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俺日:クリスマス特別編!(後編)~メリークリスマス!!~

皆さん!!メリークリスマス!!

「クリスマスってなんなんヨか?」


クリスマスイブの夜。

それも、さんざんパーティやらをした後のことだった。


まぁ、前編を読んでくれた方ならもうお分かりだろう。


だから説明は省く!!……訳にもいかないので、前回のあらすじをかいつまんで説明しよう。


まず、竹田兄妹とエメリィーヌ、そしてオメガ。


そして俺を合わせた五人で、クリスマスパーティをしたわけだ。


そんでもって、地味に初となる竹田兄妹の宿泊。もちろん、俺の家に。


……本編を見てくれている方なら誰だか分かると思うが、白河(しらかわ) (ゆき)。通称、ユキと呼ばれる、高一の奴がいるんだよ。もちろん女性だ。そいつは家族と過ごすがために今回は不参加だ。


まぁ、そんなわけで、楽しい豪華夕食が終わった俺たちは、特にやる事もなくいつものようにグダっていたわけなんだが……なんと。


そう、朝から今までずっと一緒にいたと言うのに。

一緒にパーティだとか言って騒いでいたのに。


エメリィーヌという小娘が、クリスマスを知らなかったという衝撃の事実が発覚したわけだ。

それが、イブの夜。それも、約、午後8時30分頃のことだった。




俺日:クリスマス特別編!!(後編)

~メリークリスマス!!~



「だから、クリスマスってなんなんヨかって……」


あどけない顔した少女の口から、驚きの言葉が飛び出した。


まぁ、しょうがないので、この俺様が、見事に説明してしんぜよう。


俺はカッコいい顔つきを頭の中で何パターンか作り出し、その中で教える時にしていると一番カッコ良さそうな顔つきをチョイス。


俺がチョイスした顔つきは、目元はキリッと。眉もキリッと。口もキリッと。


とにかくそこらじゅうキリッとさせ、クールな教師的な設定の顔を作り出した。


その顔を表に出し、いざ説明へ!


「エメリィちゃん。クリスマスっていうのはね……」


「お前が教えて差し上げるのかい!!」


突然の琴音の割り込みに、クールな教師顔でツッコミを入れてしまった。


つまり、変な顔してツッコミを入れる人になってしまったわけだ。…………アホらし。


「24日。つまり今日だね。その夜中に、年中同じ服着たファッションセンスのかけらもないおじさんが………」


おい。


「トナカイを調教して、こき使ってソリを引かせ……」


おいおい。


「白いひげを生やしているが、実は付けひげで……」


おいおいおい。


「カギ穴を無理矢理こじ開け、家に侵入して寝ている子供たちの枕元に立ち、怪しい微笑みと共に見降ろしてきて……」


おいおいおいおい。


「手に持った薄汚れた袋の中から、ラッピングされたプレゼントを、なぜかみんなの望んでいる物をピタリと当てておいていくんだよ!!」


ちょ、琴音。お前……琴音……。


「なんなんヨかその怪しい人物は!大体、姿を見せず、その子供たちの欲しい物だけを置いていくなんて……悪徳業者みたいなやつなんヨ!!」


馬鹿野郎。サンタをなめんな。

あのおじさんをなめるんじゃねぇよ。


サンタクロースはな。

みんなのお父さんなんだよ。


お父さんが、一年間汗水たらして頑張って仕事して、苦労してためたお金で、可愛い息子、娘たちに優しく微笑みかけながら枕元にそっと置いてるんだよ。


なのにあのサンタときたら。


その場にいないどころか、存在すらしないただのメタボジジイのくせに……

感謝されるのはお父さんではなく、不摂生でメタボってるただの白ひげジジイのお前なんだぞくそサンタめ。


お父さんたちの気持ち考えたことあんのかよ。


かの有名な赤い帽子をかぶり姫様を救出に向かうあの鼻でかのマ○オのように絶大な人気物になりやがって。


なんなんだよ。

赤いのがそんなにいいのかよ。


赤いからなんだってんだよ。ザケんじゃねぇぞ。


全国のお父さん。

今がチャンスだ。一緒にたたみかけようぜ。


こんな悪行の限りを尽くしたサンタなんかに、俺たちの苦労の末の幸せが取られてもいいのか? そう、良いわけがない。


……え!? 子供たちの喜ぶ顔が見れるなら、このままでもいいだって!?

