第四十五の問い「不安な関係?」5
「お前、ソウシと何話していたんだ?」
会場に入ってすぐに、レイがそうつぶやいた。会場の音楽にかき消されそうなほど小さな声で、あたしは聞き取るのに必死だ。
それでも何とか聞き取り、彼から差し出されたオレンジジュースを一口含んでから、少し大きめに答える。
「別に、普通の世間話?」
……まあ、好きな人に「告白されたので返事を……」なんて言って誤解されるようなこと言いたくないし。これくらいなら嘘をついても平気だろ。
でも、あたしたちのあの雰囲気を誤解されるのは当り前なわけで……。
「お前、ソウシとなにかあっただろ」
ぎくっ。
あたしは思わず背筋を伸ばしてしまう。
「……図星だな……。何があった? まさか、お前……」
青ざめたり赤くなったりするレイを見て、あたしは察する。って、そんな誤解されたらさすがに嫌だぞ!?
「ちがっ……! あたしはただあいつに告白の返事を……」
「告白……?」
「……あ…………」
しまった、口が滑ったっ!
しかし、言った言葉は消すことができない。慌てて手を使い空中を切ってみるが、もちろん何の意味もなく。
そして、レイの口から恐れていた言葉が。
「……お前、やっぱりソウシのこと、好きなの……か…………?」
「っ、それはないっ! だってあたしが好きなのはっ、」
はっ。危ない。
あたしは間一髪のところで自分の口を押え、口がつるりと滑るのを防いだ。
「……誰なんだ……?」
その時、レイがあたしの手首をつかみ、壁に押し付ける。さらりとあたしの髪が舞った。
今までにない一番の力でつかまれた手首は、少し汗ばんでいる。
「……アシルか……? ……もしや、クロードとか……」
「いや、クロードはない」
苦笑いを浮かべながら反論するあたしに、レイは頭が冷えたようだ。無防備なあたしの状態に顔を赤くし、ぱっと手を離す。
「す、すまないっ……! その、別に襲おうなんて考えていな……」
「好きでもない女にそんなことやって何になるのよ。あんたは遊び人か?」
手が離されたので余裕の笑顔で返す。
その時、ドアが開きソウシがつかつかとこっちに来た。
……もう十分か……。
「じゃあ移動しますか」
ゆっくりとソウシのほうに歩くあたしに、レイは不安そうな目でこちらを見てきた。
そ、そんな目で見られたら後ろ髪をひかれてしまうではないか……!
「……レイ……大丈夫だから。そんな顔しないのっ!」
背中を思い切りたたき、あたしはつかつかと歩いていく。
……大丈夫、レイ。あたし、返事は決まっているから。
Q、不安な関係?
A、立っ切って見せるから!
やっと不安な関係が終わりました……><
そして完結の雰囲気も……?
余談ですが、次の連載作品をいまだ考えていないです←