第二十八の問い「“協力者”と書いて、何と読むんですか?」
「いやぁ~……面白いことになってきたようだねェ~」
秀名の部屋の外で立ち聞きをしているクロードの影。
その近くで、不思議そうな顔をしているシェルがクロードの背中につかまる。
「納得いかない……あの容姿でよく攻略できるんですね……」
「おやぁ? 第二のソウシ?」
「違う……!」
叫ぼうとして、部屋に聞こえると思ったシェルが、口をふさぐ。
「こいつがねぇ……意外にじゃないですか」
「そう? そんな意外じゃなかったけどー」
にこやかな笑顔を見せたクロードに、シェルは怪訝そうな顔。
「兄様の考えていること、よくわかりません……」
「まあまあ。僕たちは応援役にでもまわってあげようじゃないか」
「応援って……あの二人のですか……?」
「それもあるけどねェー。あと一人、ね」
何かをたくらんでいる悪戯っ子の瞳をしたクロードが、ある部屋に向かった。
Q、“協力者”と書いて、何と読むんですか?
A、協力者、協力者と読む。
クロードが叩いたのは、ある人のドアだ。
ノックの音で誰が来たのかわかったのか、軽やかな「入ってくださーい」という声がする。
語尾にハートマークをつけてもよさそうなその声に、シェルは顔をしかめる。
隣のクロードは別に何も気にしていないのか、いつもの笑顔で部屋に入る。
「どうしました? お兄様」
例のメイド服に身を包んだ弟が、高価な椅子に座って、麗しい笑顔を向ける。
「いや? 特にこれといったことではないんだけどねー」
そういいながら、クロードは弟――ソウシの正面に座る。
それを見たシェルが、警戒をしながらも兄の隣に座る。
「何か重大なことですか? それとも、本当にこれといったことではないのですか?」
今日の髪の黒髪を垂らしながら、首をかしげるソウシ。
正直、そこら辺の女子よりはかわいいだろう。
「あのね、男時のほうが話しやすいんだけど……」
少し動揺しながらクロードは頼み込む。
すると、しぶしぶだが、「お兄様がそういうのなら……」と言って、本棚の陰に隠れて着替え始める。
待つこと数十秒。メイクを落とし、服も着替えた男時の弟が現れた。
「……それで……話というのは……」
自分の服装を顔をしかめ見おろしながら、ソウシが訊ねる。
「一方的な報告みたいなものなんだけどね。レイが、秀名ちゃんに惚れちゃったみたいでー」
その途端――。
「はあ……?」
空気が凍り付いた。
背後で、ぴきーんだかびきーんという音がするのを、シェルは確かに聞き取った。
「なんですか、それは……」
髪が上がりかねない弟のオーラに危機を感じたシェルは、思わずクロードの腕を取り、退散した。
部屋の外に出ると、弟のホモっぷりにあきれてきた。
「……なんでそんなに怒れるんでしょうかね……あいつは……」
「…………あいつがその時想い浮かべたのは、一体どっちなんだろうね」
自分の質問を無視してつぶやいたクロードに、シェルは首をかしげた。