くそっ、泣かせるじゃねぇか。


流石はお父さん。

通った修羅場の数が違うってわけか。


くっ、俺には到底……かないそうもねぇや。


「おい海。お前大丈夫か? 休んでた方が良いぞ? 俺たちの事は気にするなよ」


本気で心配そうな顔をしている秋。


……なぁ、秋。お前は優し奴だな。

だがな。その優しさが、一番辛い時ってあるんだぜ。今がその時だぁぁ!!!


「変な心配してんじゃねぇよ!!俺はまともだっ!!!!ぶっ飛ばすぞお前!!」


「はぁ!?海こそなんだよ!!ボーっと突っ立ってたから俺は!!」


「海兄ぃ。秋兄ぃ。ちょっとうるさいよ」


「……」

「……」


あれ、なんでだろう。

別に琴音怒ってないよな。


何で言う事を聞いてしまったんだよ俺。


別に琴音はうるさいから静かにして。ってお願いしただけだぞ?


なのになんで、黙ってしまったんだ?


「海……。お前もとうとうその症状があらわれてしまったのか……」


秋がポツリとつぶやく。


「どういう意味だよ?」


「琴音といるとな? なぜか逆らえないんだよ。多分体が恐怖してるんだろうな。俺達を守るために、俺たちの体が逆らってるんだと思う」


「………深いな」


そうか。俺は今、自分に守られていたのか。


ありがとよ。俺の体。これからもよろしくな。俺の体。


……あ、そうだ。


「琴音!お前、風呂入るだろ?」


俺はある事に気付き、琴音に聞いた。

けしてやましい気持ちで聞いたわけではない。


「え? あ、その……うん」


少しだけ赤くなったが、どうやら入るらしい。

何度も言うが、けしてやましい気持ちがあって聞いたわけではない。


「……琴音、ちょっと一緒に風呂場についてこい」


何度でも言おう。けしてやましい気持ちで言っている訳ではない。


「なんだよ海。お前何考えてんだよ?」


やましい事は考えていないのは確かだ。


「あ、そうだ、エメリィーヌも一緒に来てくれ」


「なんなんヨか?」


「海兄ぃ、……もしかして変態だった……あぁ!変態!!そういう意味か!!」


琴音も言いかけて気付いたっぽい。


そう、変態なのだ。

い、いや違う。俺が変態なわけではない。


変態と言う単語に意味があるのだ。


そう、もう察しの良い皆さんならお気づきのことだろう。



後編に入ってから、変態。そう、オメガが一言も喋っていないのだ!!


