第三十四の問い「この雰囲気、何とかなりませんかねェ……?」
前回までのお話っ!
あたしの部屋に、急に女たらしの長男がやってきて、あたしをからかった後、冷血人間の三男と女装男子の六男を置いて、自分はさっさと帰りやがったよ!
さてさて、残されたあたしたちはどうするのか――……。
「……って、やってらんないわよ!」
突然怒り出したあたしに、二人はびくっとする。
「ど、どうし――」
「ありえない、ジェル君とかアシルさんとか、結構話が保つ……いや、仲がいいヒトだったらともかく、なんでこの二人!? 嫌がらせの上でのこの組み合わせ!?」
「そんなにキレても仕方がないし、とにかく部屋に上がらせてよ。これはレイお兄様も思っていると思うよ!」
「誰が入れるか。部屋にマングース入れるのと一緒だよ!」
「こんなにかわいいマングースどこにいるんだよ! ……あ、今女装してないんだった」
自分の服を見おろし、少し残念そうに言うソウシ。
そんなに男時がかっこよくないわけでもないし、なんで残念そうなんだろう……?
ソウシがパッケージにいる乙女ゲーは絶対買うね、うん。
「おい自分を乙女ゲーのキャラクターに例えられたぞっ! それはさすがにうれしくない!」
「いいじゃん、あたしにとっての最高の褒め言葉」
「うそだろそれ! 視線泳いでるぞお前! クロールでもしてみるか!?」
「いいよいいよ、クロール」
ゆらゆらと特殊な目の動きをする。
いい出来だと思ったけど、睨まれる。
「ふざけてるのか……?」
「お前に頼まれてやったんじゃん、元凶はソウシ!」
「……あのー……ちょっといいか?」
突然手を上げたレイ。
……ちょっと存在忘れてた。
「そういえば、レイって最近冷血人間っていうより、空回りしてるかわいそうなキャラに成り上がったよね」
「それは成り下がったという」
「そうかなー……?」
楽しそうに(少なくともあたしは)会話をするあたしとレイに、ソウシはふきげんそうな顔。
「……保崎 秀名。部屋に上がらせろよ」
うぐっ……。ついに来たよ……。
「まあいいよ……その代り早く帰ってね」
ため息をつきながら、あたしは部屋の中に入った。
そのあとから、二人が申し訳ないという感情を見せずについてくる。
……一応部屋の中に女子といるんだし、ちょっとぐらいはどぎまぎしてくれたっていいんじゃない?
「……わっ!?」
そんなことを思っていると、レイがちょっとの段差に躓く。
すてーんと、確かにそんな音がして、頭から落下。
……こんなこと言っていいのかわからないけど……ダサイ。
「レイ…………」
一気に空気がシラケた……。
あたしはとりあえず、レイに手を差し伸べ、立ち上がる手助け。
「……あ、ありがと……」
その時、隣から手が伸びてきて、レイが少しだけ伸ばした手をチョップ。
……痛そう…………。
「レイお兄様? 大丈夫ですか?」
そういって、ソウシは自分の手を差し伸べる。
愛しのお兄様にあたしを触らせない的な考えか……でも、だったらあたしの手にチョップするでしょ。なぜレイにチョップ……?
「あ、ああ……平気だ」
ソウシの手を借りずに立ち上がるレイ。
そして、あたしのほうを振り向き、
「ありがと――」
「レイお兄様?」
お礼を言う前にソウシに邪魔をされる。
お前ッ……! と絞りだすような声で怒るレイ。
「あのー……? 完璧に空気悪くなりましたよねー……?」
Q、この雰囲気、何とかなりませんかねェ……?
A、もう無理だ。
間に火花を散らすレイとソウシ。
その二人を見ていたら、なんだか気づかぬうちに頭を抱えていました……。