第二十九の問い「まさかの関係ってなんですか?」
「あ」
「あ」
なんだか聞き覚えのあるようなセリフ。
って、それより問題。ソウシにばったりとあってしまった。
しかも、元の姿で。
「……ど、どうしたの……?」
いつもならメイクの下に隠れているであろう男らしい顔つき。それでもやっぱり童顔の女顔に見えるが、何も言われずに女性か男性かと聞かれたら、迷わず男性というであろう。
服装だって紳士服だ。女装時のきらびやかなドレスしか見ていないから、違和感はあるが、普通のイケメンと言えるだろう。
そんな奴に少しどぎまぎしながら聞くと、ソウシは唇を尖らせ、
「僕も一応男だからね。男性と会う予定のないときは、時々男になるんだ」
「ふーん。……いつも女装なんてしなきゃいいのに。かっこいいよ?」
あたしの言葉に、ソウシは顔を赤くする。
「よっ……、よくもまあそんな恥ずかしいことがいえるね……ッ!」
いったいなぜそんな反応をするのかわからないが、とりあえず謝っておこう。
「え……? ご、ごめん?」
「もういいよ、早くどっか行けー!」
え、なんかキレられた……?
まあいいや。ちょちょっと図書館に行く予定だったし。早く帰ってこようとか思っていたし。
「じゃあねー」
わざと不機嫌そうな声をだし、あたしは図書館に向かった。
☆ ☆ ☆
「……いや……なんでだ……?」
秀名が廊下の向こうに消えて行ったのを確認し、ソウシはへなへなっと、座り込んだ。
あのソーダ事件があってから、どうもあいつといると調子が狂う。
自分ではなんだかわからなかったが、さっき、クロードに言われた言葉で、妙な反応をしてしまったことから、気が付いた。
…………認めたくないのだが。
「……俺、意外と正直者なんだなー……」
男性が好きだと気が付いてから消え去った一人称が出てきた。
女装時は一人称を「僕」にしているが、男時ではつい「俺」が出てきてしまう。
だが、今の一人称は、明らかにあいつのせいで出たのであろう。
「いや、そんなことない……あいつのせいじゃない……自分の勝手で……」
つい何日か前はムカついていただけの相手。それが、こんな簡単に気持ちがひっくり返ってしまう。
「レイお兄様は……どう思っているんだ……?」
そんなことをつぶやいたのは、認めたからだと、思った。
Q、まさかの関係ってなんですか?
A、いやぁ……そりゃねェ……。
「お兄様。レイお兄様」
次の日の朝早く。ソウシは普通の姿でレイの部屋をノックした。
朝早いのは、誰かに立ち聞きでもされたら困ると思ったからだ。
「……入っていいぞ……」
さすがのレイでも朝は弱いらしい。だるそうな声が聞こえる。
だが、訪問者が警戒すべき相手だとわかったのか、ぴりぴりとした雰囲気が感じとられた。
「入ります」
ゆっくりと、ソウシは部屋のドアを開けた。