てか、さっきから姿が見えない。これはもう、あれしかないだろう。


「なるほどな。盗撮か」


秋も気付いたらしい。


そうなのだ。防水小型カメラなんか設置された日には、大変な事になるのは目に見えている。


……つーか女の子に、それも中一の女の子が変態で連想するのがオメガってどうよ。


よほど変態の印象が強いんだろうな。普通変態でしょっちゅう一緒にいる人を思い出すってなかなか無いぞ。


ある意味凄いなあいつ。


「まぁ、そんなわけだから、浴室行くぞ!!」


「うん!」


「任せろなんヨ!!」



――――――――まぁそんなわけでだな。浴室についてみたものの。


カメラどころかオメガの姿もない。

でも油断はできないって事で、こっそりとエメリィーヌにオメガの思考を読んでもらったわけだ。もちろん、久々登場だが超能力で。


すると、オメガは琴音の寝る予定の部屋にいる事が判明。

ついでに、浴室に巧妙に隠された隠しカメラ、計8台を取り除くことが完了した。


つーか、もうあちこちにカメラがある。

廊下にトイレにリビングに。二階に階段にすべての部屋に。


結構時間かかったが、すべてを取り除くことが完了。


浴室のも合わせて計47台。盗撮のプロかオメガは。


そして、エメリィーヌは超能力を長時間使い過ぎた為に、ソファでぶっ倒れている。


よく頑張ったな。エメリィーヌ。変態の思考を読ませてすまなかった。



―――気付けば時計は9時半を回っていた。


俺はすぐさまオメガを捕獲し、ロープで縛ってこたつの中へ拉致監禁。


俺と秋でオメガを見張っている間に、琴音とエメリィーヌは無事入浴完了。


エメリィーヌは、10分程度でよくなったんだよ。


まぁ、そんなわけで。


俺たちも順番に終わらせ(琴音に言われたので、俺と秋はシャワーだ)、オメガは縛ったまま浴槽へと放り投げてくれた。


だがオメガは琴音ちゃんが入った残り湯だー!と、クリスマスなのにも拘らず変態な発言をして喜んでいた。


だが、琴音もそうなる事は分かっていたらしく、自分はシャワーで済ませ、まさかの入浴剤だけ入れて、いかにも『私が入った残り湯だよ!』を演出。だがもちろん、当の本人は風呂には浸からなかったという偉業を成し遂げた。


でもオメガはそんな事など知らず、愉快に喜んでいた。


風呂の湯を飲み始めようとした時はさすがに引いたが、琴音の一撃で溺死体のようになったので良しとしよう。


で、その上から見事に浴槽にふたをした琴音は、浴室の灯りを消し、就寝に至った。


流石のオメガも死ぬんじゃないかとか心配になったが、心配になっただけで、俺も寝る事にした。


ちなみに、琴音とエメリィーヌは同じベットで寝た。つまり俺の部屋だな。


で、秋もなんか怖いからという理由で、俺の部屋で寝た。


俺は寝る所がなくなったので、仕方なくリビングのソファへ。


結果を告げると、オメガは変態だったという事。

そして、無駄に入浴剤を使われたことに俺は軽くへこんでいた。


しばらくしたのち、エメリィーヌの枕元にプレゼントを放り投げ、眠りについた。



『なんか凄い手を抜いた感がぬぐえないが、きっちり書いているとクリスマスの特別編なのに現実世界でクリスマスが終わってしまうので仕方がない』と作者が呟いていた。



んで、次の日。つまりクリスマス。


前編はクリスマスイブの話だったから、


後編は、クリスマスの話をお楽しみいただこう。



では、始まり始まり。………気にせず行こうぜ。



――――――――――――――朝。


カーテンの隙間から、朝日が差し込んできた。


その朝日によって、俺は目が覚めた……方が、なんか神秘的で良かったのにね。


現実は残酷だ。


まず起きて第一の感想を述べると、尋常じゃなく寒い。

その寒さによって、俺は勢いよく飛び起きた。……が。柔らかいなにかが顔に覆いかぶさる。


そして第二に、目の前が真っ赤だ。


正確には赤い何かが俺の視界をうばっている。


赤く、柔らかくて毛糸のような肌触り。

かすかに温かく、呼吸と共に小さく揺れている。


……呼吸!?


俺が理解する前に、『ボコッ』という効果音と共に俺の顔面に激し痛みが。


そしてソファにいたはずの俺は、気付けば床に転がっていた。


そして、顔面。特に鼻に、熱くて鈍い痛みがじわじわと。


なにが起きたのか理解できず、俺はただ鼻を押さえながら起き上る。


すると目の前には………可愛いサンタ。


「いいい、いきなりなにするんですかうーみん先輩!!」


聞き覚えのある声。

そして何より、特徴的な俺のあだ名。


そう、うーみんとかふざけた名前で呼ぶのはあいつしかいない。


「ユキ!? お前なんでここに……てかなんで俺がこんな目に!!」


皆さんも分かっているとは思うが、俺は多分殴られた。


そして、俺を殴ったやつが、このユキという女だ。


「先輩が悪いんです!!ユキはただ寒そうな先輩を見て布団をかけてあげようと思っただけですのに……その、ほら、なんでもありませんです!!」


顔を真っ赤に染め、そっぽ向いてしまったユキ。


そうやらユキは、寒さで震えていた俺に毛布をかけようとしてくれてたらしいな。


そこで俺が勢いよく起き上がってしまったがために………。ユキの……その…控えめな……うん。


俺は気付いた。

そりゃ殴られて当然だわ。うん。


「あ、その!あれは事故で!!えと、……そのごめん!!!」


多分、俺は顔が真っ赤になっていると思う。


だけど仕方がないだろ。俺は事故だ。


「わ、分かってますです!!ユキもその……いきなりで驚いちゃって殴ったりしてすみませんでしたです」


「お、おう」


とりあえず、クリスマスの朝は刺激的なる朝だった。


……え? よく意味が分からないって?


