第二十六の問い「風邪はいいものか?」
「っくちゅん!」
「保崎さま? 咳ですか? 今までは熱だけでしたのに……」
「そ、そうみたい……」
ティッシュを取りながら、あたしはうなずく。
ソーダ事件から一日。すぐに着替えてお風呂に入ったものの、やっぱ風邪を引いたらしく……。
赤い顔は、恋とやらのせいではなさそうです……くっちゅん!
「ほらほら、仮にも女の人が鼻水たらすとはどういうことですか」
なんだか暴言が聞こえた気がする。
しかし、このメイドは人の話を聞かないタイプらしい。ベットに入っているあたしを無理やり起こして、鼻にティッシュを当てる。
「はい、ずびー」
「…………」
冷めた目で、メイドを見る。
「どうしました? 保崎さま」
「ずびーはないでしょう、ずびーはッ!」
「仕方のないことです! ほら、抗わないでください、ティッシュがずれてしまいます!」
ああもうーッ!
「治りましたッ!」
あたしはベットから飛び降り、服を着替える。
「保崎さま!?」
「もういいです、大丈夫です、お構いなく!」
大きな音を立ててドアを閉め、あたしは部屋を後にした。
☆ ☆ ☆
「…………ッ、なんだお前、どうし――」
「ゴメン、レイ。かくまわせて」
その時、廊下から「保崎さまー!?」という声が聞こえる。
「何したんだ、お前!?」
「何でもいいじゃん、あ、このクローゼットいい」
有無を言わせずに、あたしはクローゼットの中に入る。
「おい、馬鹿出ろッ!」
レイが腕を引っ張る。
このまま見つかったら、クローゼットの中に何かあると感づかれる!
「ああもうーっ!」
レイの腕を、思いっきり引っ張った。
ばんっ!
「レイ様、保崎さまを知りませんか……あれ……?」
メイドの目に映ったのは、きちんと整理整頓がされた、いつもの見慣れた部屋。
そこには、レイも秀名もいない。
「……おかしいですね……レイ様までいないとは……」
首をひねりながらも、メイドが部屋のドアを閉めた。
「………………アホかーーーーッ!」
数十秒後、クローゼットからどび出したのは、レイと、秀名。
「勝手に人の部屋に押し込んで、何やってんだ、アホ!」
「いやだってぇ……」
「言い訳をするな、言い訳をッ! ったく……そのクローゼットはようやくひとり入れる大きさなんだぞ……押し込んで……おし……」
レイが顔を赤くする。
そんなに密着してたかなぁ?
「まあ、ばれなかったから結果オーライ」
「よくないだろう!」
「うるさい五月蠅い。じゃああたしはここにとどまることにしよう。ちょっとの間だからー」
その途端、レイの顔がもっと赤く。
「……? どうした――」
「うるさい自分の部屋に戻れーーーー!」
押し出されました……。
Q、風邪はいいものか?
A、よくないっしょ……。