第4話 いいえ私達は不適合者
失った空間というのはこういう所を指すのだろうか?
目を覚ますと私は白い部屋の中にいた。
「うぅ…………おかしいな……さっきまで学校にいたのに…………ここは……どこなの?」
何の変哲もない部屋。あるのは白い扉と広い空間のみ。ただ一つを除いては。
(向こうにいるのは……人だよね?)
何があるか少しでも探るために歩き回ると2人の少年が遠くにいるのが見えた。うっすらとしか見えないけど、2人共なにやらうずくまっているようだ。
「あのーもしもし?私はイア、あなた達……ここがどこだか分かる?私さっきこの部屋にきたって気づいたばかりなんだけど……」
私が呼びかけるととても強ばった表情でこちらを伺った。この部屋に妙なものなどないはずなのに……なぜ彼らがそんな顔をするのかが分からない。
「た…………た、す……け…………た、たすけ、て!」
「ど、どうしたの!?」
唐突な植物。一瞬何が起きたか分からなかったが、彼らの身体から早々と草木が伸び盛ったのが見えた。あまりにも衝撃的なシーンで私も思わず表情が固まる。
「な、なに……これ……!?何が起こっているの!?」
非現実的なものを目の前で見たせいで頭がおかしくなりそうだった。人の身体から植物が生えるなど私が今まで見てきた本の中でも読んだことがない。このような症例を見てしまったのだ。そんなの狂うに決まっている。
「大丈夫よ……目を開けて、色々見てしまったかもしれないけど」
肩を震わせながら手で覆った目を開くと、青い瞳をした少女の姿が見えた。恐る恐る伺うと茶髪のポニーテールが踊り出すかのように動いている。荒い息を整える所を見ると、どうやらこちらの様子が心配で素早く駆けつけたようだった。
「大丈夫……ってなにがっ!?」
「ダメよ、大きな声を出しては」
口に人差し指を当てながら静かにするよう声をかけてきた彼女。名前はミルテというらしいが、話してる途中でいきなり口を塞いできたものだから思わず怒りそうになってしまう。
「大きな声を出さなければとりあえず大丈夫よ」
「……だ、だから何も大丈夫じゃなっ!?」
「大丈夫、あたしに考えがあるわ……脱獄よ」
「だ、脱獄!?」
幾度か口を塞がれ大事な話を逃すところだった。確かにここにいては危険だ。先程の様子といい、すぐにでもここから出たいという気持ちが先走る。
「確かに危険な場所のようだけど脱獄ってどうやって?」
「それについては秘密……だけど無謀な考えではないわ、なぜなら……」
「ナンバーMLT5、MLT5!……いないのか!!」
不可思議な謎の番号を連呼する人は、研究所の衣服を着てるようだった。その番号はまるで人を探しているかのようでとても気味が悪い。
「大丈夫、ナンバーMLT5はあたしの事……何も問題はないわ」
「問題だらけよ!!あなた呼ばれてるのに大丈夫なの?」
「問題ない……彼らは既にあたし達のことが見えていない」
見えていないとはどういう意味なのだろう。確かに近くまで来ているというのになぜか私達のことが見えないかのように通り過ぎていく。
「ね、問題ないでしょ?……それに捕まるとだいたい大変な事になるわ」
「大変なことって……まさか」
「ええ、さっきのように植物にされたり……まあ想像もできないろくでもないことよ」
まさかあの少年達も?そんなはずはないと私は堪らず息を飲む。
「とにかく早くここから出ましょ!あたしも何度か連れ去られそうになったけど……今日がチャンスの日なのよ!!」
「チャンスの日?」
事情を知るミルテに訪ねようとしたが、先程からうろつく研究員らしき人が気になって仕方がない。
「ナンバーMLT5今回も見当たりません」
「ご苦労様……もう下がっていいわ……」
「ですがこの間も」
「きっとまた子供のお遊戯会でも……るのでしょう……それに……まあ……」
聞き覚えのある女性の声。もしかしたらフォンデュが話しかけていると思われたが彼女の姿が見えない。モヤがかったかのような声が聞こえるが一体どこにいるのだろうか?
「あなたアレを知らないのよね?」
「アレってなんの事?」
「まあいいわ……あたしの後ろに続いて歩いて……」
「待ってどこへ行こうとするの?」
質問したい事が山ほどあるというのにミルテが私の手を引いて歩き出す。
「運命《ファタリティ》脱獄よ」