そんなこと言わないでくれよ……俺にだってその、表現の限界というものがあるのだ。

つまり、その、ほら。


ユキの…そのほら、あれだよ。その……控えめな胸元に顔がだな……って、なんだこれ!!

もう良いだろ!!どんなバツゲームやねん!!


もう勝手に理解してくれよ!!恥ずかしすぎて死ぬわ!!


……ごほんっ。今のは忘れてくれ。


つまり、高校入ってから、今年の夏まで琴音以外の女子と会話した事が無かった俺にとって、まぁ、あれだ。

女子というモノに免疫があまり無くってだな。


先ほどのように、通常ならハーレムたる出来事も、今の俺にはただ恥ずいだけなのだ。


純情系男子だ。


って、俺の事はどうでもいい!


そう、気になる事がある。


「ユキ……なんでサンタの格好してるんだよ」


そう、サンタの格好だ。

誰が見ようとサンタ。


ひげは付けてないけどな。ひげ以外はサンタ。うん。


ついでに言っておくと、不法侵入している事にはもうノータッチで行くから。


「ほぇ? だってクリスマスじゃないですか。それに可愛いですよ? この衣装」


そう言うとユキは、サンタの格好を俺に見せつけるように、ゆっくりとその場で回って見せた。

あ、でんぐり返しとか、前転とかじゃねぇよ?


ちなみに、長そで長ズボンなので寒くはなさそう。


そしてさらに今気付いたんだが。


「ユキ、お前髪型どうした? イメチェン?」


いつもは後ろで二つに結っているが、今はそんな事もなく。

俗に言うストレートロングみたいな感じになってる。


髪型一つで、雰囲気って結構変わるものだ。


「あ、学校の時以外は、基本結ってませんです」


「え? でもこの前の休日は……」


「偶然です」


「あ、そうなんだ」


どうやら、そういうことらしい。


ちなみに、今7時ちょっと前。


「ふふふ。どうですか? 新しいユキはどうですか? 惚れ直しちゃったりしましたですか!?」


顔がニヤけてますよユキさん。


「確かに可愛いケドだな」


「本当ですか!?」


「でも惚れ直しちゃったりしない」


「うぅ……ショックです」


がくーんと、落ち込みましたアピールをしている。


なぜがっかりするんだ。やめてくれ。


そしてこれを読んでる読者様にいい事を教えてあげよう。……むっちゃ寒いやん。


そんなわけで、とりあえずこたつに入った俺とユキ。


流石に二人きりじゃ話が盛り上がらんな。


そんなわけで、俺はユキに疑問をぶつけてみる。



まず第一。


「家族と過ごすんじゃなかったのか?」


ユキは家族と過ごすからパスだと言っていたのにも拘らず、今現在ここにいる謎。これを解明しよう。


「そうですが……色々あって先輩に会いたくなったので来ました!!」


どうやら、色々あったらしい。

これ以上追及するのはよそう。



そして第二。


「お前……なにしに来たの?」


「だからうーみん先輩に会いたくて……正直、こっちの方が楽しそうな気がして」


本音は俺たちといた方が楽しいからだとさ。

……ユキの家庭って複雑なの?


まぁ、これ以上追求するのはよそう。


……また暇になったな。


と、その時だった。


「ほわぁ!!な、なんですかあの人!?」


ユキが突然大声をあげる。つーか、ほわぁって驚く奴初めて見たわ。


ユキの指差した方向を見てみると……。


「うへぇ!? 誰だお前!!!」


人間は驚くと変な声が出るらしいな。


って、それよりもこいつ誰!?


そう、俺とユキが見たものは。


全身ズブ濡れで、縄で縛られていて、メガネで銀髪で。


だがおかしいのはその顔だ。皮膚が、まるで硫酸をかけられたかの如く溶けだし、剥がれ落ちようとしている。つまり、顔面ぐっちゃぐちゃ。


ぐちゃぐちゃ度でいえば、プリンをフォークで潰しまくった時のプリンのようにぐっちゃぐちゃだ。


「や、山空……」


そんなモンスターが、俺の名を呟いた。


つーか、オメガだよな?


