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俺日:七夕特別編!~七夕…それは、俺たちにかかれば忘れ去られるほどに小さな小さな存在なのである~

さ、最後のほうはめんどくさくなっちゃっただけなんだからね!

七夕。

それは、七夕(たなばた)と読むのであって、七夕(ななた)七夕(しちゆう)と読むのではない。お、七夕(しちゆう)ってちょっとなまらしたら七夕(シチュー)に聞こえるではないか。

まぁ、そんな些細な発見は短冊にして笹の葉に吊るしておくとして。


今日は7月7日。何度も言うが七夕(たなばた)である。


ところで、七夕ってなに? といった疑問を持つ方も中にはいることだろう。

今現在俺の目の前に立っているこの宇宙人少女もその一人である。


ってなわけで、七夕について説明してあげよう。



俺日:七夕特別編!

~七夕…それは、俺達にかかれば忘れ去られるほどに小さな小さな存在なのである~



俺の名前は山空(やまぞら) (かい)

ごく普通の高校2年生である。


そして今、毎回恒例となっている俺んちのリビングに、俺の親友たちが集まっているのだ。


「七夕ってなんなんヨか?」


テレビのCMを見てこう発言したのはほかでもない、宇宙人のエメリィーヌである。


クリスマスや初詣や節分など、イベントの時期がやってくると必ずこの発言をし、俺達に説明させて自分が理解すると同時に読者さんにも軽く理解してもらえるように。という読者さんサービス精神旺盛の質問を毎回繰り出す少女なのである。


「あぁ、もうそんな時期なんだねぇ」


エメリィーヌの発言を聞き、ちょっと他の人より遅れていることを思わせるような発言をしたコイツは竹田琴音(たけだ ことね)

中学1年生の13歳で、サイドテールが特徴的な女の子である。


「琴音お前、女の子なら特に忘れないであろう行事の定番である七夕を忘れてんじゃねーよ」


この無駄に変な言い回しをしたコイツは竹田(たけだ) (しゅう)

琴音の実の兄であり、俺と同じ高校2年生。

コイツの特徴は? と聞かれれば、特徴がないのが特徴と答えるしかない。

よくある存在感のないイジられキャラな奴だ。


「そうですよ琴音っち! 七夕は女の子の、女の子による、女の子のための行事なんですよ!」


全然違う。

と、この俺が思わず脳内でツッコミを入れてしまうほどにおバカなコイツは白河(しらかわ) (ゆき)

メルヘン大好きの……まぁ、元気な奴だ。


「○ンちゃんなう! ○ンちゃんなう! ○ンちゃん○ンちゃん○ンちゃんなう!!」


そしてこの見ているだけで人に恥ずかしい思いをさせる痛いコイツは鳴沢(なるさわ) 恭平(きょうへい)

オタクで、メガネで、銀髪で、変態で、発明が趣味で、ロリコンで。

犯罪一歩手前のスキルをたくさん持ち合わせる奴なのである。

ちなみに、俺はオタクでメガネなコイツのことをオメガと呼んでいる。


自分を含め以上の6人が、俺の親友達なのだ。


「毎回恒例となった人物紹介お疲れ様ぁ~……」


夏の暑さにすっかり負け、スティックアイス(ミルク味)をくわえながら冷房が一番当たる場所でだらしなく寝っ転がっている琴音。

最近思うんだが、この少女の辞書から『遠慮』という二文字が無くなってきているのではないだろうか。

アイスだって俺のを無断で食ってるし、この俺でさえ節電のため扇子(せんす)で頑張っていたのにもかかわらず勝手に冷房ガンガンつけてるし。

ちなみに、団扇(うちわ)ではなく扇子を使用していたのはちょっとオシャレ感を出したかったからであり、特に深い意味はないのでそこんとこよろしく。


「琴音、お前は仮にも女の子なんだからそんなだらしない格好するなよ。同じ室内に変態もいるんだから」


と、兄である秋はだらしない妹にしつこく言い聞かせる。

普段普通に生活しいるのにもかかわらず『同じ室内に変態がいるんだから』なんていうセリフが飛び出す事にも驚きだが、恥ずかしがりであがり症な琴音が人前でこんなだらしない格好を披露していることにも、俺はちょっと驚いている。


