第四十八の問い「彼らは何をしていたんですか?」
テスト終わりましたーっ!
生還しました、星野です
テスト返されたくないですw
叫ぶだけ叫んで、あたしはそろそろとその場を退散しようと試みる。
しかし、見つからなかったわけないわけで。
「……保崎ッ……お前、何悲鳴あげて…………おい、保崎?」
ダッシュでその場を離れたあたしの背後で、焦ったようにレイがあたしの名前を呼んでいた。
「……ッ、見られてたからか…………おい、いきなりなんだよ……ッ」
「別に、キスなんて減るものじゃないですよ。中学生じゃないんですし。いいじゃないですか。それに、あたしの気持ちは前から伝えていたはずですけど」
「…………何だこの状況」
Q、彼らは何をしていたんですか?
A、答えたくないです、はい。
「…………あーっ……なんだか変なもの見ちゃった気がする……」
先が見えない長い廊下を、ヒールをぶら下げて足を引きずりながら歩くあたし。誰かにすれ違ったらおかしな心配されそうだから、早く部屋に戻ろうかな……。
「……一人になりたくないな……」
今のあたしはネガティブで、一時的なガラスの心。きっとベットに入っても一晩中考えて考えて、くまができた顔で起床するだろう。……想像しただけでもひどい。
「……なんだか前の引きこもりネガティブ根暗魂が今復活した……」
ひらひらのドレスだってあたしになんか豚に真珠だ。以前言われた言葉を思い出した。ため息もなんだか大きく聞こえる。
フカフカのじゅうたんの上を、下を向いて歩いていると、誰かにぶつかった。
「……いったぁ!」
「こっちのセリフだよ……保崎秀名?」
ぶつかったのはジェル君。……いや、シェル君。
「何だよ、前ぐらい見て歩いてほしいな」
にこり天使の笑顔で言うシェル君。
うん、言葉と笑顔が一致していないなー。
「うっさい……あれ? なんで泣いてるの?」
「は? 泣いてなんか……」
思わず頬に手を当ててみると、確かに冷たいお水が。泣いているとわかったらもう止まらない。ぽろぽろと出てきて止まらない涙が、あたしの頬や顎を濡らす。
「……うわっ。え、ちょっ、どうしよう、っていうかどうすればいいの」
「……なんだか止まんないよぅ…………。どうにかして……」
目の前でおろおろうろたえるシェル君。とりあえずあたしの頭をポンポンと叩く。
「何があったんだ?」
しゃくりあげ始めたあたしは、とりあえず説明しようと試みるが、言葉が出ない。しゃく、しゃく、とまぬけな声を出すだけだ。
「……どうせレイがらみなんだろ」
「しゃく。……なぜわかった!?」
「別に」
そっぽを向いたシェル君は、少ししてからにこりと笑って、
「あまり悩むなよ。確かにこの世界はただの恋愛ゲームじゃない。でもお前は確かに元の世界へ帰るんだ。短期間の恋愛と考えても――」
「無理なの!」
いきなり怒鳴ったあたしに、シェル君は「わっ」と声を上げて驚く。
ぎゅ、とヒールをつかんでいる手が強くなる。
「あたしがずっとやってきた恋愛ゲームパラメーターも、経験値も、あいつの前だと全部なくなっちゃうの。頭が真っ白になっちゃって、ただの一言でうれしくて、選択肢間違えて、後悔する。そんなこと今まで出なかった。初めてなんだよ。わかんないんだよ」
「…………お前、何があったかはわかんないけど、とりあえず告ってみれば? だってレイもお前のこと――」
その瞬間、シェルがやべっと言って口を閉ざした。……なんだろう? 聞こうと思ったけど、シェルは競歩ばりの速さで去って行った。
まあいいや。とりあえず人に相談できてよかったし。にしても……告白、かぁ……。