声はオメガだ。でも顔はぐっちゃぐちゃだ。


その時、二階から足音が。

どうやら、誰か起きてきたようだ。


そして、リビングへと入ってきた。


「海兄ぃ、なに大声出してるの……?」


琴音である。


寝起きゆえ、寝癖で髪が跳ねている。

いつも結っている髪も、今は結ってはいない。……まぁ、琴音は見なれてるから、ユキの時のような不思議な違和感はない。


そして、オメガの顔を琴音が見た。


「……」


琴音は、まだ寝ぼけているのか、しばらくモンスターと化した恭平の顔をじっくり眺めている。


つーか本当に何があったんだ。大丈夫かよオメガ。


俺の心配をよそに、オメガを見つめ続ける琴音。

それから、しばらく……。


「……うわぁ!?恭兄ぃ、なんでそんなズブ濡れ!?」


おい。もっとおかしい所があるだろうが。

顔にご注目しろよ。

絶対に顔だろ。あのイケフェイスがぐっちゃぐちゃのドッロドロなんだぞ。


その時だった。

なんの足音もなく、なんの気配も感じられなかったのに。

ある一人の存在感が薄い奴が。


「どうしたんだよ……って、恭平!?なんでまだ縛られてるんだよお前」


秋も見事に顔はスルーだ。


「うわぁあぁ!?」


そんな秋に驚く琴音。

なんでオメガの時より驚いてんだよ。


つーかお前ら!!ずぶ濡れより縄より、もっと目立つ所があるだろ!!


顔だよ顔!!


お前ら何だよ!!


そしてまた、二階から足音が。エメリィーヌが来た。


「カイ、なに騒いでるんヨか?」


とても寝起きが良いエメリィーヌ。

その手にはきちんと、俺が夜中に置いたプレゼントを握りしめている。


あれ? もうちょっと驚いたりとかしてくれてもよくね?

こちとら、反応だけが楽しみで……反応!


そうそう、エメリィーヌ!!お前、この間抜け兄妹にちゃんとした反応を見せてやってくれ!!


行け!お前ならオメガの顔に気付くはずだ!!