「前は恥ずかしさとかの方が大きかったけどねー。もうなんか最近どうでもいいなぁーてねぇ……」


俺の考えていたことを察したのか、だらしない声でだらしなぁくそう言った琴音。

恐怖心は成長とともに薄れていくってのは聞いたことあるが、やはり恥ずかしさってのも成長とともに薄れていくものなのだろうか。

はたまた、俺達と長い間一緒にいすぎてもはや家族感覚になってしまい、恥ずかしいという感情がが薄れてしまっているのだろうか。


どちらにせよ、昔の琴音からは考えられないありさまである。


「んー、それもあると思うけど……ほら、いいのか悪いのか、私って恭兄ぃによく変な事されるじゃん? セクハラってやつ。そのおかげもあってか、ちょっと恥ずかしさの感覚が狂ってきちゃってるんだと思う。慣れって怖いね」


へぇー、なるほどな。

まさか変態行為が一人の子の苦手克服につながるとは思わなかったぜ。世界もびっくりだ。


ちなみに、俺の考えていたことがすべて筒抜けなのはもうお馴染みの事なので気にしないでくれ。どうやら俺は分かりやすい人種のようなんだ。


「(^ω^≡^ω^) おっおっおっおっ!」


「そしてさっきからやかましいぞメガネ!!」


リビングの隅で一人ノートパソコンを満喫している変態。

何かを見ているようだが……こういうネタは特別編だけしかできないのである意味 貴重(レア)である。わかる人にだけわかればいい、そんなネタだ。


「特別編とか平気で言っちゃうんですね先輩……世界観もクソもあったもんじゃないじゃないですか」


「そういうなよユキ。作者さんは本当は本編もこういうネタで勝負したかったんだから」


「へぇ、作者さん軽くミスってたんですね」


「そう、作者さんは軽くミスってたんだ。色々と」


「海に白河! お前らいい加減にしろよ!! たいして実力もないのに作中に作者さんとの絡みがある小説は大抵不人気なんだぞ!! 罵詈雑言の嵐だぞ!!」


俺とユキの諸事情トークを聞いていた秋が、『目には目を、歯には歯を、諸事情には諸事情を』と言わんばかりのツッコミを入れてきやがった。

気にしすぎだ秋。本編ではちゃんとやるから安心しろ。


「いいか? 本編は本編、特別編は特別編。世界観を何より重視してる読者さんには絶対に嫌われるぞ!! 特別編だからって何をしたっていいというわけじゃないんだ。特別編を楽しみにしてくれている読者さんもいるんだから……この話はここまでにしてさ。ちゃんとやろうぜ?」


