第21話 Binding Ring
外出届けを置き去りにした放課後。ユラは学校外へと向かうと久々にティグリスの元へと向かう。
「いやー久しぶりだね、ユラ」
ティグリスがテント裏のテーブル席につくと、ユラに対しこう話し始める。
「久々の再会だから色々聞きたいところだけど……どうだった?魔法学校は」
「えっと、色々すごかったです」
「だろうね、君みたいなタイプはそういうと思ったよ」
そう彼が答えるとおもむろに立ち上がり、あるものを取り出す。こじんまりとした透明の結晶。とてもキラキラと輝いているが、先日の騒ぎのことを思い出し一目で察する。
「では本日分の魔力を頂こうか」
「魔力の提供ですか」
「そうだ、この間話しただろう?」
先日の騒動で提示された条件。その1つの魔力の提供について今迫られている事を確信したが……提供する方法が分からずユラは動揺する。
「あの、どうやってやれば……」
「簡単だ、君の手にこれを乗せるだけでいい……ああ、強いて言うなら間違っても呪文は唱えない事、いいね?」
彼が意味深げに話を進めるとそっとユラの手のひらに結晶を乗せる。するとユラの手に乗せた結晶がみるみる大きく伸び始め、質量のある物へと変化を遂げた。
「えっと……これで完了ですか?」
「ああ、そうだ……それでいい」
変化した結晶を大人しく渡すと満足げに笑う彼。この結晶はなんなのか。何となく気になったユラはティグリスに対し質問を投げかける。
「この結晶って何なんでしょうか?」
「これ?これは魔石だよ、魔力の石さ」
「……魔石」
「僕達【特別調査部隊】は日々これを探してる……マルスの暴走を止めるために」
そう述べると急に真剣な顔つきになる彼。何がなにやら分からないがどうやらティグリスにも信念めいたものがあるようだ。マルスの暴走。自身もここを働き口にしたからには色々知らなければならない。ユラがそう思うと再び彼に対し質問を提示する。
「あの!」
「どうしたんだい?」
「マルスって何なんですか?」
長らくして思ってきた疑問。ひょっとしたら彼なら答えてくれるのではないか。そう期待を寄せるがティグリスから返ってきた言葉は思ってもみないものだった。
「全く君は……それは国家機密だ、まさか答えると思って聞いたのかい?」
「そ、そうですが……」
「まあ………………そうだな………………本来なら秘密にしておきたい事なんだが君はがっつりマルスに関わってるからはっきり言うよ…………それは魔力そのものさ」
話を聞いているとどうもマルスというのは強力な魔力そのもので、その魔力に耐えられない身体だとしんでしまうとの事だった。
「君にはその器があって運良く助かったという訳さ…………決して猛毒の果実なんかじゃない」
前回通った学校では猛毒がある果実との話だったが……どうやら表向きの情報だったようで。それを踏まえるとおそらくミルテが魔法を隠していると言っていた事も本当だと実感した。
「……君もうすうす気づいてはいるようだが僕達は魔法を隠さなければならない…………だから今日はこれを授けようと思う」
ティグリスがそう話すと透明な結晶がはめられた指輪が渡される。
「これには魔力を安定させる効果がある、君のような魔力が高い子を野放しにはできないからね……」
「す、すみません」
野放しにできない。おそらくあの騒動での出来事の事を告げられたのだろう。色々悩んだが元々魔力が多い事に悩んでる事もあり素直に受け取る事にした。
「まあ先日魔石を頂いたほんの礼さ……あの量の魔石が取れる事はそうそうにないからね」
「そ、そうなんですね」
「だからそれを肌身離さず持っている事、いいね?」
「分かりました」
「じゃあ今回はここまでという事で……後給料は月末に払う事にしてるから」
「あ、ありがとうございます」
ユラに向かいそう呟くと彼は立ち上がって手を振りその場を後にする。自身もテント裏から顔を出すとそっと学校へと戻っていった。
(……指輪かあ)
キラキラと結晶が輝く指輪。その指輪を人差し指にはめると、輝いていた結晶が怪しく光った気がした。




