第31話 きっかけの魔結晶
「お前只者ではないだろ?」
まんまとはぐれたエルがゴブリン達に囲まれると1匹のゴブリンがこう問いだした。
「只者か…………てめえに言われる筋合いはねえな」
「お前も高魔力の匂いがする……さっさとキノコを渡せ」
そう切り返されるとエルはある魔法を発動させる。【魔力の粒子】だ。エルはその粒子を使ってゴブリン達に攻撃を仕掛けようとしていた。
◆ ◇ ◇
エルがいつものようにユラの特訓に付き合っているとユラからある質問を受ける。
「そういえばエルはどんな魔法を使うの?」
実は他の生徒達が魔法で戦う所あまり見てないんだよねとはにかむユラとそれを見つめるエル。今後ある戦術の授業のために教わりたいとユラが懇願すると、エルが指先から透明な粉を作り出しこう述べる。
「僕の場合はこれを使うかな」
キラキラとした透明な粉。それが風で飛ばされると細かな粒子となって辺りをほんのり輝かせた。
「粒子?」
「そう、細かな粒子としてこの辺を浮きつかせてる」
そして敵がいたらこうすると言って透明な粒子を一瞬で鋭い針の星のように変化させた。
「当たったら痛そうだね」
「大丈夫、戦術の授業では体術の時みたいに特殊な結界を張ってるから」
ユラが心配そうに話すとそっと諭そうとするエル。自身の魔法で皆が傷つかない事を丁寧に話しユラを安心させた。
◇ ◆ ◇
先日ユラに話した事をおさらいするかのように、粒子を針の塊にしてゴブリン達を撃退するエル。ゴブリン達はたちまち悲鳴をあげ、この粒子の結界から逃れようとする。
「何だこのキラキラとした粒子は!?」
「そ、そうだ風で飛ばせばいいんじゃないか?」
「お、いい提案だな」
そうゴブリン達が話すと大きな葉で風を起こし、粒子を飛ばそうとする。
「よし、これでひとまず安心だ」
「それはどうだろうな…………冬の篝火」
ゴブリン達が一安心したのもつかの間。先程まで浮遊していた粒子が今度は風で地面へと落下し、そのままつららのように上へ貫きゴブリン達を粉砕していく。
「何だこの強さは!やっぱり只者ではないだろ!」
「うるさいな…………あまり傷つけてはいけない約束だがアレは特例の魔物だけだからな…………お前ら相手で本当によかったぜ」
エルがそう言いながら攻撃を行うと、今度はゴブリンのリーダー格らしき存在が目の前へと現れる。
「お前強いな……だが攻略法さえ分かればそんなに大した事はない…………お前ら全員全身に丸いシールドを張れ!」
お前高魔力の割には魔力の出力が小さめだろと挑発すると、ゴブリン達は一斉にシールドを張り威勢を取り戻す。
「高魔力のくせに微力とはな、それさえ分かれば何も怖くない!」
するとリーダー格のゴブリンがナイフを取り出しこちらへ向かってきた。基本魔法ばかりで丸腰のエルに襲いかかるが、即座に武器を作り出し攻撃を防ぐ。
「無駄だって言ってるだろ?」
「だがこの状態で総攻撃を食らったらどうなるかな?」
そうリーダー格のゴブリンが告げると今度は生き残りのゴブリンと一斉に襲いかかる。ここまでだと仲間のゴブリンと共にナイフを振り上げると、エルは極力力を振り絞ってシールドごと粒子で固め敵を撃破させる。
「きっかけだ、きっかけさえあればいい…………僕の魔法は相手又は自分のきっかけだけで全てが動く」
過冷却。あれと同じだとエルが言うと残りのゴブリン達がまた懲りずに攻撃を仕掛ける。呆れたエルが指を鳴らした途端、さっきよりも広範囲のゴブリンを同じように粉砕させた。おそらく先程の風で粒子が流れたため、多方面に攻撃できたのかと思われる。
「こ、こいつどこまで強いんだ!?」
「なあ、もういいだろ?ユラ達を連れて早く帰りたいんだが」
エルが面倒臭そうに最後の攻撃を行うとゴブリンのリーダー格含め一斉に逃げていく始末。おそらく誰よりも大群に囲まれていたエルだったが…………最終的にこの場に残ったのはキラキラと輝く粒子とエルただ1人だけだった。




