第二十五の問い「女装男子とは仲良くなれそうか?」
『恋しちゃったのかもよぉ~?』
何回もリピートする、クロードの言葉。
「あああっ! もういいっての!」
あたしは頭の中から奴を追い出し、水を一気に飲み干す。
もう、顔の熱さも引いている。……と、思う……。
「にしても、あたしは誰に恋をしたんだ……?」
この顔が赤くなる前にあっていた人物――。
クロードを追い出した頭に、新たに登場したのは、――レイ。
「ないないない! 絶ぇぇっ対ない!」
「うるさいんだけど」
頭を抱え振り出したあたしに一言言ったのは――。
紫色の膝丈ドレスに身を包んだ、男
女装男子、ソウシだ。
「……え、何しに来たの、ソウシ」
「何でもいいだろ。っていうか、僕の名前、気安く呼ばないでくれる? 僕の名前は、男の人に呼んでもらうためにあるんだから」
どんだけ必要性のない言葉なんだ……!
「顔に出てるよ。うざいよ」
そう言って、近くの食器棚からコップを、冷蔵庫から飲みかけのソーダのペットボトルを取り出す。
蓋を開けようと、手をかける。
「ふぐっ……!」
どうやら、硬くて開かないようだ。
童顔の、女の人にも見える顔を真っ赤にし、気合を入れて回そうとする。
「……開かないみたいだね」
「うるさい」
「そういえば、炭酸が抜けるからってペットボトルのキャップをきつく締める人、いるよね!」
「あるあるネタ披露してないで、あけろ! アシル兄さん攻略した恨み、チャラにするから!」
……こいつの恨みっていうと、夜中に藁人形持って神社に行く姿が思い浮かんでしまう……。
じ、人生の危機ッ!?
あたしはソウシからペットボトルを取り上げると、死に物狂いで回す。すると。
しゅわぁっ!
ぶしゅうっ!
一つ目は、蓋が開いた音。
二つ目は、ソーダが勢いよく噴出した音。
もちろん、そのソーダは噴水のように、蓋を開けたあたしと近くで覗き込んでいたソウシに降りかかる。
「……………………」
ソーダを髪や服から滴せながら、お互いを見つめ合うこと、数秒。
「…………ぷっ……!」
「…………くっ……!」
ついにこらえきれなくなったあたしたちは、お互いを指さし、吹き出す。
「お前っ……ソーダ降りかかってすごいことになってるよ!? あれか!? 水も滴るいい男ってヤツか!? お前に一番遠い言葉だな、おいッ!」
「お前こそすごい状態だよ! 服、薄い素材じゃなくてよかったな! まあ、透けてても色気のかけらなんてないんだけどな、おいッ!」
「今悪口聞こえたけど」
「それはこっちのセリフだ」
しばらく笑うのをやめ、にらみ合う。
しかし。それも持たない。ソーダ降りかかったアホな光景見て、誰が笑われずにいるんだ。
また吹き出したあたしは、お腹を抱え、倒れこむ。
汚いとかは思わなくて、ただ単純に、冷たくて気持ちよかった。
「あー……笑った笑った……」
隣でとす、と音がしてみてみると、すぐそばにソウシが寝転がっていた。
「……なんか知らないけど、楽しい」
「ぷっ……そうだね」
あたしたちはソーダまみれの中、何もせずに、ただ、天井を見つめながら、そうしていた――。
Q、女装男子とは仲良くなれそうか?
A、分かち合えればねェ……。