秋の真剣な眼差し。


……あぁ、わかったよ秋。お前がそこまで言うならちゃんとやるよ。

悪かったな、ちょっといつもより気分がよくて大はしゃぎしちまって。そろそろ本題に戻るよ。


「みんなしてわけのわからないこと言ってないで、そろそろウチの質問に答えてほしいんヨ! 七夕ってなんなんヨか?」


エメリィーヌはテレビの電源を止めると、綺麗に座り直して聞く準備を整えている。

落語家もびっくりの綺麗な正座である。


「えっとねぇ、七夕っていうのはねぇ~……」


エメリィーヌの素晴らしい姿勢と対をなすかのようなだらけっぷりを披露している琴音。

カーペットの上を有意義にごろごろしている様は、もはやナマケモノそのものである。もしくは怠け者。


「ちょ、失礼なっ! 私は怠け者だけどナマケモノじゃないよ!」


「怠け者は認めるんヨか」


なんかキリッっとした表情で怠け者であることを自らカミングアウトした琴音は、エメリィーヌに七夕の説明を開始した。


「七夕に関しては私も詳しいことは分からないんだけど、たしか『織姫』っていう女の人と『彦星』っていう男の人がいるのね?」


そうそう。確かそんな感じだ。


「オリヒメとヒコボシなんヨか……その二人の苗字(みょうじ)はなんなんヨか?」


純粋な眼差しでそう質問をするエメリィーヌ。

その質問に、琴音は間髪を入れずに答えた。


「『織姫 とも子』と『彦星 太郎』ってことで」


いやお前それ、織姫と彦星が苗字ってことになっちゃってるから。

由緒ある行事の登場人物(?)に今でもその辺歩いてそうな名前とか付けちゃダメだろ。せめて名前の最後に(仮)ぐらいつけろ。


「わかったよ。じゃあ『織姫 とも子(仮)』と『彦星 太郎(笑)』で」


「笑っちゃったよ!!もうそれ馬鹿にしてる風にしかとれねぇよ! 彦星が鼻で笑われてる姿がチラついて消えてくれねぇよ!!」


「じゃあ『彦星 太郎(怒)』で」


「何イライラしてんだよそいつはぁ!! カルシウムをとれカルシウムをぉ!!」


はぁ……はぁ……まったく、琴音の遊び心ったらないぜ。

さすがの俺もツッコミ疲れだよ。第一、俺の立ち位置はツッコミではないんだ。慣れないことをさせんでくれ。


「琴音っち! 彦星様にそんなことしちゃダメですよ!!」


そうだそうだ。もっと言ってやれユキ。

自分で言うのもあれだが普段調子に乗って馬鹿なことしてる俺の言葉はもはや屁みたいなもんでしかない。

だがユキの言葉になら木製バットで全力百叩きされる並みの威力はあるはずだ。もはや自分でも何言ってるか分からなくなってきたがとにかく頑張れ。


「いいですか琴音っち!彦星様をそんな風に扱ったらだめですよ!」


そうだそうだ。その通りだ。

ユキも言うときゃ言うんだな。俺は大事なところで力を発揮する奴は大好きだぜ!


「どうせやるならば、『彦星 太郎(喜)』にしてあげてくださいです!」


「問題はそこじゃねーよ!!」


俺がツッコミを入れるより先に、秋がツッコミを入れた。

なんだよ、秋の出番は『いいか? 本編は本編、特別編は特別(以下略』の辺りで終わってたのかと思ったのに。

お前あそこで『秋が1話で喋れる文字数』を使い切ったんじゃないのかよ。

まだ頑張れるならツッコミ役は任せた。俺は疲れたからしばし傍観する。


「もぅ、何が不満なんですか秋先輩! 彦星様大喜びしてるんですよ!?」


「いやだから喜んでるとか喜んでないとか関係なしにだな、色々と間違ってるだろ! 色々と!」


「そうだよユキちゃん。ただ(喜)をつけただけで彦星さんは幸せになれる? ううん違う、なれないんだよ。幸せっていうのはね、喜びとはまた違うんだ。本当の幸せは、頑張って手に入れるものなんじゃないのかな」


「……そうですね。そうですよね! ユキは間違ってましたですよ!」


「間違ってるよ!! 白河も琴音もすべてにおいて間違ってるよ!! 何ひとつあってねーよ!!」


琴音とユキ、二人の天然っぷりに悪戦苦闘している秋。

そこで、あの変態がなぜか動き出す。そして。


「イイハナシダナー」


純白のハンカチ…いや、ハンケチーフを手に持って、涙をぬぐいながら琴音に擦り寄っていく。


「え!? な、なに!? 怖いっ! いつも以上に怖いっ!!」


変態の謎の行動に、顔を引きつらせながら後ずさる琴音。


「琴音ちゃん、僕はキミを甘く見ていたよ……キミは、もう子供じゃない。立派な大人の女性だ……うぅ」


「やだ、ちょ、え? は!? 芋虫かっ!」


どうやら、先ほど琴音がユキに対して言ったよくわからん演説が変態の胸に強く響いたらしい。

いまだに涙を流しながら、クニャクニャと琴音に近寄る。その姿はまさに芋虫だ。


「キミは立派な大人。つまり……さぁ、僕と一緒に一線をごえぇっ!?」


変態がいつもの如く変態的発言をし出した瞬間、変態の顔面に琴音の蹴りが炸裂する。


「もし琴音っちが大人だとしても眼鏡先輩がまだダメじゃないですか」


と、ユキが呟く。お前は何を言っているんだ。

一方的な時点でどっちにしろ駄目だろうが。


「お前もなに言ってんだよ」


秋に指摘されました。


「はぁ……自業自得だししょうがないと思うんヨが、このまま喋らないとシュウ以上に空気扱いされてしまう可能性が捨てきれないので一応心配しておくんヨ。キョウヘイ大丈夫なんヨか? メガネ割れてるんヨが……」


「大丈夫……僕にとっては……ご褒美だぁ……」


「死ねっ!」


「お前はドMかっ!!」


エメリィーヌが自分のためにオメガを心配した後、オメガの変態発言を聞いた琴音が再度蹴りを放ち、それとほぼ同時に秋のツッコミが炸裂した。天下無敵の連係プレーである。

そして俺が傍観してしまうと語りがいなくなり小説として機能しないので元に戻ることにする。あとこれ以上ふざけてると苦情が来てしまいそうなのでそろそろ世界観を守って進行しようと思う。


