第四十六の問い「ついに返事を……?」
あたしとソウシは、会場の中央に向かっていた。……正しくは、ソウシが腕を引いてあたしが引っ張られているんだけどね……。
でも中央って、すっとした鼻筋の綺麗な人たちがダンスを踊っているんだよ? ドレスだって素敵で、ふわりと回転するのが、花が咲くみたい。
「あの、ソウシ? こんなところに来てどうするの」
「踊る」
「え? あ、ちょっと!」
強引に腕を引かれたあたしは、思わずソウシとワルツに合わせて足を動かす。音楽のテンポが速いからか、ソウシもあたしも、ダンスは少しガサツになってしまう。到底中央で踊れるレベルではない。
「ソウシ……?」
案の定、すぐに息を切らしたあたしは呼吸の合間に彼の名前を呼んだ。
「保崎、お前、答えきまったんだろ?」
「え?」
いきなり切り出されて、あたしは驚き、思わずソウシの足を踏んでしまった。しかもかかとの部分で。……今日は水色のドレスに合わせた青いピンヒールです。
「…………ッ!」
今日初めてのドジやってもうたぁぁーっ! しかもこんな会場の中央でーっ! 最悪だ、あたし何やってんのーっ!?
慌ててしゃがみこんだソウシを起き上がらせようとしたとき、彼があたしの腕をがしりとつかみ、
「会場に救護室あるから……悪い、肩貸してくれ」
足の甲をかばいながら起き上がるソウシ。あたしは慌てて救護室の場所を聞き、肩を貸して運ぶ。
申し訳なさそうに笑いながら賑やかな会場を離れ、お屋敷の廊下へと向かう。
「……本当にごめんね? 血がにじんでるかも」
「大丈夫だろ、これくらい。お前のヒールの先はとがっているのか?」
安心させようと笑うソウシだけど、額に浮かんだ汗がすごく痛いのを物語っている。そういえば、こいつの靴は何でできているんだ……?
疑問を浮かべながらも、あたしたちは救護室の前に到着。ドアを開けると、なぜか誰もいない。……そういえば、誰か会場で怪我していたよね……。
「いないな。とりあえず自分で何とかなるよ。保崎は戻ってよし」
「え? なんかそれも悪いよ! あたしも看病するから」
近くに合った小物入れの引き出しから包帯を取り出し、あたしは自信満々に言う。
「一応保険の成績は良かったんだよ? ……中学生の時のことだけど」
「心配だよ! いいよ、お前はレイのところにでも行ってけ。僕は大丈夫だから」
しっしっと手を動かすソウシを、あたしはグーパン。見事に頬に命中しました。
「…………っ?」
力を抜いたものの少し赤くなっている頬を押えながら、あたしのほうを信じられないという風に見るソウシ。
あたしは無抵抗になったソウシの靴を脱がし、傷を確認。確かに赤くなっている。この靴って役立たず……。
「あちゃー、痛そ。とりあえず消毒だね。ソウシ、どこにあるか知ってる?」
あたしが消毒液を探していたとき、ソウシから言葉が掛けられた。
「お前、告白の返事、決まってるよな」
Q、ついに返事を……?
A、はい、そうです。
「…………決まってるよ」