第二十の問い「三角関係はお嫌いですか?」 5
ジェル発見。
図書館の前にて、標的確認。
いざ、出陣!
「ばああああぁぁぁぁっっ!」
「うわぁぁぁぁっ!?」
背後から大声を出すと、あっけなくビビるジェル君。
うーん、ヘタレにしか見えん……。
「さあ、楽しい尋問の始まりだよ……?」
Q、三角関係はお嫌いですか?
A、え? 誰がそんなこと言った?
「さあ、ジェル君の好きな人はっ!?」
目の前には、大きな本棚、高く積み上げられた、異国語の本。
そして、お手軽サイズのライトと、かつ丼。
「……な、なんでそんなこと聞くんですか……」
「だって、気になるんだもん」
唇をとがらせていうあたしは、かつ丼のおいしそうな匂いに負ける。
「食べていい?」
「別に……どうぞ……」
許可をいただいたので、早速食べ始める。
でも、目的も忘れない。
「さて、ジェル君の好きな人、暴露しちゃってよ」
「ぼ、ぼくの好きな人……」
それだけで顔を赤くするジェル君。
「も、早く言っちゃってよ。この回でいろいろ進展させるつもりなんだから。第二十の問い、どんだけ続ける気?」
「そ、そんなこと、知りませんよ……」
腰を引きながらも反論するジェル君に、あたしはキレたふりをする。
机をたたき、にらみを利かせ。気分は学校に行かない不良。
「あ゛? 早く言えっつってんでしょ?」
これは効いたらしい。涙目で、ジェル君が答えます、答えますー! とわめく。
……というか、みんな、恋愛してるじゃん。あたし、必要なくね?
「その……ランドさんです……僕が好きなのは……」
その途端、あたしはランドさんに、何も聞くことがなくなった。
両想いだ――……それなら、なぜ好きなのか、聞くことは、意味がない……。
何もできない、手出しができない無力さに、なんだか視界がにじんできた。
☆ ☆ ☆
「……っ……アシルさんー……!」
部屋に入るなり、泣き出したあたしを、慌ててアシルさんが迎えいれる。
ずび、と鼻水を勢いよく吸って、あたしはさっきのことを話した。
ジェル君とランドさんが両想いなんだっていうこと。それから、ランドさんには何にも聞いていないということ。
それを話し終わると、今度は嗚咽が漏れてきた。
ひく、ひく、となんともまぬけな嗚咽を漏らしていると、アシルさんが、笑った。
「……な、何で笑うんですか……、本当は、泣いていいはずなんですよ……」
「いや。僕の代わりにたくさん泣いてくれたからね……ありがとう。協力に感謝するよ」
そういって、アシルさんはあたしを抱き寄せた。
いきなりの意味不明の行動に動揺したけど、ぽんぽんと頭を叩いてくれているので、小さい子をあやす感覚なんだろう。
その気持ちに甘えて、あたしはしばらく、抱かれていた。
☆ ☆ ☆
「……別に、あいつは逆ハー目的でここに来たんだ……おかしい光景じゃないだろう……」
動揺を隠せない様子でドアの外にいるのは、レイ。
いったい何が嫌なのか、何に動揺しているのか、わけがわからない。
ただ――、ただ――、アシルの胸の中で泣いているあいつが、少し――本当に少し、かわいいと思った。
「ああもう、どうしたんだ俺!」
それぞれの思いは、食い違う――……?
なんだか恋愛ものって感じです
恋愛小説ってことを忘れていた星野です←