第十八の問い「必殺・二人きり発動。上手くいくと思うか?」
「立ち話もなんですので、とにかく座りません?」
近くの、そっけないベンチを指さして提案したアシルさん。
その言葉にうなずき、それぞれ、思いのところに座る。
いや、これが肝心なんだよ。
今、アシルさんは両隣に人が座れる状態。その隣に、すかさずあたしが座る。
アシルさんの隣は一つしか空いていない。あたしの隣も座れる。ランドさんは、果たしてどこに座る――……。
「あ、このベンチイイね」
当たり前のように、素早くアシルさんの隣に腰を下ろす、ジェル君。
「……………………」
あたしは無言でジェル君をにらむ。
「!?」
何があったのかわからない、という風な顔でこっちを見るジェル君。
「何? ジェル君。あ、座って座って」
無言の圧力でジェル君を黙らし、あたしの隣にランドさんを座らせようとする。
「いえ、ランドはただのメイドなので、ここで立っています」
「いいって。座りなよ」
ぐい、と腕を引っ張ると、やれやれ、という風な顔をしてから、ゆっくりと腰を下ろす。
「にしても、保崎さんはなぜにパジャマなのですか?」
「え? ああー……」
自分の服を見おろし、苦笑い。
「急いでいたから……」
「?」
「あ、気にしないでください。保崎さんにもいろいろあるんですよー」
密会していた内容を話されたら困るアシルさんは、二人で会っていたことごと隠し通す手段に出たようだ。
「そうですよ、服がジャージしかなくて~」
「え? お部屋にドレスが置いてあったはずですが」
「ドレ……っ!?」
マジか。部屋に戻ったら確認しよう。
こうでもしないと、ドレスを着る機会を逃してしまう。
人生に後一回、あるかないかの機会だ。これを逃したら、あとで後悔するだろう。
その時、ピーン、と、いい考えが浮かんだ。
「アシルさん」
近くで耳打ちをする。
「二人きりになってもらいます。この機会、逃したら後悔しますよ」
「…………っへ!?」
返事を待たずに、あたしは立ち上がる。
「それじゃあ、着替えてこようと思います!」
そして、腕を伸ばし、ジェル君の手をつかむ。
気合が入って、少しばかり、強くつかんでしまったけど、大丈夫だろ。
「っ……!? 痛いです、離してください、アレルギーが出るんですぅーーっ!!」
鋭い悲鳴を耳元で叫ばれるが、頑張ってスルー。
うう、でも鼓膜敗れそう……。
「じゃっ、そういうことでー!」
「はーなーしーてーくーだーさーいー!」
涙声で叫ぶジェル君を誘拐し、アシルにウインクをして、その場を去った。
うまくやってくれるかな、アシルさん。
Q、必殺・二人きり発動! うまくいくと思うか?
A、必殺だから、うまくいってほしい……。