第四十九の問い「この決意は間違っている?」
告白……。
シェル君の言っていたアドバイスと、レイとウォンチさんのキスシーンがぐるぐると頭を回る。
「したいけど……でも……」
ごろん、と自分のベッドの上であたしは寝返りを打つ。窓の外はすっかり暗く、今夜は冷えるようだ。さすがに薄いドレス一枚だと風邪をひくので、服にしわが付くのを心配したが、ふわふわの羽毛布団をかけた。
「……もし……レイとウォンチさんが両想いだったら……」
そんなマイナス思考が頭をぐるぐるとまわる。ついでにあたしの寝返りもぐるぐるとヒートアップしていく。
って、こんな乙女だったっけあたし!!
布団を押しのけ、上半身を起こす。縛った前髪がぼさぼさになっているのに今気が付き、とりあえず縛りなおした。
「……そうだよ、あたしを誰だと思ってるの! 乙ゲーの達人、保崎秀名様だぞっ!? 失恋の一つや二つで、悲しくなるあたしじゃないじゃないか!!」
そうと決まれば告白の手段だ。どうやって告白をしよう……。無難に恋文とか? いや、やっぱ直接言ったほうがいいかな……? でもやっぱ……?
ほとんど0になってしまった自分の乙ゲー達人経験値を何とかあげて、あたしは唸りながら机に向かった。
Q、この決意は間違っている?
A、違うと信じよう。
「……あーっ! 絶対あれ、保崎に見られたよな……」
一方。夜の闇に溶け込んでしまいそうな黒で統一された部屋の中央で、レイは頭を抱えていた。考えるのはこの恋愛ゲームのプレイヤーのことだ。
「…………悲鳴あげられたから絶対見られてる。ってことは絶対誤解されてる。……何で逃げなかったんだ、俺っ!」
確かにウォンチに不意を突かれ、ついしてしまったが、別に特別な関係でもない。だが、「キス位」と言っていたウォンチの感覚と秀名の感覚は違うだろう。ウォンチにとっては告白の代わり――あるいは挨拶のようなものなのかもしれない。だが、16の小さな少女の秀名は、キスは特別なものと思っているのだろう。……自分がどちらかと問われれば、変な意味ではないがおそらく前者だろう。もしくは、前者に限りなく近い後者。
「だぁぁーっ! じゃあもう言い訳をするとか……」
そう考えてレイは首を振った。それだと逆に誤解されそうだ。おそらく逆効果だろう。
「じゃあどうすればいいんだよっ! もういっそのことあいつにもキスを……」
平手打ち……いや、グーパンチをお見舞いされて終わりだろう。もしかしたら変態視をされるかもしれない。
「……ああもうっ、とにかく話だ、あいつと話をするしかないだろ」
頭をかきむしって、ドアノブに手を伸ばし――そこで止まった。
「…………ウォンチに告白、断っておかないと行かないんだよな……。面倒くせぇ……って、それ以前にこえぇ……」
げんなりとした顔で、レイはドアノブをひねり、秀名の部屋とは反対の、おそらくメイドが片付けをしているだろうパーティー会場へ重い足を引きずりながら進んだ。
レイは最近ヘタレキャラですねw
って言うか終わる終わると宣言し続けていまだに終わる気配がない異世ハー←
どうするんだ自分