第五の問い「次男登場。恋の予感はあるのか?」
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ぷりぷりおこりながら部屋から出てきたあたしを見て、例のメイドが、
「やはり、苦手なタイプでしたか……」
と、苦笑い。
あたしはうん、と激しく同意。
「では、次の部屋に行きましょう。次は次男、第二王子のアシル様です」
アシルかー。いい人だったらいいな。
そんなことを思いながら、一分もたたないうちに、クロードのところの部屋と同じような飾りが付いた、豪華なドアの前についた。
「それでは、行ってらっしゃいませ」
深々とお辞儀をして、あたしを部屋の中までに案内しないようだ。
クロードの時と違う扱いに、あたしは疑問を抱く。
「あの、なんで部屋を開けないんですか?」
「わたくしはこの部屋の人――アシル様と、あまりかかわりたくないんです」
かわいらしく、にこりと笑うが、そこに何かただならぬものを感じたあたしは、それ以上の探索をあきらめ、扉を開けた。
「あの……保崎です……」
部屋の奥にいたのは、
「ああ、いらっしゃい」
椅子に座った、クロードよりは小柄な男性。
まず目に付くのは、縁なしのメガネ。その奥の瞳は茶色く、瞳と同じ色の髪は、長髪を後ろで三つ編みにしている。おっとり系のようなオーラで、背後には花が見える。
見た目は大丈夫そうな人だが、油断大敵。警戒せよ。
すると、アシルさんは、すぐに手元の本に目を落とす、第二王子。
本の題名は「Q、猪瀬でハンバーガーは食べれるのか?」。
「……なんか、どこかで聞いたことがあるような題名ですね……」
「この本を知っているのかい? 略して『猪瀬ハー』だよ。本好きなら、話も弾みそうだね」
いえ、あたしは大体、ラノベ、しかもハーレムものくらいしか読みませんから。
と言おうとしたのだが、その隙も与えずに椅子に座るように勧める、アシルさん。
「あ、ありがとうございますー。座らせていただきます」
うん、この人はいい人だ。
にしても、こんなに紳士的なら、何がいけないのかなー……。
と、思考をしていると、廊下からだだだっという音と、メイドさんの「いけませんッ!」という声がした。
「!? なんでしょうか」
さあ、とアシルさんは首をかしげる。
その時、盛大な音を立て、気温は結構低いのに、半分露出しているミニドレスを着た、ケバイ女の人が入ってきた。
その人は、あたしの顔を見ると、たっぷり口紅をつけている唇の端を、ぐ、としたに下げ、
「なんなのこの小娘!」
と、怒鳴った。
「はい? あたしは保崎 秀名です」
「ホザキぃ? 変な名前しやがって。あたしのアシル様に、近づくな、糞アマ!」
……あたし、悪いことなんてしていないと思うんだけどな……。
いや、待てよ。
お母さんの財布からこっそり五百円パクッたのがばれた!? いや、あの時は五百円だからいいやとか思っていたけど、もはや怨念が異世界まで来ちゃうとは思わなかったよ。
「お母さん、ごめんなさい……お母さんにとって五百円がそんなに重いものだとは思いませんでした……ですから、ちゃんと成仏して……」
急に語りだしたあたしに、お母さん(らしき人)は、ひくっ、と顔を引きつらせる。
そして、違うわよっ! と、唾がかかりそうな勢いで怒鳴ってきた。
「あんた、アシル様を横取りしようとしているのね!? わかったわ。でも、アシル様は私のもの――」
「え? 待って。君、誰だっけ」
ぴっきーん。
空気が、張りつめた。
すべてはアシルさんの一言によって……。
「ああ、思い出した。君、街中で、いつも僕に焦げたクッキーをくれる人だね。真心はこもっているけど、正直言って、それなら下級貴族の娘さんたちがいつも売っている、屋台のクッキーのほうがましだな」
すると、その時。
ぱあん。
女の人が、アシルさんの頬に、平手打ち。
「そんなにひどい人だとは思わなかったわ! もういい、帰ります!」
ミニのスカートを翻し、彼女は廊下の奥へと颯爽と消えて行った。
「……あの、大丈夫ですか……?」
口の端を赤くして、頬を抑えているアシルさんに駆け寄り、恐る恐る顔をのぞく。
まさか、この人もクロードみたいな遊び人……? いや、悪女、じゃなくて、悪男?
すると、彼の口から、とんでもない一言が吐き出された。
「どうしたんだろうか……僕は本当のことを言っただけなのに……」
ああそうか。こいつは、悪男じゃない。
天然の、悪男なんだ……。
「天然キャラ、撲滅しろーっ!」
あたしはアシルさんに、さっきの人よりも大きく音を立てた平手打ちを食らわし、部屋を出た。
Q、次男登場。恋の予感はあるのか?
A、絶対、む・り!