俺は必死でエメリィーヌを応援した。そして。


「……あ、キョウヘイなんヨか。おはようなんヨ!」


「おはようエメル」


まさかのあいさつ。

朝の挨拶がキチッと出来て、誠によろしいのだがね。


残念ながら、今は違う反応が欲しかったわけよ。


つーか、オメガもその顔で爽やかに朝の挨拶かわしてんじゃねぇよ。


「せ、せせ、先輩! 眼鏡先輩!! どど、どうしたんですかその顔!?」


俺の隣で、ユキが俺の待ち望んでいたツッコミを入れた。


待望のツッコミだった。

俺はこれを待った。


正直、俺の目がおかしいのかと疑いかけていた所だった。


ありがとうユキ。俺はお前のそのツッコミを、しばらく忘れないだろう。


「あ、ほんとだ……恭兄ぃどうしたの」


「俺も気付かなかったわ。恭平どうした?」


「どうしたんヨか?」


ユキの言葉で、やっとみんなが気付いたようだった。

お前らの視野狭すぎだろ。


みんなに心配され、やっとオメガが話し始める。


「この顔は……」


オメガの言葉の雰囲気に、その場が一気に静かになる。


そして、みんなが息をのむ。


その状況の中、オメガが呟いた。


「一日中泳いでたらふやけた」


ほぅ。なるほど。わからん。


「ふ、ふやけたぁ!?なにバカなこと言ってるんだよ!!そんなわけねーだろ!!」


秋がツッコむ。

そう、オメガの顔は、もうリアルでやばい。


直視できないほどのあり様だ。


顔に蟻でも這わせてみろ。一瞬にして砂場に見えるぜ、きっと。


「恭兄ぃ、もしかして寝ないでずっとお風呂の中にいたの……?」


琴音が、恐る恐る尋ねた。


「そうだよ!琴音ちゃんの残り湯を堪能していたのさ!!」


まだ騙されてるよコイツ。


「あ、はは。恭兄ぃ、よかったね……」


「うん!」


さすがの琴音も、種明かしするのが可哀そうになったのだろう。

メチャクチャ苦笑いだけどな。


「うーみん先輩、眼鏡先輩大丈夫なんですか……?」


ユキが小声で聞いてきた。


確かに、あの顔絶対におかしい。心配だよな。


「いえ、そうでなくてですね……変な人すぎません?」


「あ、そっちね。大丈夫大丈夫。あいつはいつも変だから」


「……ユキはあの人ちょっと苦手です……怖いし」


ユキはちょっと怯えているようだった。


確かに怖いな。変態だものな。


「キョウヘイ。顔が取れかかってるんヨが……」


エメリィーヌがやっとまともな質問へ。


そうだ。早くこの問題を解決せねば。


こんな変態の顔面ごときで、小説の文字数を増やしてはいられん。


ちゃっちゃと行くぞ。ちゃっちゃと。

ツッコミ所があっても、すべてを無視してすすめるからな。文句は受け付けん。


「あ、これか。これは大丈夫。なんたってマスクだからね!!」


ツッコミ所その1。なぜかマスク。

って、ボロボロだったのは皮膚じゃなくてマスクだったのか。


「なんだ。マスクだったんだ。なら早く取りなよ」


「うん分かったよ琴音ちゃん。……ぐっ、うっ、うおぉぉぉ!!!!!シャキーン」


ツッコミ所その2。謎の雄たけび。

ツッコミ所その3。謎の効果音。


「あ、マスクが取れて元の恭平に戻ったんヨ」


ツッコミ所その4。縄で縛られていて両手が使用不可のはずなのにマスク取れちゃった。


「あ、見られてしまった。琴音ちゃん。僕の素顔を見てしまった人には、生涯責任を取らせよと言われているのだ。結婚しようよ」


「お断りっ!!」

「グホォッ」


ツッコミ所その5。謎設定。

ツッコミ所その6。琴音怖い。


ほっとく所その1。秋空気。


「こ、琴音ちゃん。いつも以上に、激しいじゃないか……ガクッ」


「うーみん先輩。何ボーっとしてるんですか?」


俺の方をユキが揺らしてきた。


おぉ、終わったか。

ツッコミ所カウンター機能停止。よし。


「おいみんな!外を見よ!!」


俺は勢いよくリビングのカーテンを開く。


するとそこには、庭一面に降り積もった雪。


まさしくホワイトクリスマスだ!!!


ホワクリだ!!ホワクリホワクリ!!ん? フォアグラ? って、なに考えてんだよ俺。


「おー!!すげー積もってんじゃんか!!」


やっと秋が喋りはじめた。


お前の感想など聞きたくない。

琴音やエメリィーヌ。ユキなど、女子の感想を求めているのだ。小説的に。


「ま、真っ白や!待ち歩く少女たちのし『恭兄ぃ。うるさいよ』


「琴音ちゃん!悔しかったら止めてみグフォ!!」


容赦なく神の鉄槌をくだす琴音。


オメガもオメガだ。よくやるよ……ホント。


つーか、お前らいいコンビだな。


そんな事より雪だ。

こんなにも積もる事なんて珍しいからな。


琴音やエメリィーヌも大興奮間違いなしだろう!と、思ってたのが約3秒前の俺。


だが現実は甘くなかった。


「うぅ、どーりで寒いと思ったよ。こたつこたつ」


………琴音ェ...


「ウチも寒いのは嫌いなんヨ……こたつこたつ」


……エメリィーヌ……。


くそ、たるんどる!!


最近のわけぇもんは根性というものを知らん!!


よって、この江戸改革の新生児と呼ばれたこの俺直々に指導しちゃる!!!


