインぎりぎりを突っ走ってたこと気づいてねーだろお前ら……」
エ「なんか知らんヨが大変なんヨね」