第22話 魔力と質量
その日の授業は特殊だった。何の授業かというと一言では言い表せないが。
◆ ◇ ◇
「今日は魔力と検査について説明する」
クロノス先生が指を動かしながら話すと、チョークがおもむろに文字を踊らせ動き出す。一つ一つの単語、図解を描くと先生は順を追って話を進め始めた。
「まず自分達の体内の話だ、魔力は体内の器の大きさによって貯められる量が決まる……それをこの国では魔力量と呼ぶ」
先程描いた図解を使いながら先生は事細かく説明する。
「そして魔力の貯め方も人によって大きく異なる、主にあるのは3パターン、1つは生まれつき持ってる元々の魔力、2つ目は自身で生み出す貯め方、そして3つ目が外部……例えば食事とかで貯められるパターンだ」
クロノス先生が真剣な眼差しで応えると、チョークの動きが途端に止まり、ゆっくりと落下し始める。3つ目の外部から取り入れた魔力。おそらくユラは3つ目のパターンで、マルスを口にした結果膨大な魔力が宿ったのかと思われた。
「そして出力、魔法の出し方にもそれぞれ種類が存在する、広範囲、指定範囲……エルはそっちだな」
「うるせえよ」
指名されたエルに対し先生が話すと彼は無愛想な態度でこう言い放った。その姿を見て思わず呆れる先生だったが、気にする事なく話を進める。
「……まあ大まかに話すとこうだ、では次に魔力検査へと向かいたいのだが……」
そうクロノス先生が話すとプリムラ先生と呼ばれる保健医が黒板の前に姿を現す。
「プリムラ先生です!初めての人はよろしくね」
初めて出会ったユラに対しこう述べると、プリムラ先生は即座にクロノス先生と交代する。
「それでは魔力検査をしたいと思います、全員体育室までついてきて」
プリムラ先生が優しく話しかけると、生徒全員が地下1階の体育室へと移動する。するとそこにはなんと布団が並んでおり、いかにもこれから寝るというような状況だった。
「はーい皆今から眠りましょうねー」
「えっ!本当に寝るの!?」
あまりの驚きに思わず隣にいたシャンディ達に問いかける。けれどもシャンディ達はなんの疑問もなくこう答えた。
「まあ……特殊ではあるかもだけどこれが普通だしー」
「私も最初アレだったけど、ミオの言うとおりこれが普通なのよね……」
「そ、そうなんだ……」
ユラだけ納得のいかない感じのまま、その言葉のとおりなんの疑問もなくミオリオ達は眠り出す。他の生徒も眠る中ユラだけ眠り方を知らずその空間から取り残されていた。
「……あら?ユラちゃん……よね?………………まだ眠れそうにない?」
「え、えっとまあ……」
「睡魔の魔法をかけたのにおかしいわね…………まあいいわ」
(まさか皆本当に寝るなんて……)
元が植物だから寝れないとは言えず焦りを見せるユラ。そんな彼女をよそに先生はある話を持ち出す。
「まあ……初めてだし仕方ないわね、正確性は落ちるけどこれでも検査の真っ最中なのよ?」
「す、すみません……」
「いや、責めたい訳じゃないわ、ただこの検査少し特殊でね……相手が寝ないと正確に測れないのよ」
というのも彼女の魔力の特異性もあり、睡眠中でないと上手く技が発動しないとの事。彼女いわく特別な力らしいが……その使い方の不便さゆえになかなか上手くコントロールする事ができないと彼女は話した。
「でもね……もしこれで人々の役に立つ事があるのならって、そう思って今日までこの力を発揮してきたの」
「そうなんですか」
「そう、だからあなたの魔力も測らせてほしいの……ダメかしら?」
別に寝なくてもいいからと念を押すとプリムラ先生に対し大丈夫だと答えるユラ。
「残りはあなただけ……だから少しの間だけ目をつむって?」
そう彼女が促すと言われたとおりユラはゆっくりと目を閉じる。そしてブツブツと小声で寝ている生徒達に聞こえないよう呪文を唱え始めた。
「……………………………どうかしら?……ああ、もう目を開けてもいいわよ」
「………………どうでしたか?」
「それが……エラーみたいなのよね……いつもなら検査結果の用紙が出るんだけど…………やっぱり難しいわね」
もしくはユラちゃんの魔力値が異常に高いのかしらと付け足すと、プリムラ先生はすぐさま全員が起きるよう起床の魔法をかける。
「さあ起きて!クロノス先生が教室でお待ちかねよ?」
そう言って魔法をかけるとさっきの寝顔が嘘のように消え、全員起床する。結局彼女のために寝る事は叶わなかったが、貴重な授業に参加できてとてもよかったとユラは思った。
◇ ◆ ◇
プリムラ先生が保健室へと向かうとクロノス先生が彼女に話をかける。
「プリムラ先生、今回の検査どうでしたか?」
「ええ、順調だったわ……ただ……」
「ただ?」
プリムラ先生がこう話すとユラの検査結果を彼に見せる。もっとも検査内容については彼女の方が詳しいため、クロノス先生からすると難しい話ではあるのだが。
「彼女…………ユラちゃんの事もう少し詳しく調べた方がいいと思うのよね……」
「ユラが?」
「そう、だから国の方にも話をつけておいてほしいの、その方がよく検査してもらえるだろうから」
「そうですね、検討しておきます」
「それにクロノス先生なら昔のツテが……」
「プリムラ先生、その話はまた今度にしましょう」
「ああ、そうですね…………ごめんなさい」
クロノス先生が別れを告げると、プリムラ先生も同様に踵を返す。先程の彼の心情が気になり彼女がふと振り返ると、なんとなく彼の黒い影が横に揺らいだような気がした。




