第四十ニの問い「告白に合うシチュエーションとは?」
「保崎、おい待て、僕も行く」
急に声をかけられたあたしは、びっくりして後ろを振り向く。
後ろには、走ってきたのか息を切らしたソウシの姿。
「……どうしたの? あ、クロードからなんか言われたとか」
その途端、ソウシの顔が再びトマトに。
あたしが部屋を出てから、ソウシはクロードに何か耳打ちされていたのを、あたしは見た。
「い……いえるわけないだろ……」
手で自分の真っ赤なほっぺを押え冷やし、そっぽを向くソウシ。
な、何を言われたんだろう……。
「…………いえるわけないだろ……『告白のチャンス』なんて……」
「ん? なんか言った?」
下を向き、ごにょごにょとなにかをつぶやいていたように見えた。
でもソウシは必死に首を振り、否定。
「……なんか怪しいんだけどなぁ……」
「と、とにかく。早く水持ってこようぜ」
「なんで水持ってくるだけなのに二人も必要? あ、あたしもどろっか? あんたは水でもジュースでも炭酸……ソーダでも好きなの持ってきなよ」
ソーダ。
あの出来事があったのは、つい数日前だったなぁ。その出来事があって、ソウシと仲良くなったんだっけ。
「懐かしいな……」
「懐かしい……」
小さく笑っているソウシと、にっこり笑っているあたし。
声が見事にそろい、なんだか笑える。
「……ソーダでも飲むかなぁ……」
「まだ噴出させないでよ」
「わぁかった、わかった」
生返事なソウシ。
あたしは不審な目でソウシを見つめていたが、やがて吹き出した。
Q、告白に合うシチュエーションとは?
A、そんなにロマンチックなのかな?
「まったく、見事に噴出させて。あんたってやっぱバカだろね」
「お前があけたがったからだろ? ったく、何期待してたんだか」
手にはもちろんソーダ。噴射しました、見事に。
「……はーあ、ダンスの練習かー。ウォンチさん、結構足踏んでくるんだよな……保崎……?」
光のこぼれるドアの向こうには、レイとウォンチさんが手を繋いでダンスの練習。
すっごくお似合いな二人。
自分がこんな女々しいやつだとは思わなかったけど、なんだかつらくなってきた。
「ゴメン、ちょっと手ぇ洗ってくる……うわっ!?」
がっちり。
抱きしめるというよりはつかまれるという力で、ソウシが抱きしめてきた。