第30話 衝撃の音波
魔性のミュージシャンか。ミオリオが彼らから離れるとユラを庇うように魔法具を取り出す。ギターだ。これはとうの昔、異世界から人が召喚されていた時代に知られた楽器らしい。
「ほーら皆!!こっちに注目!」
異世界から知られたそれを奏でるととても勇ましく響きのいい音が鳴る。
ミオリオがその楽器を知ったのは幼くしてこの学園に来た間もない頃の事。彼女がいつもどおり図書室へ行くとそこには【アルバ語で書かれた音楽の書物とギター】が置かれていた。今も昔も禁書扱いの物。だから当時も何者かが置き忘れたのだと今なら思う。
「響け!《ラグリマ》」
残念な事に程なくしてあの書物達は回収されてしまったが……あの時からあこがれだったギターは現在では自身で作り、持ち出せるまでのものになっていた。勿論楽器として。そして武器として。
「な、なんだこの音は!?」
ミオリオがギターを片手に奏でるとゴブリン達の聴覚と方向感覚をおかしくしていく。騒々しく鳴り響く音。ミオリオにとっては昔と変わらず大好きな音だ。
「や、やめてくれ!!」
長らくして延々とギターを弾いているとまるで歓声のようにゴブリン達の悲鳴が響き渡った。さすがの大音量か。ユラを追いかけていたゴブリン達の数も音に驚き徐々に減っていく。
「皆ーー!今日も思いっきし弾くから聞いていってね!」
「やーめーてーくーれーー!!」
「それでは聞いてください!新世界より!《オルビス》」
響き渡ったギターの音はゴブリンからしたら地獄のようで。とてつもない音波が身体中に染み渡り全身を痺れさせる。離れたユラからしてみると激しく綺麗な曲にしか聞こえないのだが……その感想はミオリオには秘密である。




