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マルス適合者~二度死ぬ彼女は雑草の姿をした魔法使い~  作者: しがない草
第一章 一生から三生へと変わる物語
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第7話 箱から箱へと

「今日は研究所から薬品が出荷される日なの」



 ミルテが話すと目的地につながるらしい通路が見えた。研究所では基本おぞましい実験以外にも市民用の薬を作成して売り払っているとのこと。



「ここから作られる薬品って大丈夫なの!?」


「大丈夫……とは言い難いけど表向きはちゃんとしてるみたいね」



 ここでも怪しい人影が見えなかったようで。すぐさま通路を駆けると、目的の薬品が出荷される場へと到着した。ミルテが言うにはまだ出荷が行われる前の時間らしい。



「しばらくここで待機よ……と言いたいところだけど一旦レールの上の箱に入って隠れましょ?ここなら出荷時刻になっても間に合うわ」


「その出荷時刻っていつになるの?」


「あと数分くらいよ」



 ミルテの指示どおり箱の中にこもり待機していると静寂に包まれる。先程までの騒々しさがまるで嘘みたいだと感心していると、ミルテが隣から貴重な話をしだす。



「もし脱獄したら早めに治療にしないとダメよ……そうじゃないとしんでしまうわ」


「私の事なら何とかするわ……必ずその人に会うために努力する」


「そうじゃない……どうやって会うか知らないでしょ?」



 どう会うか。それはイアにとっては考えのつかない事で。さすがに無計画だったと少しばかり反省した。



「どう会えるか知ってるの!?」


「ええ……でも簡単な事ではないわ……幼少期の頃あたしはたまたま拾った小さくてキラッとした透明な石にふざけて力を与えたの……そしたら……」



 ()()()()()()()に包まれ大事になった時、彼らが現れたと彼女が話した。



「だからおそらくだけど巨大な力に反応して駆けつけてくる……そんな気がするの」

「巨大な力?」



 巨大な力とはどれほどのものだろうかとイアが思うとミルテがゆっくり話しを続けた。



「巨大な力……つまり……」



 そう彼女が話し始めると謎のアラームが鳴り始める。



「緊急事態発生、緊急事態発生、空いてる研究員は至急倉庫に集まりなさい」



 まさかここにいる事がバレたのかとイア達が考えていると、ミルテがいた方のレールが急に動きを止める。



「待って!!ミルテの方のレールが!!」


「大丈夫……先に行って!もうすぐ出荷時刻だけどすぐいけるよう箱を動かすわ」


「でも!!」



 徐々に離れていく彼女とやり取りをしていた次の瞬間、通路側から研究員が一人また一人と集まってきた。



「大丈夫……あたしならいくらでも()()()()()()()()()()……だから大人しく行きなさい!」


「ミルテ……」



 口を塞いで彼女の名を呼ぶと、ミルテが入っていた箱が研究員達に運ばれていくのが分かった。もう手遅れだというのかとイアが思い悩むと、商人らしき人が扉を開けてこう呟いた。



「あのーなにやら騒がしいですがこちらの箱はもう積んじゃって大丈夫ですか?」


「ええ、お気になさらず……少々レールの方にトラブルが発生しただけなので」



 そう研究員が話すとイアと薬品が積まれた箱が徐々に荷馬車へと運ばれていく。イアが積まれた場所はどうやら外側の方らしい。



「では一旦これで出荷完了という事で」



 商人らしき人物がこう呟くと荷馬車が動き出す。少しずつだが徐々にミルテがいた箱が少しずつ遠のいていく。



(このままじゃミルテが置き去りになってしまう!)



 そう思った時、彼女の身体に異変が起きた。なんと先程までの枝が尋常じゃない程ににょきにょきと伸び盛るではないか。



(どうして!?本当に今じゃないのに!!)



 彼女の枝が伸び盛るとまるで木のように大きな枝を作り出す。先程までの落ち着きがまるで嘘かのように。



(せ……せめて、せめてミルテが脱獄できるように)



 イアがそう考えると先程までのとある話を思い出す。巨大な力。それさえ出せば上手い事援助がもらえるかもしれない。



「……そうよ今度は私が大丈夫な状況にしなきゃ!だとしたら一体誰が助けるというの?」



 そう考えると荷馬車が大きく揺れ始め、イアがいた箱が大きく傾き出す。



(今よ!今ここで止まるの!)



 イアが箱の中を大きく蹴ると荷馬車から彼女がいた箱とイア自身が飛び出す。



「お願い!()()()!!《アビエス・フェルマ》」



 すると先程まで伸びた枝が大木のように大きく育ち、結晶のように光った花びらを咲かせ散らつかせる。それはまるで少し前に見た学校の花の木のようで、美しいとイアは微笑んだ。



(……大丈夫……これでミルテは……助かる気がする……)



 イアが微睡みの中ふと考えると、予想どおり説明された彼ららしき黒い服の人物が多数見えた。これならミルテ率いる捕らえられたであろう見てない子達もひょっとしたら助かるかもしれない。



「なんだ!この木は!?」


「美しい木……まるで桜の木のようね」


「そんな事より早く行くぞ!」



 黒服の彼らが颯爽と飛び出すとすぐさま研究所へと向かう。軽々と動く彼らの事はイアにはよく分からないままだったが、もう大丈夫だと安心して眠りについた。



(もう大丈夫だからね……ミルテ)



 そう彼女が考えると先程までの騒がしい雰囲気が急に静まる。イアがいた場所には美しく光る白い花を咲かせた大木と空の箱だけが残されていた。

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― 新着の感想 ―
Xより参りました。 冒頭部を拝読して、最初に感じたのは「これは単なる異世界ファンタジーではなく、人の善性を問う物語だ」ということでした。 イアが辿る運命は、あまりにも理不尽です。 信じた相手に毒を…
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