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~タイム アフター タイム~ 吾輩は、1984年のイケネコである。  作者: 舟津湊


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ビタースウィート・サンバ

 えー、みなさまこんばんは、オールナイトニッポン、月曜のパーソナリティの中城みさきです……


 ~♪

(軽快なサンバのリズムのオープニング曲)


 はい、わたしのおしゃべりはこのくらいにして、お葉書を紹介してまいりしょう。

 えー、まず最初のお葉書は、ラジオネーム『これからの季節、着物は暑いぜしんどいぜ』さんからです……なんですかね、この方、着物を着てお仕事とかしてらっしゃるんですかね?


『こんばんは、みさきさん』

 こんばんはー

『初めてお便り差し上げます。私は旅館で働いています』

 あ、そういうことか! 旅館の従業員さん? 仲居さん?……まさか女将さんだったりして。


『恋の悩みの相談です。実は私、あまり詳しく言えませんが、間接的に親から縁談を持ち込まれ、困っています』

 あーそうよね、この方、おいくつかわかりませんけど、やっぱり自分の意思で恋愛とか結婚とかしたいですよね。


『紹介された男性は、ちょっとおとなしめで気が弱そうですけど、優しくていい人だと思うし、仕事もできるので将来有望です……でも今一つ、納得できないんです』

 うーん、その気持ち、わかるなあ。


『私の中にいる、もう一人の私は、“親の言いなりになるのがいやだという、たったそれだけの理由で意地張ってるんじゃないの? 素直になりなよ”って私を諭します。確かにそうかもしれません』

 ふーん、もう一人の私って、客観的に自分のことを見ているのか、すごいよね?


『もうちょっと白状しちゃいますと、その縁談相手と同じタイミングで私の前に現れた男の子がいるんですが、その子のことが気になっていないかと言えば、ウソになります』

 あーそういうことか……これは難しい問題ね。その男の子は、『これからの季節、着物は暑いぜしんどいぜ』さんのことをどう思ってるのかしら?


『もう一人の私は、その子のことを好きになっても不幸になるだけだって言うんですけど、私は言い返しました。“ひょっとしてあなたがその子のことを好きだから、私に彼が奪われるのが嫌だから、そう言ってるんじゃないの”って。 それでケンカになってしまいました』

 ん、どういうこと? 自分の心の中で葛藤しているってことかしら?


『私はちょっと特殊な事情を抱えていますが、その事情が事情なだけに、人にも相談できず悶々としています。結局は自分で決めて、自分で解決しなくちゃいけない問題だと思っています。それでも、みゆきさんに聞いて欲しくて、お便りしました』


 そうかー。なんか色んな問題が絡み合ってるのかな。それがどんなものか、わたしにはわからないから、とやかく言えることではないと思うけど、やっぱり、『親御さんが縁談を勝手に持ち込んだ』という感情はひとまず置いといて、しっかり自分の気持ちに向き合って、もう少しだけ自分と対話すること。そしてその縁談相手さんや男の子君のいい所も悪いところもちゃーんと見ること。そうすることで答えやヒントが見つかるかも知れないね……とにかく、自分が納得のいく道を選べたらいいなって、『これからの季節、着物は暑いぜしんどいぜ』さんのこと、陰ながら応援してます。


 〇


 布団部屋でたくさんの布団に埋もれて寝るのはホント気持ちがいい。だけど、こっちの世界に来てからは真白さんと一緒に寝ることができなくなって、ちょっと淋しいんだ。

 そんな風に思いながらなにか気を紛らわすものはないかと部屋の中をキョロキョロ見回していたら、整理棚の上に載っている古いラジオを見つけた。

 プラグをコンセントにつないで、適当にスイッチやダイアルを回して、流れてきたのがこの深夜放送。

 楽しい音楽やパーソナリティの人のトークを聴きながら、いつの間にか眠りにつく。それが習慣になっていた。


 でも。

 今夜の放送を聴いて、ボクは眠れなくなった。きっと、このハガキを投書した人は、この世界の真白さんだ。

 彼女は洋平さんやボクのことをそんな風に思ってたんだ……それから不思議なことを書いていた。


『私の中にいる、もう一人の私』……それってどういうことだろう?



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