第37話 日常にぼやけたテスト期間
待ち望まないテスト前日。ユラ達は苦手科目の勉強をすべく図書室へ集まっていた。
「あーダメ!全然集中できない!」
ミオリオが弱音を吐いているとエルが叱咤するようにこう話しかける。
「お前が最初に勉強会しよって言ってきたんだろ!もうちょっと粘れよ」
そのやり取りがどことなくギュンターと私そっくりだなと眺めていると、エルがユラに対し不思議そうな顔でこう聞く。
「……ユラ?なんか問題でもあったか?」
「……ううん、別に」
ユラ達がそう話していると先程まで大人しくしていたミオリオがニマリとする。そしてユラに聞こえないようこっそりとエルに話しかけた。
「エル〜こういう時にいい所見せるのがいいんじゃない?」
察しのいいエルはその一言で不機嫌になる。でも肝心な当事者は呑気に鼻歌を歌っていて。勉強に集中しているか微妙な様子だった。
「……ユラも分かんねえところあったら言えよ」
エルがこう声をかけるとぼやけた返事をする始末。エルから見るとユラは確かやや成績が悪い方で。大丈夫だろうかと心配するも当の本人はのほほんとしたままだった。
◆ ◇ ◇
いざ始まったテスト期間。普通科、魔法科それぞれ分けて行われたそれはユラにとってはきつい期間で。2日間に分けられたテストに挑むべく何とかチャレンジした。だが結果は惨敗で。見事全教科赤点をとったユラは補習に呼ばれ現在へと至る。
「では補習に入る」
クロノス先生に呼ばれ補習を受ける事になったユラは成績不振の問題児としていつもと違う別の教室に入った。入学してから初めてではあるものの……テスト結果のあまりの酷さにユラは思わず下を向く。
「ん…………?あいつはまだ来てないのか……」
少々呆れた顔でクロノス先生が言うと右側の扉から何者かが入ってくる。顔を上げよくよく顔を見るとそこにいたのはなんとエルだった。
「……珍しいな、お前がくるなんて」
授業中寝てる割には優等生のお前がなとクロノス先生が言うと、ユラの隣の席につき退屈そうに頬をつく。
「……記入するとこ1列間違えてずらしちまったんだよ」
そう話すと困ったかのように頭を搔くエル。そんな姿をよそにクロノス先生は次の段階に入るべく真剣な眼差しで話し始めた。
「今回は戦術の補習だ、各自机に顔を伏せ寝る体勢に入れ!」
クロノス先生に言われたとおり顔を伏せるユラ達。すると2人に魔法がかかりある世界へと飛ばされる。絶壁の青空だ。辺りには何もない。ただあるのは崖と1本まっすぐに繋がったロープのみだった。
「え、こわっ…………ここどこ?」
あまりの光景にユラが怖気付いていると、クロノス先生から詳しい補習内容を知らされる。
「今からこの断崖絶壁の場所で綱渡りをしてもらう」
「ええっ!?」
「安心しろ、落ちる事はない……ここは要は夢の中みたいなものだ」
だから思う存分渡ってこいと言われると、最初に渡れと先生に言い渡されるユラ。高いところは苦手ではないもののここまで高いとユラでもつい足がすくみそうになる。そう思いながら渡ると真ん中にきたところ辺りでバランスを崩しそうになった。
「ユラ!魔力を使え!」
「ま、魔力ですか!?」
「魔力で足を固定させろ!」
音声通話でそう助言されると今度は足を固定させながら動くユラ。ほんのわずかだが安定した気がする。そうユラが思うとロープが風でほんのり揺らぐ。だが先程の先生の助言のおかげで何とか難を逃れた。
もたつきながらも最後の方まで綱を渡るユラ。あと少しといったところをスっと歩もうとすると今度はとてつもなく強い風にあおられる。するとみるみるとバランスを崩し、あとちょっとのところで落下してしまう。
「うわあっ!?」
思いもよらない衝動に思わず起き上がるとそこは教室の部屋で。先生が夢のような空間と言っていたのは本当だと確信する。
「ユラは途中落ちたが……合格ラインを超えたから良しとする」
クロノス先生にそう告げられるとユラは小さくガッツポーズをとる。その後再び先生の指示で机に伏せると、今度は面白い物が見れるぞと先生が言いエルを指さした。
「次はエルの番だ」
そう言うとクロノス先生は教卓の前から姿を消す。そしてエルの元へ行くと今度は綱渡りをしているエルの妨害をし始めた。
「おい、てめえ!」
「実の教師に口が悪いぞエル」
お前は優等生だからこれぐらいの補習どうって事ないだろと語ると引き続きエルの邪魔をするクロノス先生。エルに至っては軽々と払い除けるが心配になりしばらく眺める事にする。
「エル!頑張れ!」
クロノス先生による妨害行為に思わず応援するとエルが一瞬だけ振り向きよたつきはじめる。その後バランスを崩し落下してしまうとエルは納得ができてない表情で意識を取り戻した。
「……お前わざと赤点とったんじゃないだろうな?」
何故かクロノス先生が補習を終えたエルに対しそう言うと、不貞腐れた顔で無言になる彼。ユラに至っては何事かよく分かってない状態で。お互いに腑に落ちない状況でひとまず戦術の補習を終えた。




