第32話 姿をくらました植物
沈黙の遁走だった。ユラ達がゴブリンから逃れようとすると先生がとても呆れた顔でこちらを向きこう語る。
「君は本当に狙われやすい体質のようだ、先日のサクリファイスの件もそうだがこんな事初めてなんだぞ」
「毎度すみません……」
「いや別に責める気はないのだが……ただやはり君は【単なる植木鉢の花】ではないのだなと思ってな」
そう話すとちょいと失礼と告げ、いきなりユラを右腕で担ぐ。何をするのかと聞くと、この方が早く逃げられるだろと言い話を続けた。
「ユラ……確かに君は狙われやすい程の魔力を持っている……だがそれを理由に1人で何とかしようとするのはダメだ!他の奴にまで迷惑がかかる事だってある」
「確かに軽率な判断だったかもしれません」
「いや、そうじゃない……ただこれから先1人で何でも解決しようとすると、下手すると自分の身に危険が及ぶかもしれないという事だけ頭に入れてほしい」
君はただでも花なんだからなと付け加えると颯爽とゴブリンの群れから逃げ出す。いつまでも追ってくるゴブリン達にいい加減飽き飽きとしていたが、先生の足取りにだんだん追ってくるゴブリン数が減っていく。そしてとうとう追ってくるゴブリンの数が1人になっていた。
「……あと少しでゲートだ!」
そう先生が素早く乗り出すとゲートの向こう側へと着地する。ユラが追っ手が来ないか心配しながらキョロキョロしだすと、ユラを落ち着かせるかのようにこう指摘する。
「……大丈夫だ、ゴブリン達がゲートの向こう側から出てくる事はない」
「どうしてですか?」
「それは魔物と人間との契約……古代からまつわる契約があるからだ」
基本魔物は人間界に侵入してはならない。そういう契約だと先生が諭すとホッと息をつくユラ。その契約内容について詳しく聞きたい気持ちもあったが……今はそれどころではないと自身を落ち着かせ、そっと呼吸を整えた。
「……そういえば2人置いていって大丈夫なんでしょうか?」
「それなら問題ない、あの2人は相当強いからな」
信頼してるんですねと言葉を告げると先生は照れ臭そうに目を逸らす。そんな先生をよそにこの後どうしようかと思い先生の腕から降りるとどこからか2人の声が聞こえた。
「おーいユラ!!」
「あれ、ミオリオ?お前もいたのか」
「いたのか?じゃないわよ!」
「2人とも大丈夫だった?」
心配になったユラが彼女達に話しかけるとエルが頬を掻きながらこう言う。
「僕らは別に……それよりもユラ達は大丈夫だったのか?」
「うん、全然大丈夫!」
先生のおかげで何とかなったと話すとエルはどこか投げやりな感じでそうかと答えた。
「とりあえず皆無事でよかったー」
ユラが大きく腕を上げると安堵しきった顔でこう叫ぶ。ヒビマイタケの回収が無事に終わりなによりだが、しばらくは誰かに追い回されたくないと思うユラだった。