「江戸改革って……お前今いくつだよ」


「ふっ、見た目どおりさ……」


「あっそ……」


なんだよ秋。その目はいったい何だよ。


いいだろ。俺だって何か名称が欲しかったんだよ。


ほら、秋だって色々あるじゃん。


生ける屍とか、落ち武者ゴロ太とかさ。


「ねーよ!!そんな嫌な名称ねーよ!!てか、ゴロ太って別人やん!!」


「はぁ!?なに言ってるんだよお前。ゴロ太なめんじゃねぇぞ!?」


そう、ゴロ太は中肉中背で、うす味を好み、愛と勇気と正義を置いてきた奴らが健康を貫くために戦うRPG。


「ゲームかよ!!しかもありそうで嫌だなおい!!」


いや、そんなゲームないだろ。どないなゲームやねん。


「秋先輩!!雪ですよ雪!!秋先輩を突き落としてもいいですか!?」


「よかねーよ!!なにがどうなって俺が突き飛ばされなきゃならんのだよ!!」


「突き飛ばすんじゃないですよ。突き落とすんです」


「大差ねーべ!?」


「え、大佐命令? なに言ってるんですか?」


「なんで聞き間違えた!!何がどうなって大佐命令になった!!てか大佐ってだれさ!?」


「大佐は大佐ですよ。もしや秋先輩って、テストの点数悪い人ですね?」


「大佐なんてテストで出てこねーよ!!」


「なに言ってるの秋兄ぃ。ペトラ大佐はテストに出て来るでしょ?」


「え? そんな大佐いたか?」


「いる訳ないでしょ」


「いねーのかよ!!唐突に変な嘘つくなよ!!」


秋とユキと琴音がミニコントっぽい事してる。


クリスマスなのにね。なんだろう、このへんな感じは。


なんで雪がこんなに積もってるのに遊ばないんだろう。


雪で遊ぼうぜ?


みんなでさ。雪で遊ぼうぜよ。


雪玉とか持ってあそぼうぜ? 平和にさ。


「みんなでユキを(もてあそ)ぶんヨか?」


「それ誰かが言うと思ったわ。つーか、その言い方やめろ」


意味を間違えれば卑猥なことになる。聞く人によっちゃあらぬ誤解が生まれそうだ。


「そういえば、エメリィーヌ。お前雪は初めてか?」


「ん?ユキなんよか?」


「違う。外の雪」


何回同じネタをやらせるんだよ。


「それは当然にして偶然。出来過ぎた奇跡という言葉。だが奇跡は起きるものではない。起こす物なのだヨ」


「無駄にカッコよく言ってんじゃねぇよ」


とにかく、雪初体験ならば遊び方もしらんだろう。色々遊び方ってもんがあるんだよ。


これで、エメリィーヌをホワイトの中に包み込んでやるぜ!!


って、それじゃ生き埋めじゃねぇか。


まぁ、なんとなく気合が伝わればよしとしよう。


「じゃあみんな!外で遊ぶぞ!!おぉぉ!!!」


俺は元気よく皆に告げた。


「カイ、その前にクリスマスケーキを食べるんヨ」


……エメリィーヌめ。なぜクリスマスは知らんくせにそんな事は知っているんだよ。


「あ、ごめん。私が寝る前に教えちゃった!」


確信犯は琴音か。……まぁ、しょうがない。食ってからにするか。


「じゃあ、食ってから外で遊ぶぞー!」


「そうですね!うーみん先輩、ユキが超特大サイズを作ってあげますからね!」


「お、雪だるまか? いいよなぁ、特大の雪だるま」


「違います。雪うさぎです」


うさぎかよ。


「カイー!早くするんヨー!!」


「分かったよ。そこで待ってろ」


俺は台所に秘伝の特大クリスマスケーキを、みんなの前に出した。


「あれ? これ海兄ぃが作ったの?」


琴音が一目見て俺の手作りだと見抜いた。


「なんでわかったんだ?」


自分で言うのもあれだが、今回は店にも引けを取らないデコレーションっぷりのはず。


ちょっとやそっとじゃ、分からないと思うのだが……


「……箱。ケーキの入ってた箱」


琴音が呆れながら、俺の持っているケーキの箱を指差した。


あ、そうか。

作ったわいいけど、ケーキの入れ物が無く、仕方ないから小型の段ボール箱に……。


「しかも、ケーキのチョコのやつ、なにがあったんだよ?」


秋が言った。


「い、いやー、実は途中で分かんなくなっちゃってさ。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるってやつ?」


