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第34話 行方知らずの指輪

 暗黙の会議だった。ティグリスがいつもどおり国家評議員達と会議を行っていると、現在注目されているユラについての言及を受ける。



「ティグリス隊長、現在のユラ・メイドリーについて何か一言ないか?」


「いえ、今のところ特に問題は……それより今後の予定ですが……」



 とても長い会議になりそうだ。上手い事話を逸らす予定だったが、そうもいかないらしい。



「その前にそのユラ・メイドリーについて詳しく言及する必要があるのではないか?」


「彼女はマルス適合者の中でも非常に危険だ!」


「あの魔力量だと今後この国の脅威になりかねん」


「早急に始末するべきでは?」



 やはりと言ったところか。幾度か説明はしているが、評議員達の中には未だに彼女の存在を否定する者が多くいるようだ。だが自身には彼女から情報を引き出すという義務がある。なのでそんな彼らを何とかして説得しなければならない。そう思いティグリスは改めて説明を施す。



「ですが何らかの重要な情報を握っていると私は見ています……ですから様子見としてこのリングをつけさせている状況です」



 ティグリスがそう言うと指先で持った指輪を見せつける。これは先日ユラに渡した物と同様の物だ。



「こちらの指輪をはめると使用者の現在地が見えるようになっています……つまりどこにいても私達から逃げる事はできないという訳です」



 そうティグリスが説明すると一部の評議員が一度は納得し安堵しかける。他の評議員達も同じ態度だと良いのだが……などと考えていると1人の評議員がこう述べる。



「もういっその事魔石にしてしまうのはどうでしょう?それなら国の脅威かもしれないという疑心がなくなる」


「待ってください、それだと継続的な魔石の供給がなくなってしまいます」



 魔石の供給。働く条件として入れてよかったとティグリスは思う。もしこれがなければ近いうちに処刑されていたかもしれなかったからだ。そう思いティグリスが大きく主張するとあれだけうるさかった評議員達が黙り込んだ。



「ま、まあそうね…………継続的な魔力の供給元がなくなるのは私達としても痛いところだし……」


「これからも監視するという事であれば別に構わんが……」



 評議員達が仕方ないといった表情でそう話すとティグリスは心の奥底で安堵する。



「では彼女に関しては今後も徹底して監視の元で匿うという事でよろしいですね?」


「ああ」


「今のところはそれで別に構わん」



 今後の彼女の行き先が決定するとティグリスは別の話題を取り出す。彼女のクラスメイトの事だ。先日あった課外授業の件で指輪の追跡機能がなくなった事を隠しつつ、彼からこう話を持ち出す。



「では今後についてですが……ステモナ学園の生徒について()()()()()()()調()()()()と思うのですが……いかがでしょうか?」


「ステモナの生徒ですって?」


「何故今更……調べる必要なんてあるのか?」



 評議会が再びザワつく中ティグリスは一度落ち着かせた後、何故調べる必要があるのか詳しく説明する。



「まあ皆さん聞いてください……ステモナ学園には監視対象となるユラもいます、ですから彼女の今後の動きのためにも一度交友関係等も徹底的に調べる必要があるかと思いまして」


「それは確かにそうね」


「調べるに超したことはないわ」



 評議員達が全員一致で納得するとティグリスはニヤリとシルクハットを被り直しこう述べた。



「私からは以上です……他に何か質問でも?」


「いいえ特にはないわ」


「ティグリス、もう下がってよいぞ」



 そう話すと指示どおりその場を後にする彼。ティグリスが踵を返すとあっという間に肩身の狭い時間が終わった。



 ◆ ◇ ◇



 彼がテント下に戻るとティグリスはあるものを取り出す。



「指輪……か……」



 ずっと気になっていた事がある。彼女が課外授業に行った日。その日から確かに追跡機能がなくなった。指輪が壊れたと言われたあの日以来。追跡機能を復活させるべく幾度となく指輪を交換させる話をしようとしてきた。だが何故だか分からないがどうしてもその話をする気になれず、現在までに至る。



「……()()()()()()()()()()()()



 キラリと光る指輪を眺めると無意識にどこかに文字が書かれてないか探してしまうティグリス。近寄るなという文字。あれは確かに先生からのメッセージとは思えない程の冷たい文字だった。



「一度調べてみる必要がある」



 小声でそう呟くとティグリスは棚からステモナ学園の生徒が載った書物を取り出す。あの文字の書き手は何者か。見つけ出すのは骨が折れそうだと思いながら静かにその場を後にした。

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