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マルス適合者~二度死ぬ彼女は雑草の姿をした魔法使い~  作者: しがない草
第一章 一生から三生へと変わる物語
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第6話 自在と変形の間

 時を置いた白い通路の中でミルテとイアは走り出す。



()()()()!《パ・ドゥ・ヴレ》大丈夫、この先にも誰もいないわ!」



 右から出た所を左に向かいまっすぐ進むとミルテは不思議そうな顔をする。



「でも妙だわ……仮にあたしとあなたが寝ている隙に実験体にされたとしたらあなたはさっきの少年達のようになっているはず」



 確かに奇妙だ。イアが思い巡らしながら駆け出すと枝が返事をするようにうごめく。それは肩から這いずり裾をめくって動くような感覚。イアは不気味な思いをしながらも彼女の話を聞く事にした。



「さっきから気になるんだけどそのパ・ドゥ・ヴレとかファタリ……とかってなんなの?」


「物語の本とかにもよくある呪文とかじゃないけどなんか()()()()()()()()()()()言いたくなるのよねー」



 ミルテが話すと再度右に向かい人が来るか確認する。どうやらちょっとしたかけ声のようなものらしい。



「……あなたひょっとして私と似たようなことしたいんじゃないでしょうね?」


「そのまさかだけど……できるかな?」



 イアがこう呟くと再び彼女は怪訝な顔で話し出す。



「大丈夫とは言い難いけど……本当に知らないからね?あたしだってこの力の事よく知らないんだから!」



 すごい力というのでてっきり色々知っているかと思い聞いたが、真実を知り愕然としたイア。もしかしたらその力を私が使うのには時間がかかるのかもしれない。そう思った時ミルテは焦り顔でこう放った。



「まずいわ!前後両側から人が来る!……きっと研究員ね……早く隠れなければ!」


「えっでもさっきみたいに見えなくすればいいんじゃ……」


「アレには使用制限があるのよ!今は使えないわ!」



 こんな時どうすれば……そう彼女が黙り込んだその時、イアを蝕む枝が不可解な動きで右腕全体を網羅した。



「ちょっと待って!?今じゃない!」



 イアが慌てると枝は天井へ向かい枝を生やし出す。それはまるでイア自身を天井にくっつけるかのように動き出した。思わず焦ったが咄嗟の判断でミルテの方にもう片方の左手の枝で彼女を抱え込む。



「……ちょっと!?大丈夫なの?」


「大丈夫……これで私達は研究員の人と板挟みにはならない」


「いえ、それだけじゃないわ!あなたの髪と目の色……全然違う色になってるわよ!?」



 彼女が言うには普段どおりの黒髪の紫の瞳ではなく、右側全体が金髪で緑の瞳になっているとのこと。ミルテから借りた鏡で確認すると実際に半分だけ変化していた。普段なら鈍感なイアだが、さすがに顔がひきつるような感覚がした。



「……なにこれ?」


「……力の副作用かしら?だから言ったのに!……あなたもう戻れないかもしれないわよ!?」


「大丈夫……いるんでしょ?力の詳細を知ってる人が……」



 もしそんな人が存在するなら。仮説でしかないが脱獄後彼女を信じてその人を探し治す方法を探りたいと話した。



「もう本当に知らない!……でも信じてくれたのは嬉しいわ、ありがとう……彼らならきっと」



 そう話し込んでいると知らない間に研究員が数人集まっていた。話を聞く限りおそらくイア達2人を探しているのだろう。



「ナンバーMLT5とナンバーIAJ0はどうした」


「見つかりません」


「一応気配だけは消せるけど声は出さないで……」



 ミルテの言う使用制限でこうなっているのだろうか?今のところ大丈夫だが思わず口を手で塞ぐ。



「まあフォンデュ様が言うのだから多分大丈夫だろう」



 彼らがそう言うとすぐにこの場から立ち去った。意外な事にここの施設の警備は緩いようだ。



「とりあえずまいたようね……あの、いい加減下ろしてもらえないかしら?」


「それが……まだ上手くコントロールできないみたいで……」



 すると枝の方から語りかけるようにそっとイア達を床へ導いた。どうしてか分からないが案外意思疎通ができる枝なのかもしれない。



「よっと!それじゃあ行くわよイア」


(そういえば名前伝えたっけ?)



 そう疑問に思うとミルテは即座に通路を駆け出す。隠れながらだが徐々に出口まで近づいているらしい。



「そういえば名前言った?って思ったでしょ?」


「うん、そうだけど」


「あたしの力情報収集もできるの!改めて自己紹介するわ……あたしはミルテ、ミルテ・フルール・ブラン」


「私はイア、イア・ジェンヌ」



 こんなところで自己紹介するのもなんだが、あやふやに終わらせたくなかったイアからしたらスッキリするような事柄で。不安しかない脱獄もなんとなく気が晴れるような感じがした。

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