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第9話 花は殻で身を作り生を実現させる

 恵まれた籠の鳥と思ったのもつかの間。魔法とは何か。それすらよく分からないままユリウスという怪しい人物に教わってもいいものなのか。彼女は悩んだが何もできないまま終わるよりはと思い、ひとまず考えを改めた。



「先程まで話した変身魔法だが……まず簡単なものから始めればいいと思うぞ……例えば……」



 するとなにやら呪文らしきものを呟くと、少々安っぽい服装の商人へと変身した。彼が言うには自身と同じぐらいのサイズであればある程成功率が上がるらしい。



「君は花だから最初は別の種類の花に変身するといいかもな」


「別の花ですか」


「そうだ、例えば……この辺で見た花とか……野スズリとかどうだろう?今持ってるのだが」



 彼が呟くとイアに先程話した花をみせる。その花は青く咲き誇っており、束となって紙に包まれていた。



「これになるという事ですよね」


「ああ、だからまずこの花を見て自身がそうなるようイメージして変身してみるといい……ところでだが」



 いい加減君の名前を聞かせてくれと彼が言うと、自身の名を名乗り自己紹介を終えるイア。そして彼の言うとおり変身できるよう花を見つめイメージを行う。



「よしイア……そこから徐々に成功率を高め、最終的に人の身体になれるように経験を積め……それと成功率高めたいなら呪文を唱えるといいぞ」



 彼が言うには自身の中で思い浮かんだ単語を呪文として唱えればいいとのこと。そう伝えると早くやれと言わんばかりの態度を見せ、魔法を唱えるよう急かす。予測でしかないがその呪文とやらは自身で見つけるしかないのかもしれない。



「えっとー……変身!《ラリマ》」



 教わったとおり呪文を唱えてみたがまだまだ経験が浅いようで。鏡に映るイアの姿は黄色い花びらと少々青い花びらが混ざったマーブル模様の花になっていた。



「まあ……呪文があってないようだが案外人の姿の変身からでもいけるかもしれない」


「本当ですか!!……えっとー変身!!《レクリマ》」



 言われたとおり今度は人の姿に変身するよう呪文を唱える。するとやはり呪文の言葉があっていないのか、上半身ほぼ裸で下半分が植物のツタが絡まった木のような姿に変身した。



「……今のは半分冗談だったのだが、本当にやる奴がいるか」


「ええ!いい線いってる気がするのに!」



 そう答えると頭を抱えあまり視線を見ないユリウスから少し提案があると話す。



「呪文もそうだがおそらくコントロールする力が足りてないのかもしれない……だから1つ提案したいのだが……」



 話を聞きながら変身魔法を繰り出すが、一向に魔法が成功しないイア。見た花をイメージして自身の姿として映す。そう悩みながら繰り返すとある単語が思い浮かぶ。



「そうだ、()()()()!《ヴァレ・リアン》」



 するとたちまち煙があがり、徐々に鏡に人の姿が映った。全身裸だが人間の身体としてようやく変身ができるようになったらしい。



「これが私の姿……?」



 金髪の緑の瞳。以前のものとは違う姿だがちゃんとした人間の姿だった。もしかすると今の姿が黄色い花だからそちらの色に引っ張られてしまっているのかもしれない。



「……なのだが……お前人の話聞いているのか?……ってなんだそれは!?」


「なんか……できたみたいです」



 ちゃんと話を聞かず練習していたため、こってりと怒られてしまったイア。ただ思ったよりよく変身できていたため、つい顔がほころんでしまう。



「すみません……まあまだ大きく身体を動かす事はできませんが何とかなり……!?」



 できそうだと報告したのもつかの間。あっさりと変身が解けてしまい思わずガッカリとする彼女。だがいい線は言ったとフォローされなんとなくユリウスに対し気を許してしまった。



「まあ後はそれを一日中持続させる事だな」


「一日中!?」



 予想外な答えを返され思わず愕然としてしまうイア。だがそれでもなんとか目的の学校へ行くために、変身魔法を完全に取得できるよう頑張ろうと思った。


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