第二十の問い「三角関係はお嫌いですか?」 3
よ、よくわからない事態になってしまった……。
あたしは混乱した頭を整理するために、図書館にいます。
数冊のラブロマンス小説を傍らに、部屋に置いてあった紙と筆記用具を机の上にちらべ、頭を抱える。
「…………まずは、アシルさんがランドさんのことを好きで――」
何も書いていない紙に、アシルさんの似顔絵を描いて、ハートのついた矢印を隣に描き、そこにランドさんの顔を書く。
「ランドさんは、ジェル君のことが好き」
ランドさんの隣に、先ほどと同じような矢印を描き、すぐ近くにジェル君の似顔絵。
ジェル君の矢印を描こうとするが、わからないのに気が付いて、ボールペンを置く。
「…………面倒くさい事態だ……」
これ以上、アシルさんに期待はさせてはいけないのかもしれない。
「言うか――……?」
頭の後ろで手を組み、椅子の背もたれに深くかけたとき、あたしの体に、誰かの影が重なった。
その影は手を伸ばし、机の上の紙を手に取る。
「ふーん……こんな三角関係があるなんてねェ……まさか、君の妄想とか言わないでよ?」
顔を上げると、そこにはピンクの花が胸元についたミニドレス姿のソウシが立っていた。
って、一番教えちゃいけない人物だよ! 愛するお兄さんが作る三角関係の中心のランドさんを、排除するに決まってるよ!
「そ、ソウシっ! 返してよ!」
手を伸ばすが、一応男子のソウシには手が届かない。
ぴょんぴょん飛んでみるが、ひょいひょいと軽くかわされる。
「…………っ…………! うっぜぇ……」
「なんか言った? にしてもドレスなんて、自分の外見分かってんの?」
「わかってます! 用意されてたんだから仕方ないじゃない!」
「……猫に小判……いや、豚に真珠だね」
ふん、と鼻で笑うソウシに、あたしはアッパーを食らわす。
「………………ッ!?」
不意打ちを食らった彼は、無様に倒れこむ。
勝利を勝ち取ったので、ひょい、と手元から紙を奪う。
「あ。そーだ! ソウシ、利用していい?」
満面の笑みを浮かべ、目線を合わせていうあたしに一言。
「キモい。近寄るな」
――その日、異世界から来た人を図書館に入れると悲惨な事態が起こるという都市伝説ができたらしい。
☆ ☆ ☆
「……昨日、すごく大きい音がしてメイドが図書室に入ったら、ソウシが気を失っていたって聞いたんだけど、なんか心当たりとか、あるの?」
アシルさんの部屋で作戦会議をしていると、眉間にしわを寄せ、彼が聞いてきた。
「いえ?」
昨日と同じ満面の笑みで流すと、アシルさんは納得したように、読み物に戻った。
うーん、また読んでる、『Q、猪瀬でハンバーガーは食べれるのか?』。そんなにおもしろいのか……?
「ところで、そのポケットから出ている紙はなんだい?」
指差したのは、あたしのポケットからちょっぴり飛び出ている紙。
あ、これは……。
「いえ、何でもありません!」
クシャッと丸め、背後に回そうとしたとき、ぽろ、と手から落下してしまった。
それをすかさずキャッチしたアシルさんは、あたしに取られないようにすぐさま伸ばし――、
見てしまった。
Q、三角関係はお嫌いですか?
A、ひ、昼ドラ状態の予感!