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第26話 Forbidden Maze

「ねえ、職員室前にある地下4階のとある図書室の事って知ってる?」



 閑静なる夕会前。ミオリオがユラに対しそう呟くとエルが振り返りこう話す。



「やめとけ、その話はろくな事にならない」


「いいじゃない!これぐらい……あたし、こっそり入ろうとしたらさー」


「先生に怒られるぞ!」



 2人のやり取りをまるで昔関わりあったギュンターと私のようだとユラが眺めていると、夕会前開始の鐘が鳴り始める。



「では夕会を始める」



 そうクロノス先生が言うと全員に対し明日の日程の確認やちょっとした小話をする。生徒全員とのやり取りを終えるとユラ達は教室を後にした。



 ◆ ◇ ◇



「ユラ、放課後少し話がある」



 ミオリオ達といつものように話しながら女子寮まで歩いていると、クロノス先生が後ろからユラを呼び止める。



「どうかしましたか?」


「話というのはそうだな……ここではなんだから別の場に移動しよう」



 そう言ってユラを導くと職員室手前の地下へと繋がる通路への鍵が開かれる。ユラが()()()()()()()()()であった地下通路だと驚くと、クロノス先生が前方に並び下へと誘導した。



「ここに座れ」


「ここは?」



 ここは古代にまつわる禁書が保管された図書。そうクロノス先生が話すと深刻な眼差しでユラを見つめた。



「率直に言うがお前……人間じゃないだろ」



 どうしてそれをと思ったのもつかの間。ユラが言い淀むとクロノス先生が話を進めた。



「先日国の方からとある情報を得たんだ」



 国からの情報。何故クロノス先生が国と関わっているのか聞くと、質問には答えずこう言い放った。



「…………君が人でないもの…………例えば()()()()()だったとしても私達学園は生徒として歓迎する」



 ナナタタ草。ユラの時代では聞いた事のない名前だ。ただ亡き師匠ユリウスからも、私の花の事をそのように呼んでいたなとふいに思い出す。



「ユラ…………正直に答えてほしい…………君は人間なのか?」



 正直言うと正体を明かしたくなかった。ただ親身になって話してくれる姿を見るとなんだかやるせない気持ちになり、言葉を紡ぎたくなった。



「はい、実はそうなんです……」


「やはりそうか……いや、別に責めたい訳ではない……ただ確認だけしておきたかっただけだ」



 そう話すとどこか悲しげにするクロノス先生。個人的にはもう気にしていないのだが、どうやら同情しているようだった。



「……それでいつからそんな状態なんだ?」


「それが……」



 クロノス先生の言葉を信用し話を続けようとすると、途端に本が落ちる。急いで本を戻そうと席を外し立ち止まるとそこには古語である【アルバ語】で書かれた書籍がズラーっと立ち並んでいた。



「あのこれは?」


「これは禁書だ、全て古い文字のアルバ語で書かれてある」



 ミオリオが言っていた事。それはこの部屋そのものの話なのだと改めて感じた。つい心が踊ったユラは拾い上げた禁書を読み上げる。



「それ以上読むな!」



 怒涛の叫び。何が起きたかと思うと急に先生はユラを庇うように頭を下げさせる。すると再び転げ落ちた書籍から妙な煙のようなものが立ち上がった。



「遅かったか……君なんであんな物が読めるんだ!」


「えっ、それはその……」


「まあいい、今はそれどころではない!青い影!《オンブル・ブルーム》」



 クロノス先生がたちまち書物に向かって呪文を唱えると、うじゃうじゃと動く黒い煙がみるみるうちに消えていった。



「はあっ………………危ないところだった…………君もう少しで2人諸共黒い煙に巻き込まれるところだったんだぞ!」


「えっと………………すみませんでした」



 だからなのか。ミオリオに怒られると言われていた理由がここにきて分かった気がした。最初は単なる噂話だと思っていたユラ。だがいざ来てみるとここは禁書の保管庫であるという事を改めて認識した。



「…………それで君は何者なんだ?」


「えっと実は……」



 クロノス先生に叱られつつ話を促されると、一つ一つ説明をしていくユラ。最初は驚かれたが、どこか同情的で。話していいものか悩んだが、ひとまず先生からの疑惑が晴れてよかったとユラは思った。

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