「……あ、そうだエメル」


「うおっ…ガッ!? 」


さっきまで伸びてたはずの変態が急にエメリィーヌに向き直るもんだから、エメリィーヌは驚いてテレビ台の角に頭を強打。あれは痛い。絶対に痛い。

脳内出血とか起こしそうな勢いだが、人間はそれほどやわじゃないので大丈夫だろう。あいつは宇宙人だけども。


「エメるん大丈夫ですか?」


「おー!いてー!! 全然大丈夫じゃないんヨぉー! ……って、エメるんってなんなんヨか」


「エメちゃんのことに決まってるじゃないですか! エ~メるん♪ エメリィーヌ三世でもいいですよ? あ、エメリヌスとかもいいですね!」


「次々と新たな呼び方を考えるなよ。ややこしくなるだろ」


「あ、うーみん先輩やきもちですかぁ~? ふふっ、可愛いところもあるんですね!」


「やかましいっ!!」


俺の事『うーみん』とかふざけたあだ名で呼びやがって……。

初めて友達につけてもらったあだ名だから意外と気に入っちゃってるんだぞ!! どうしてくれる!!


「気に入っちゃってるんヨか……」


「そうなんだよなぁ。あだ名ってものは、親しい友達がいて初めてできるものだろ? 俺ユキにもらったこのあだ名が人生初だったからさ……そう思うとなんか嫌いになれないんだよ」


「でもそのあだ名って出会ってからまだ1日も経過してないうちにつけられたあだ名だろ? 全然親しくねーじゃん」


俺とエメリィーヌの会話を盗み聞きしてた秋が、正論なるツッコミを入れてくれた。

そうか……俺のあだ名はあだ名として機能していないというわけか。

すっかり忘れてたぜ、ありがとな秋!!


「いや、別にお礼言われるようなことしてねーけど。あと盗み聞きもしてねーけど」


「そんなに気に入っちゃってるんでしたらいくらでも呼んであげますですよ! う~みん♪」


そう言いながら、俺に張り付いてくるユキ。

このクソ暑い時期にクソ暑いことするんじゃねぇよ!! 茹で上がるわ!!


「部屋冷房きいてるけどね」


「そして冷房は止めろ!! 節電に協力しなさい!!」


「えーいいジャン別にー! 私たちが我慢しなくてもほかの人たちが私たちの分まで頑張ってくれるってー!」


でた!! これだから最近の若者は!! 協力という言葉を知らんのか!

もしお前が節電する側の人達だったら『私がこんなに頑張ってるのに。サイテー』とか言い出すんだろ!! いい加減にしろよ!!


「そんなこと言い出さないよ!! あとね海兄ぃ、私もちゃんと節電してるよ!!」


キッっと俺に向き直ると、琴音はそう言った。


「どこが節電だよ! ガンガン使ってるじゃねェか!!」


いや、。ガンガンどころではない。この勢いはもはやGAN☆GANだ。

俺は、冷房で涼むのは週に1度、それも3時間だけと決めている。

夏は暑いのが当たり前なんだ。日本人なら我慢しろってんだ。


「でも! 本来ならば海兄ぃの家と私の家の両方の電力を使うところを、わざわざ私は海兄ぃの家に足を運んで海兄ぃの家でみんなで涼もうという気持ちなのに!!」


出たよ琴音お得意の屁理屈!!

確かに琴音、お前の言うとおりだよ!でもな……。


「お前が俺んちに来なきゃ俺は冷房なんて使わねぇんだよ!!」


「でもさ! あんまり無理して節電したとしても、暑さで倒れたりしたらそれこそ本末転倒じゃん!!」


「俺は無理してねぇんだよぉ!!!」


「海兄ぃが無理してなくてもエメリィちゃんや恭兄ぃが無理してるでしょ!!」


「いや、ウチはわりと暑いの大丈夫なんヨし、もう慣れたんヨ」


「僕も腕時計型冷却装置を身に着けてるから余裕」


「……ほ、ほら! 海兄ぃのせいで体内のあれこれが狂っちゃってるじゃんか!!」


「いや明らかに狂ってねぇだろ!! お前いい加減にしろよ!!」


「で、でも! 私の家で私と秋兄ぃが二人涼むよりは、海兄ぃの家でみんなで一緒に涼んだ方が一応節電でしょ!?」


「まぁ、今頃お袋が冷房ガンガンつけてると思うけどな」


「ダメじゃん!!」


「秋兄ぃは余計なこと言うな!」


こ、琴音めぇ。

自分がラクしたいことだけは妙に口が回るんだから。

口なんか回してねぇでその気合いを英語の勉強に回せってんだよ。

まぁ、まだ琴音もそこんところは子供ってわけなんだろうけど……。


俺んちは風通しがいいから、窓開けてるだけで涼しく心地よき熱気が入ってくるってのに。

つーか、琴音たちの母親が冷房バンバンつけちゃうから、琴音が暑がりになっちまうんだよ。体内のあれこれが狂っちゃってんの琴音の方じゃねぇか。


「……って、腕時計型冷却装置って何!?」

「……って、腕時計型冷却装置って何!?」


俺と琴音、見事にハモった。

なんかサラッっと言ってたからスルーしかけたが、お前ひとりでそんなもん使ってたのかよ!! どんな効果を持ってるのかよくわからんけども!!!


