第六の問い「三男は、あいつなんだけど、どうか?」
「あっちゃー……すみません、突然、意味不明な乱入者を入れてしまって」
手を振りながら出てきたあたしに、メイドさんは苦笑い。
どうやら、あの平手打ちの音は、そこまで届いたみたいだ。
「さて、次の部屋に入る前に、着替えてもらえないでしょうか」
小首をかわいらしく傾げ、質問をするメイドさん。
「え? なんでですか?」
「実は、お伝えしたくはないのですが、次の人物、三男、第三王子は、あなたととても仲の悪い――あの人なんですよね」
その言葉で、ぴっきーんとくる。
中の悪い――つまり、あいつだ。冷血人間キャラ、黒髪の、いやぁーなやつ。
「その人が、ジャージで来させるなと、おっしゃっていたので、着替えていただこうかと」
うん、あたしも登場草々で怒鳴られるのはまっぴらごめんだ。
というわけで、着替えることに。
「ドレスとメイド服。今用意できるのはこれくらいでしたが、どちらがよろしいでしょうか?」
そ、それは究極の選択……。
あたしはどっちも似合わないのは自分が一番わかっているし、着替えてメイクしたら美人さんになる設定なんて、あの作者が作るわけないし。
でも、メイド服で行ったら「ふざけているのか……?」とか言われそうだし。
「じゃあ、ドレスで……」
ああ、ドレスなんて着るの、七五三以来だなぁ……。
Q、三男は、あいつなんだけど、どうか?
A、答えるまでもない。
「失礼しまーす……」
ドレスなんて着たことなかったから、数十分も苦労して、ようやく三男と会うことに。
そこで待っていたのは、予想どうりあいつだ。
「遅い! 何やっていたんだ!」
腕時計を見ながら、怒鳴り散らす黒髪のイケメン。
レイだ。
「あんたのお望み通り、着替えてきたんですぅー。文句言う筋合いはありませんー」
あたしのやる気のなさそうな答えに、レイはさっそく、
「ふん。お前にドレスなんか、もったいないな。豚の着ぐるみでもよかったんだぞ? お似合いで」
悪口。
ふん、そっちがそういうつもりなら、こっちだって言ってやるよ。
「あんただって、人のこと言えないんじゃないのー? あんたのお兄ちゃんたち、あたしが来たら椅子進めてくれたけどー?」
「あいにく、この椅子は繊細でな。お前が乗ったら壊れそうなんだ」
「ああそう。じゃあ、あんたが乗っても壊れるわね」
「ほめ言葉をどうも。こっちは鍛えているんで、お前とは重さの種類が違うんだよ」
「あらそう。じゃあ、一生、その椅子には座らないように気を付けてね」
おほほほ、と口元に手を開け、上品な笑い。
レイも、はっはっは、と、腰に手を当て、寛大な笑い。
ところが、その笑い合戦も、すぐに尽きる。
「おら、表でろやごらぁ! この俺様に何言いまくってんだおらぁ!」
「そっちこそ出なさいよ! このあたしに、何回悪口行ったら気が済むわけ!?」
バチバチと、火花を散らす。
すると、不穏な空気を察したのか、メイドさんが部屋の中に入ってきた。
「レイ様っ!? 保崎さま!? おやめください!」
あたしとレイの間に入る。
その途端、レイが「おまえ、ようやるよな」と、不思議な一言を発する。
するとメイドさんは、少し待っていてください、と、黒い笑みとともに言い残し、レイを部屋の隅に連れ込む。
何やらこそこそと話し合っているようだ。会話の内容は気になったが、プライバシーの侵害になりそうなので、あたしは椅子に座って待機。
数分後、げっそりしたレイと、生き生きとしたメイドさんが、あたしのもとに来た。
「お待たせいたしました。では、話の続きを」
一礼し、スカートを大きくひるがえし、ほれぼれするような歩き方で部屋を出て行った。
残されたのは、あたしと、魂を吸い取られたかのようなレイだけ。
「……あのー……大丈夫ですか……?」
「ダメだ。誰でもいい、助けろ」
そういって、手を取ってきたレイ。
あたしはいきなりの行動に、悲鳴を上げ、
「変態っ! 触るなボケっ!」
優雅に平手打ちではなく、得意な右ストレートを食らわして、あたしは、メイドさんのように、部屋を後にした。
にしても、あのメイドさんの正体って……?




