表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/38

第36話 7月7日

 何も知らない7月6日。ユラはある事をミオリオから告げられる。



「そういえば明日エルの誕生日なんだけど知ってる?」



 そういえばエルが何か言ってたなとユラが話すと彼女がにんまりとした笑顔でこう語る。



「じゃあさー本人が喜ぶような誕生日プレゼント買いに行こうよ」


「えっ……うん!そうだね、そうしようか」



 ミオリオが前のめりで話すと思わず驚くユラ。誕生日プレゼント。孤児院で育ってきたユラにとっては初めてのイベントで。内心胸が踊る気持ちでミオリオと共にプレゼントを買いに行く事にした。



 ◆ ◇ ◇



 外出届を出しミオリオと一緒に市場へ行くと、ミオリオがある物を取る。



「これとかどう?」



 そうして見せられたのは奇妙な人形の飾り物だった。ミオリオの選択に対し即答できないでいると、ミオリオがあっさりと買いに行こうとする。



「ま、待って!……もう少し一緒に考えよ?」



 ユラがそういうと少々不満げにして商品を元の場所へ戻す。エルは食べ物系がいいかもねと指さすとそこには可愛らしく包装されたお菓子があった。



「確かにこういうやつの方が喜ぶかもーあいつ食べ物に目が眩むからなー」



 そう話すとユラ達はお菓子を買うため店員に話しかける。いい買い物ができたと2人で一緒に話をしながらその日は帰路へとついた。



 ◇ ◆ ◇



 準備を迎えた誕生日当日。ユラ達は放課後、エルを祝うために男子寮の元へ向かった。



「おーいエル、いるなら返事してー」



 ミオリオがエルがいるであろう部屋の扉を1、2回叩いてノックする。すると扉の向こう側からエルが現れた。エルがなんだか気だるそうにしているとミオリオの方から祝福の言葉を語り出す。



「誕生日おめでとう!ほい、これプレゼント!」



 ミオリオがそう話すと持っていたお菓子をエルに渡そうとした。しかしエルは何故だか気乗りしない感じで。エルは扉を開けるとそのままその場から離れようとする。



「別にそんな事しなくてもいいだろ?誕生日とかバカバカしい……じゃあな」


「あーちょっとエル!もーせっかく用意してあげたのに」



 そう言って少々怒った顔をした後、なにやら考え事をするミオリオ。もらってくれそうにないとユラがしょんぼりしているとミオリオからある提案をされる。



「そうだ!ユラがこれ渡しにいけばいいじゃない!その方が絶対受け取ってもらえるって」


「ええ……でも今ダメだったじゃん」


「大丈夫!2人きりなら絶対受け取ってもらえるって!」



 ミオリオが私の勘だけどねと付け足すとニヤリと笑いその場から立ち去る。本当かなと考えながら歩き続けると中庭の方にいるエルの元へ駆けつけた。



「エル!」


「……ユラ」


「ダメじゃないあんな事言っちゃ」



 そう強く言い放つと少々不貞腐れたような顔をするエル。そんなどこか寂しげにしている彼にユラはある事を話す。



「昨日ね、ミオリオと一緒に誕生日プレゼントを買いに行ったの」


「……そうか」


「うん、年に1度の大切な日だからって一緒に選んだんだよ」



 年に1度の誕生日。でも私にとってはあまりいい思い出がない。何故なら私は本当の誕生日を知らないから。だからエルには誕生日がある喜びを知ってほしい。そう語ると持っていたプレゼントのお菓子をエルに渡そうとした。今度こそ受け取ってもらうために。



「だからエルにはこれを受け取ってほしい」


「……分かった」



 ユラがそう言ってミオリオの分と共に渡すと今度はすんなりと受け取るエル。どこか照れ臭そうにするとエルはお礼を言いどこかに行こうとする。



「…………ありがとう……じゃあな」



 ユラがその姿を見つめるとクスリと微笑んだ。誕生日プレゼント喜んでくれただろうか。そう思いながら踵を返すとほんのり心が踊るような音がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