第十七の問い「レイに質問。上手くいくと思う?」
「……自由奔放な方ですね……」
窓の下をのぞき、ランドさんの姿を見送って、あたしはアシルさんに一言いう。
「そうですよね……」
げっそりしているアシルさん。
「そういえば、なんでジェル君のところに行くんですか? かくまってもらうなら、ここでもいいのに」
「ジェルはランドの下僕的存在だからね」
あ、そういう意味かー。
納得したあたしは、アシルさんを引っ張り、部屋を出て行こうとする。
「な、なんだい!?」
「レイなら、ランドさんの好みとか、知ってるかもしれないじゃないですか」
「でもっ……」
なんだか腰が引けているアシルさんに、あたしは喝。
「いいからくるっ!」
「……はい…………」
今の女性は、まったく恐ろしい、などとぶつぶつ言っていた奴にけりを入れて、あたしはレイの部屋へと向かった。
Q、最終手段、レイに質問、かぁ……うまくいくと思う?
A、考えたくもない。
「レイーっ!」
ばたーんと盛大に扉を開け入ってきたあたしとアシルに、レイは読んでいた本を落とし、びくりとする。
「なんなのよその反応は」
「いや……」
冷静になろうとしているのか、軽く自分の頬を叩きながら、レイは答えた。
「こいつらに今、自分の感情をぶつけようかぶつけまいか悩んでいた」
目の前にあった花瓶から、花を抜き取る。
「え、保崎さん、さすがにそれは」
ばっしゃーん。
花瓶の水をレイにぶっかけたあたしは、満足げにうなづく。
隣で、アシルさんが顔を蒼くしながらあたしを見つめている。
「……………………………………」
しばらくの沈黙の後、
「さっさと出てけ、この雌豚ッ! お前の顔を、二度と、俺の前にさらすなッ!! いいな!?」
水をしたたらせながら、唾の飛んでくるような勢いでレイに怒鳴られた。
あたしは反論しようとしたが、その前に、アシルさんに引きずられ、部屋を出て行った。
☆ ☆ ☆
「ばかですかあなたは! あんなプライドの高いレイに、水をかけるなんて……ふざけるのもほどほどにしてください!」
ああ、パジャマ姿のまま、ついに外に出てきてしまった……。
ここは一面に薔薇が咲き誇る、薔薇園らしい。甘い香りと鮮やかな色が、癒し効果に抜群らしい。
「ふざけてないです。あたしは自分の感情に忠実なだけで……」
「それがいけないのです、それが! ランドさんも見失ってしまったし、これからどうすれば――」
「呼びましたか?」
頭を抱えたアシルの背後から、げんなりしたジェル君を引き連れて登場したのは、ランドさんだ。
「ららら、ランドさんっ!?」
「はい、ランドです」
うろたえるアシルさん。首をかしげるランドさん。
それに。
「ほほほ、保崎さんもいらしたんですね…………」
顔を紙のように白くしたジェル君。
「いらしましたよ」
にこりと、営業スマイル。
ああ、なんだか大変なことになりそう……な、予感……?