第十三の問い「弱みを握ってみようと思うのだが……?」
「はーあ……。なんか疲れた……」
肩を落としながら、あたしは廊下を歩いています……。
どうも、ソウシといると疲れてしまう……。
「こんな時こそ、一人、ラノベを読むんだ!」
ぐ、拳を作って、さっそく近くのメイドさんに、本が読めるところはないのか聞く。
すると、
「それなら、図書館に行ってはいかがですか?」
と、図書館っ!?
図書館なんてものが屋敷の中にあるのか!? どういうことだ!
少しショッキングなあたしを残し、メイドさんは足早に去って行った。
「よし、向かおう」
声に出していったはいいモノの……。
「どこにあるのか聞いてねえーっ!」
うん、バカをしました……。
☆ ☆ ☆
とりあえずほかのメイドさんに場所を聞いて、あたしは図書館の扉を開けた。
すぐに、ほこりと、古い本のにおいが鼻を衝く。
「うぐっ……絶対、ラノベとかなさそうなにおい……」
帰ろうかなぁ、と思っていると、上から声がした。
「どうしたの? 読書?」
不思議に思い上を向くと、上のほうの本を取る用だろうか、梯子に、足を組んで座っている、アシルの姿があった。
「……あたしが読書をするの、そんなに変ですか?」
「そうだね、かなり変だと思うよ」
ぐさぁっ!
アシルの言葉が突き刺さる。
「……で? どの本を読みに来たの?」
悪気のなさそうな顔に、あたしは奴をにらみつける。
この、天然の悪男がっ!
「ラノベです。ありますか?」
「……らのべ……?」
ひらがなの発音で不思議そうに聞き返す、アシル。
「この世界にはないんですか?」
「ないねぇ。らのべって、いったい何の本?」
首をかしげるアシルに、あたしは語りまくった。
ラノベのいいところをっ!
「ラノベとはですね、ライトノベルの略なんです。主に中学生から高校生に向けて作られている本で、まあ今となっちゃ年齢なんて関係ないんですけどね。挿絵は漫画やアニメ風のイラストで、結構ツボなんですよ、これが。もともとは「ジュヴナイル」みたいな名前だったんですが……って、聞いていますか?」
腕を組み、顔を下げ、コックリコックリしているアシルに、あたしは質問。
「…………え? ああ、聞いているよ聞いているよ」
ニコニコ愛想笑いを浮かべるアシル。
「……聞いていないでしょう……ところで、その本はなんですか?」
あたしは、彼が持っている水色の本を指さし、聞いてみた。
「ああ、これ? 前にも言った本だよ。『Q、猪瀬でハンバーガーは食べれるのか?』だよ。読んでみる?」
フルフルと、首を振って拒否。
「残念だよ。じゃあ、好みの本を探してね」
そういって、読書に戻ってしまったアシル。
う、なんかこれはこれでさみしい……。
うん、本以外の話題を出してみよう。
そうだなあ、何がいいかな。
「あ、そういえば、アシルさんって、好きな人とか、いないんですか? いなかったら、タイプとか……」
ぶっ!
勢いよく噴出したアシル。
え、何その反応!
「げほ、げほ、げほっ!」
「いるんですね。誰ですか、誰ですか?」
「いない!」
うそでしょ、とはやし立てたあたしに、彼は手元にあった辞書サイズの本を落としてくる。
え、痛そうだよそれはダメ!
すれすれのところでよける。
「で、どうなんですか?」
今度は真剣に聞いたあたしに、コホン、とせき込むアシルさん。
うん、何かありそうだ!
Q、弱みを握ってみようと思うのだが……?
A、イイよ良いよ! こいつの弱みは、好きな人だっ!