第5話 変わりゆく変化の中で
「……とりあえず今のうちに出ましょ」
「出るってあなた危険よ!?」
ミルテが部屋の出口へ向かおうと手を引くが、見張り番のような人物が目の前にいるせいでイアはうまく身動きが取れないでいた。なぜ彼女はそこまで自信満々なのだろうと。
「大丈夫よ……あたしとあなたの声、気配、ほぼ全てが消されている今ならここを出ることができるわ」
「あなたはなぜそこまで脱獄に自信があるの?というかなぜそんなことが可能なのよ?」
彼女にここまで強引な手口が行える理由。それはミルテの中にある不思議な力のおかげだと彼女から教わった。幼少期の頃から不思議な力が使えた彼女は、些細な事件があった際に出会ったとある男性にこう告げられたらしい。
◆ ◇ ◇
「それは……力だよ……でも決して周りには教えない事」
「どうして?」
「それは君に宿った力が二度と使えなくなるからさ」
「どうして使えなくなるの?」
「君の力を利用する人物が現れないよう……今ここで君の力を消さないといけない」
そう男性が話すと幼いミルテの頭に触れようと手をかざした。今までの話を聞いて危機感を覚えたミルテは彼の手から逃れようとする。
「いやよ!!そんなのいや!!」
「ならば2つ約束事を守らなければならない……1つ、家族や友人……全ての人に決して話さない事、そして2つ、迂闊に利用しない事……でももし利用するのであれば……」
◇ ◆ ◇
自身や周りの身に危機が迫った時。そう告げられたそうだが、初対面の私に対し気軽に話して大丈夫なのかとイアは思った。
「すごい力?」
「そう……だから今がその時なの!」
「……だからってそんな簡単にいくわけ……」
「大丈夫!あたしを信じて!」
ミルテがこう話すと強引にイアの手を引き出口へと向かった。白い部屋の後ろを見渡すと先程の研究員と枯れ木とかした少年達のみ。まるでここは何もかも枯れ果てた水源のない井戸のようだった。
◇ ◇ ◆
先程の白い空間から抜け出すと今度は二手に分かれた白い通路が広がっていた。途中で暗い部屋のようなものもあるがどちらに進めばよいのか分からない。
「それでこれからどうするの?」
「あたし透視する能力もあるの」
「透視能力!?透視って壁の向こう側が見えたりするあの?」
よく孤児院で借りていた本で読んだ事のある力を目の前で伝えられ驚愕するイア。
(私も彼女のように動けたら……)
そう考えているとなぜか身体から妙な感覚を覚える。まるでにょきにょきと伸び盛る木の枝のようだ。
「な、なに……これ……」
「ど、どうして!?まだ実験体にされてないというのになぜ!?……まさか!!」
強ばった表情でミルテが伺うとその枝は腕にまとわりつくように動く。記憶にはないがもう手遅れだったのかもしれない。
「これからだというのにどうしてこんな事に……」
「待って私に考えがある!」
顔に手を覆うミルテを励ますように伝えるとイアは心の中で枝に向かい命令をする。もしすごい力というものが本当にあるのなら……そう考えると枝がほんのわずかだけ思いどおりに動いた気がした。
(これならひょっとするとミルテのようにすごい力が使えるようになるかもしれない)
彼女のように丁寧な力加減ではないかもしれないけど。そうイアが思うとやはりうまい事にはいかず、枝は予想外の動きをする。
「ごめん!もうちょっと時間がほしい」
「あなたまさかその枝を使って……危険よ!研究所の力を無謀に使うなんてっ……!?」
「大丈夫!なんでしょ?私もその言葉が使える状況だと思うの」
思わず大きな声が出そうだったミルテに対して口を抑えると、彼女は少々怒った顔でこう話す。
「もう、知らないわよ!何が起きても……もし事が起きたら1人で逃げ出すからね」
「大丈夫、だから私があなたを信じるようにあなたも私を信じて」
そっと口から手を離すとミルテは怪訝な顔で見つめてきた。その表情を見たところまだ納得がいってないのだろうけど、脱獄の手段の1つとして自身も役割を分担したい。
「とりあえず右に行きましょ!今なら誰も来ないわ」
そう彼女が呟くと颯爽と動き始めるイア。いずれはこの枝を利用したすごい脱獄方法が手に入るだろうか?イアがそう思惑すると枝が全身を巡りうごめくような奇妙な動きをした。