「……いや、だからってこれは無いだろ。さすがに」


「先輩……適当すぎません?」


ちょ、分かってるよ。

みんなしてそんな目で見るなよ。


『W←ミス Merry Xマス』チョコにはそう書かれている。


「海、『Merry Christmas』だからな。そのくらい覚えとけよな」


「うるせぇな。ちょっとド忘れしただけだっての!!」


俺をバカ扱いしやがって。

時間が無かったんだししょうがないんだよ。


「じゃあ何で最初に『W』書いたんだよ。しかもミスったんなら上から塗りつぶせよ」


「うるせぇな。チョコが逆さまだったんだよ!!」


「なんだそりゃ」


これは本当の事だ。

苦し紛れの言い訳ではない。


「それにしてもひどいですね。琴音っちもそう思いません?」


ユキがさっきから無言の琴音に話をふった。


「え!? あ、あ、ああそうだね。でも、海兄ぃだって頑張って作ったんだし!!そんなことどうでもいいと思うよ!!」


「……まぁ、そうですね。琴音っちの言うとおりです。早く食べましょうです!」


「あ、ああ。そうだな。海!悪いんだけど、ケーキ切ってくれないか?」


「わ、わかった。今切るからまっとけ」



こうして、俺はケーキをみんなに分けた。


ちなみに、オメガはずぶ濡れだったので着替えてきていたらしい。

どうりで途中から姿が見えないと思ったんだ。


なので、オメガも参加して、俺たちは朝っぱらからケーキだ。

普段なら高いから絶対に買わない、瓶のカルピースを注ぎ、みんなこたつを囲むように座った。


チョコはエメリィーヌにあげようと思ったのだが、エメリィーヌが琴音にプレゼントしたのを俺は見逃さなかった。


「おい琴音。気にすんな。明日があるさ」


ずっと暗い琴音を、一応俺が元気づけておく。


そうだ。明日があるのだ。

たかが英語が分からないくらいで落ち込んでるんじゃないぞ琴音!!


「海兄ぃ!別に、落ち込んでないから平気だよ!海兄ぃのやつのどこが間違ってるのかが分からなかったくらいで落ち込んでなんか………ないよ」


うそこけ。


「そりゃ、ちょっとぐらいはおかしいと思ったけどさ……、秋兄ぃが分かるのに私が分からない訳ないしさ……はぁ」


すっかりがっくしムードだ。

くそ、しょうがない。


元気づけるしかないな。


でもどうしようか。


俺が悩んでいると、さすがは兄貴。やりおる。


「なぁ琴音、気にすんなよ。まだいいじゃねぇか。英語『だけ』苦手なんだから。俺なんか、ほとんど苦手だぞ!!さらにいえば、海なんかいつも赤点ギリギリだぞー!!」


ちょ、なに勝手に俺の学力ばらしてくれてんねん。


「うん!わかったよ。もう平気!!その前にケーキが食べたくなった!!」


どうやら元気を取り戻したらしい。よかったよかった。


「じゃあ、みんな行くぞ!」


俺の合図と共に、みんながジュース入りのコップを持つ。


そして。


『メリークリスマス!!』


そう言いながら、コップを上にあげ、みんなで叫んだのだった―――――



―――――そのあとはみんなでケーキを食べ、外で遊び、楽しく過ごした訳だ。


てか、外で遊ぶ所も書けよ。雪で遊ぶ所も書けよ。手を抜くな作者。


……まぁ、綺麗の終われたので良しとする。



それじゃーみんな!メリークリスマス!!!


そして作者から一言!!

『……これが終わったらもしや、元旦の話も書かなくちゃいけなくなるのか……?』


はい、締りの無いお言葉ありがとう。



じゃ改めて、メリークリスマス!!じゃね!!




クリスマス特別編!! 完


~おまけ~

海「そういえばお前縄で縛られてたんじゃねぇの? 縄どこ行ったんだよ」


恭「あぁ、あんなもの魔力を開放して消し去ってくれたわ」


海「はぁ?」


秋「結構頑張って自力で解いてごみ箱に捨ててたぞ」


海「……ははは」


琴「ところでエメリィちゃんのクリスマスプレゼントはなんだったの?」


エ「3○Sの…」


琴「あっ! いいな!」


エ「…カセットだけが入ってたんヨ」


琴「え?」


海(すまんエメリィーヌ……! 貯金が足りなかったんだ……!!)


恭「しょうがないから僕が本体をあげるよ」


海「お前持ってたのかよ!!」

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