第29話 問題で優生なトリオ
食堂前で生徒達が佇んでいるとクロノス先生からこう発表される。
「先日から聞いているだろうが改めて今日からギルド制の授業を開始したいと思う」
ギルド制の授業とは複数人でチームを組み、国からの依頼に挑むといった内容だ。当学園では学費の代わりに国から依頼を受領する仕組みになっており、全ての生徒はそのシステムに乗っ取ってギルド制の授業を行うようになっている。要は半強制的な授業という事だ。
「それではこれからこちらで構成したチームを発表したいと思う」
そう話すと順番ずつ名前が呼ばれていく。中には関わりの少ない生徒達もいるが、できれば仲の良い相手と組みたいとユラは考えた。
「ユラ、ミオリオ、エル……以上だ」
最後に残された3人が呼ばれると他の生徒と同様に前に出て列を組む。どんなチーム構成になるかと思ったが、見事に仲の良い相手同士と組めてよかったとユラは思った。
「エル達のチームだが……新入生のユラがいるのでしばらくは私も同行する事になる……改めてよろしく頼む……では各自依頼に取り組むように」
そう彼が述べると、言われたとおり依頼板を見つめるユラ達一行。最初はユラもいる事だし最初は簡単なものがいいだろうとエルが話すと、ミオリオが指さしこう告げる。
「いや!ユラって高魔力だし案外B級クラスのでもいけるんじゃない?……例えばアレとか……」
「おい!アレはBの中でも難しいやつじゃねえか!」
「ユラ、ほっとしているところ悪いがあいつら一応問題児だからな?」
2人のやり取りにどうしようか思い悩むとクロノス先生がすかさずつっこむ。この2人が仲がいいかはさておき、先生的にはどの依頼がいいのか気になりユラは問う。
「そうだな……アレとかどうだ?結構簡単だぞ」
そう先生が指さすとすかさずC級の依頼を眺めるユラ。先程まで喧嘩していた彼らも争うのをやめ、どの依頼が指名されたか確認する。
「まあ、あれならいいかもな」
「先生が言う依頼なら絶対いいでしょ!これにしよ?ユラ」
彼女達がこう言うとすぐさま依頼をはがし食堂で佇む職員へと渡す。依頼の受領方法等分からない事を率先してやってのける彼らに対しユラは頼もしさを感じた。
◆ ◇ ◇
依頼内容であるヒビマイタケを10本採取するために魔界へと向かったユラ達一行。魔界への道は相変わらず奇妙に茂っていて。キノコ狩りをするにはもってこいの場所だとユラは思った。
「これで完了かな?」
魔界のある地に向かうとあっさりと目的を果たすユラ達。あまりにも簡単だなと思い込んでいるとユラが見ていた向こう側から地鳴りのようなものが響き渡る。それもだんだんと近づくように。
「え、何?地震?」
「違う、何かがこっちに近づいてきている!」
ミオリオとエルがこう言うと原因不明の地鳴りが何か確認しようとする。すると遠くから来たそれはなんとゴブリンの大群だった。全員が何が起きたかと思うと全部の大群がユラの方へと向かってくる。
「何事だ!」
「よこせ!そのヒビマイタケをよこせ!」
そうゴブリン達が話すと離れていたミオリオとエルをもみくちゃにしてキノコを奪おうとしてくる。
「な、なんでこのキノコなの!?他の場所にも生えてるのに」
「うるさい!そのキノコだ!人が触ったそのキノコじゃないとダメだ」
なぜユラが持ったこのキノコなのか。その理由は定かではなかったが、一瞬ふとある言葉を思い出した。
(そういえばティグリスさんも言っていたような……)
魔力が高いと狙われる。理由もなくその言葉がよぎったがもしかしたらこういう事ではないか。そう思ったユラは走りながら皆に対しこう叫ぶ。
「おそらく狙いは私!だから皆とりあえず私から離れて!」
ユラはこう述べたが納得のいかないミオリオはユラを庇おうとゴブリンに立ち向かう。
「そんな事できる訳ないじゃない!……絶対に傷つけさせたりなんてしない!私達の友人を!だからここは私達が壁に……ってアレ?いないじゃない!?」
そうミオリオが話を続けようとするとエルがはぐれていなくなった事に気づく。
「まあいいわ、ここは私1人で足止めする、だからその間に逃げて!」
「分かった!」
どこかで転けたりしないでよと一言付け足すと颯爽とゴブリンの目の前に出るミオリオ。今のうちにここを去ろうと走り続けると隣で一緒に並んで走っていた先生がこう言う。
「全く……彼らときたら……君も1人でいなくなろうとするな」
「すみません」
「まあいい……」
「そういえばあの……」
「なんだ?」
「エルは大丈夫なんでしょうか?」
ユラが一つ気になっていた疑問。それはエルの安否だった。どうもどこかではぐれてしまったエルの事を気にしていると、先生は当たり前のようにこう言う。
「エルか……あいつなら大丈夫だろう……もし何かあるようであれば向こうから何らかのコンタクトがくるはずだ」
おそらく君の事を思ってどこかで暗躍してるのかもなと意味深げに笑うとそのまま横並びでユラと走るクロノス先生。とても忙しない展開になってしまったが、とても頼もしい仲間ができたなと走りながら深く感謝した。