「しょうがないなぁ、そんなに言うなら山空にも貸してあげるよ。琴音ちゃんにはプレゼントね」


ワオ! ナチュラルに理不尽!!

俺には貸出なのに琴音には無条件でプレゼントフォーユー!


「ねぇ、これどうやって使うの?」


オメガから装置を受け取った琴音は、それを左手首につける。

一応俺にも貸してくれたので、俺も左…いや、右手首にしよう。右手首につけてみた。


「よし、つけたらそのスイッチを押してくれ」


オメガに言われるがまま、俺はスイッチらしきところを押す。

すると。


「わっ、なにコレすごく快適!」


琴音が声を上げる。

そう、スイッチを入れた瞬間、俺の周りの空気が一瞬にして程よい冷たさになったのだ。

たとえるならば、家の周りに水を撒いた時のような、冷蔵庫を開けた時の冷やかな空気的なヤツだ。


「その腕につけた機械から発せられる振動やら何やらで、人体の周りの空気の温度を下げ、まるで冷房が効いた室内にいるような感覚になれるという代物だ。名付けて『いつでもクール&スパイシー! 腕時計型冷却装置』!!」


眼鏡をクイッと上げてそう告げるオメガ。

今気づいたんだが、そのクイッっての決めポーズだったんだな。いつもやってるから。


「クールは分かりますですが、なぜスパイシーなんですか?」


ユキが問う。


「冬に使えば、温度を上げることもできるからね。ほら、辛い物…つまりスパイシーなものを食べると体が熱くなるでしょ? そんな感じ」


「なるほどですね」


うん。もはや冷却装置ではないな。

もはやあれだよ、温かいけど涼しい装置だよ。急に上手いネーミングなんて思い浮かばねぇよ。


「でも恭兄ぃすごいよ! これがあれば私夏でも生きていけるよ!!」


「それがなければ生きていけないんヨか……」


「琴音ちゃんに褒められてご機嫌だからみんなにもあげよう」


そういうと、オメガは『腕時計型冷却装置』をみんなに配った。単純な奴だなおい。


「あ、山空は1時間200円ね」


ナチュラルに理不尽再び!!

なんでだよ、なんで俺だけ有料なんだよ。俺に恨みでもあんのかよ。

しかも200円は高い。1時間200円も払うくらいなら俺はこんなものいらない。

今すぐ腕から外して踏みつけてぶっ壊してやろうか?


「ははは。冗談ナリよ」


そう言いながらケラケラと笑うオメガ。うん、ムカつく。

だがしかし俺は心が広いので許してやるのだ。寛大だな俺。


「おぉ、本当に快適ですねこれ!」


「もうこれ売り出した方がいいだろ!」


ユキと秋が口々にほめる。


「ふん、キミらに褒めてもらったところで嬉しくないわ。特に竹田兄」


「なんでだよッ!!」








――――――――――それから数時間後。


「……で、結局七夕ってなんなんヨか」


『…………あ』


皆でハモった。




七夕特別編! 完

~おまけ~


海「みんなは短冊に何て書いたんだ?」


雪「ユキは『恋愛成就』です!」


秋「神社かっ!」


琴「私は『天下統一』だ!」


秋「戦国乱世かっ!」


エ「ならウチは『一攫千金』なんヨ!」


秋「欲望丸出しかっ!」


海「俺は『世界征服』だ」


秋「子供かっ!!」


恭「僕は『琴音ちゃんとデュフフ』だね」


秋「ここぞとばかりかっ!!」


海「そういうお前はどうなんだよ」


雪「そうですよ!」


秋「い、いや、お、俺のは別にいいじゃないか!」


琴「見せないと殴る」


秋「わ、わかったよ。ぜ、絶対笑うなよ!」


エ「早くするんヨ」


恭「早くしなさいよ」


秋「……俺は……その『平和に暮らせますように』……って」



はい、シラケた。

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