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第38話 因縁と悲しみと

 因縁との決別と言うべきか。信頼しきった顔で聞く彼女にこう述べる。ユリウス・ペルーダをころしたのは僕自身だと。



 ◆ ◇ ◇



 その日ティグリスに会いに行ったユラはいつもどおり魔力の提供をし始める。



「それじゃあいつものやつ頼むよ」



 冷たい結晶。小さく硬いそれが手のひらの中で大きな結晶へと変化するとユラはそれをティグリスに渡す。



「ありがとう……それじゃあ今回は引き続き()()()()といこうか……君が研究所に行ったその後が知りたい」



 ユラとしては正直これといってマルスに関する情報を持っていない。だが働くための条件として提示されたマルスに関する情報提供のため一つ一つ説明していく。まるでこれといった情報を持ち合わせていないとでも言うように。



「君は本当に植物なのか?」


「はい、そうなんです」



 そう言われるとすかさず変身魔法を解くユラ。解除を施すとたちまち人の姿から花の姿に変化する。



「へえ……君ってば四六時中変身魔法使ってるのか……」


「まあ……師匠にそうした方がいいって言われまして」


「師匠?」



 ティグリスが疑問に思うと引き続き過去に起きた出来事を話すユラ。研究所の事。そして師匠であるユリウスの事。



「……ユリウス?」



 何故だか分からないが彼に対しユリウスの名を出した途端、ティグリスは急に態度が変わり始める。



「……君今ユリウスって言ったのか」


「……はい、ユリウス・ペルーダと名乗ってました」



 ユラがそういうと彼は旧友だよと話すティグリス。そう言った彼の顔はどこか物悲しげで。そんな様子にユラが立ち尽くしているとティグリスはある物を取り出す。



「これは彼の部屋にあったものだ」



 ほんのり硝煙が香る実包。金色に光るそれは確かにユリウスが倒れた時に落ちた物そのもので。どうしてそれを持っているのかと動揺が止まらなくなった。



「……何故それをあなたが?」


「ユリウス・ペルーダは僕がころした」



 僕が指示したんだと言うとあっという間にユラの丸くなった目が崩れ落ちる。ほらね。だから言いたくなかったんだ。そう心の奥底でティグリスが思うと、彼女をフォローするかのように事実を突きつける。



「彼はこの国で最もやってはいけない事を犯した大罪人だ……だからころした」



 彼がそう付け足すとユラが責めるようにこう言い放った。



「それでも!!……彼はとても温かくて優しかったんです!!」



 知ってるよそんな事。でもやらなければいけなかったんだ。ティグリスは内心そう思ってはいたが表には出さずにいた。仕方がなかった。国の指令でそうするしかなかったのだから。



「ごめん……言い方が悪かった……でも国の指令のためにこちらも動かなければならなかったんだ」



 許してくれとは言わない。そう言うとティグリスはシルクハットを下にずらし静かにうつむく。それを見たユラはやるせない気持ちでティグリスにこう語りかけた。



「いえ、私の方こそごめんなさい……取り乱したりして」



 そう話しかけると今日のところはもういいと踵を返すティグリス。そう告げる彼の後ろ姿はどこか寂しそうで。同じ感情のはずなのにどうしてこうも違うのだろうと力なく考えるとユラはその場を後にした。

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