第二十七の問い「まさか、惚れられたか……?」
「……ったく、追い出すなんてひどいよね。うん、ひどい。さすが冷血人間。っていうか誰かに愚痴りたいー! 誰かー!」
悲観的な声を上げながら、あたしは廊下を歩いています。
あのメイドさんには見つかって、みっちりお説教されたよ! レイのせいだ!
とにかく、風邪が治ったので、イライラしながら廊下を歩いています……!
「誰か……あたしの知り合い……!」
その時。
「あ、秀名さん。こんにちはー!」
語尾にオンプが付きそうな言葉を発してくる、ブロンドのツインテールメイド。
こいつは、ミルさん――! あたしがくっつけてやった、もっとも爆発してほしいリア充だ。
いいカモを見つけた、と表情に出してしまった。
「……そ、それでは失礼します」
お辞儀をし、すぐにその場を立ち去ろうとするミルさん。
その手をがしりとつかみ、あたしは彼女の口を押えながら自分の部屋に引きずり込んだ。
☆ ☆ ☆
「それって、惚れられたんじゃないですかー?」
嫌がっていたミルさんだが、さっきまでの態度が嘘のように楽しんでいる。
にしても……惚れられたって……ッ!!?
「言葉通りですよ。惚れられたんじゃないですか? って」
「でも、あいつはいつも通りに毒を吐いて、部屋から追い出したんだよ? 好きな女性に行う行為とは思えない」
「照れ隠しってやつですよー。オトコゴコロって複雑怪奇ですしー」
あたしの反応を見て面白がったのか、にやりと意地の悪そうな笑みを浮かべて、ミルさんが言う。
「で……でも……」
「もう、いいんじゃないですか? 好きってことでー。で? 秀名さんはどうなんですか?」
顔を近づけてきたミルさん。
きれいなブロンズの髪が、さらりと揺れる。
「あ…………たし……?」
「そうですよー! 秀名さんはレイ様のこと、どう思っているんですかー?」
あたしがレイのこと……ッ!?
うーん、頭の中に流れるのは、今までに言われた悪口集。
『お前にドレスなんか、もったいないな。豚の着ぐるみでもよかったんだぞ? お似合いで』――
『論外だ、論外。早く帰れ』――
『それ以上太ると、屋敷が崩れそうだからな』――
「論外ですよぉぉっ!」
「わわ、どうしました?」
惚れるのも、惚れられるのも論外!
「ないないない、絶対ないです!」
首を振ったあたしに、びっくりしたミルさん。
「え……本当にないんですか……?」
「うん! 断言する! あたしとあいつに恋愛感情など生まれないと――!」
Q、まさか、惚れられたか……?
A、ないないないないないない!!!!