第20話 私の明るい川の軌道
知らぬは鬼というべきか。その日いつものように教室内の一番後ろの外側の席に座るとある人物に叱られた。
「ちょっとここあたしの席なんですけどー」
視点を自身のノートから顔をあげると淡い水色の瞳と髪が映る。
(綺麗な髪飾り……)
淡い青花の集合体。一つ一つが小さく咲く姿はまるで宝石の光のようだとユラは髪飾りを見て思った。
「ちょっと!聞いてるの?」
「ごめんなさい!ユラちゃんまだ入学してきたばかりだから……」
「そんな事知らないわ!とにかく、ここはあたし専用の席だから早く譲ってよねー」
「ご、ごめん!別の席に映るね!」
即座に席を変えようと立ち上がると今度は隣の真ん中の席を指さしこう述べた。
「ここの真ん中に行けばいいじゃない」
「あっ……そっか、ごめんごめん!」
そうしてユラが真ん中の席につくとシャンディがフォローするかのようにして話す。
「ごめんね……言うの忘れてて……彼女記憶喪失だから言いづらくって……」
「いいのいいの!私はユラ・メイドリー、記憶喪失なの!よろしくね」
ユラが怒ってきた彼女に向かい自己紹介をすると、何故だか分からないが一瞬で彼女の顔が歪み、持っていたノートが下に落ち始める。
「あ、あなた……記憶喪失なの!?」
「え、ええそういう感じというか……」
すると何故か彼女が大きく腕を広げ、ユラの身体を包み込むではないか。あまりの行動に一瞬だけ魔法が切れそうになったが、すぐに持ち返し心を落ち着かせる。
「ユラ!ごめん!……きつい言い方をして!」
「え、あ、あの……いいよ、大丈夫だから」
いつの間にか鼻水グズグズの彼女に抱き寄せられ、何が何だか分からないままのユラ。どうやら記憶喪失という言葉に同情のようなものを感じたらしい。一つ一つの行動に優しさを感じたユラは彼女に対し涙をふくようハンカチを渡す。
「あ、ありがとう……変な事言ってごめんね」
「ううん、こちらこそごめんなさい」
「あたしはミオリオ、ミオリオ・チアロ……私、ここの席じゃないとダメなの!だってここじゃないといい感じに黒板が見えないから……」
そう彼女が言うと黒板を指さし駄々をこね始める。話を聞く限りどうやら彼女の身長が低いのもあり、黒板全体がちゃんと見えないという事らしい。
「だから駄々こねちゃった……ごめんね」
「全然いいよ!ここの席でも大丈夫だから」
「っていうかてめえ僕の後ろにいたくないだけだろ!」
「うっさいわね!勘が良すぎて嫌になるわ!」
ミオリオと話をしていると途端にエルが乱入し始める。2人を見る限りどうやらあまり仲が良くないように見えた。
「あ、あの良ければなんだけど……」
「えっと何?どうしたの?」
ユラが2人のやり取りに対し困惑しているとミオリオが手を擦り寄せはにかみながらこう提案してくる。
「ミオって呼んでくれると有難いんだけど……」
「えっでも、いきなり呼んでいいのかな?」
「全然!むしろその方が仲良くなれそうって感じ!」
彼女がそう話すとユラに対し満面の笑みを見せる。ユラから見てにっこりと微笑む彼女の姿はとても眩しく感じた。




