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第18話 Squirrel in the Hat

 叱咤が響き渡った翌日の放課後。先日の木の片付けと先生の手伝いをしていると、クロノス先生がユラに対しある助言を受け渡す。



「この間魔力操作について話したと思うが、私は担任だが学校内でも忙しい……だからクラスメイトに頼むのはどうだろうか?」


「クラスメイトですか?」


「ああ、例えば……………………いや、あまり頼れんかもしれんが()()とかどうだろうか?適任ではあるが…………いやしかし……」



 何故だろう。急に先生の様子がおかしくなった。エルという人物は果たしてどんな人なのか。気になって疑問を投げかけるが先生にとってはあまりよくない相手のようで。いわゆる問題児扱いの生徒らしい。



「まあそういう事だ…………だからあまり期待はするなよ」



 とにかく他の生徒にも頼る事と念を押されると先生はその場を去っていく。一瞬だったが去り際にどことなくクロノス先生の眼鏡が怪しく光った気がした。



 ◆ ◇ ◇



 翌日の授業中いつもどおり席についていると、小声で隣にいるシャンディにある事を話す。



「ねえ、聞きたい事があるんだけど」


「何?どうしたの?」


「エルって人どんな人物なのかなーって」


「えっ!?えーと、すぐそこにいるんだけど」



 そう彼女が呟くと前の席の人物だと指を指す。彼女いわく()()()のようで。魔法の特訓に付き合ってもらうのには難しい人物のようだと感じた。



「えっと、どうしてエルの事を?」


「実は先生に言われて魔力操作の特訓に付き合ってもらえる人を探してて……」


「……確かに適任ではあるけど、他の人を探した方がいいような……」



 なんでもエルはこのクラスの中で一番魔力をコントロールする力が上手いとの事。それもトップクラスの優等生らしい。()()()()()()()()()()


 性格面。確かに厄介そうだとは思った。けれどもやはり話を聞いてるうちにぜひとも協力を願いたいと思ったユラはシャンディに対してこう話す。



「……やっぱりエルって人に頼んでみる」


「ええっ、そうなの?チャレンジャーだなあ……もし頼み事に失敗したら他の人紹介してあげようか?」


「ううん、いい!大丈夫!」



 そうシャンディに告げると授業終了の鐘が大きく鳴る。ユラは素早く椅子から立ち上がると、どうしても協力してもらいたいと願い、早速エルに相談を持ちかけようとした。けれども肝心な彼は寝ており話をする事ができない。


 2限目、3限目と時が刻一刻と過ぎるが、いつもタイミングが合わず話をする事をあきらめてしまうユラ。



「なんかいっつも寝てるねエルって人」


「確かに……ここ最近寝てばかりなのよね……」



 確かによくよく考えると入学当初から寝てばかりな気がする。そう考えているとある事を思いつく。



「昼食後とかならありかな?」


「うーん大食いだからなあーやめておいた方が…………」



 授業後そう話すと真っ先に食堂に向かうユラ。これから昼食だと駆け上がりいざ着くと既に食べ始めているクラスメイトが数人いた。


 ユラ達も何か食べようと学食のメニューを選ぶと、既に食べ始めていたエルの元には大量の料理が置いてあり、思わず絶句してしまう。



「エルってあそこまで食べるの!?」


「まあ……話しかけづらいでしょ?」


「……うん」



 活きのいい食べっぷりに少々引いてしまったユラ。きっと味わって食べたいだろうと思い昼食中に話しかける提案も心の中でボツにした。



 ◇ ◆ ◇



 声をかける事をあきらめ、ため息をついた放課後。ユラは明日の手伝いをするよう言われ、中庭の通路から職員室の方に向かっていた。



「いつ見ても中庭が綺麗だなあ」



 そう呟いていると草むらの中から小さなある動物が向かってくる。



「……リスだ」



 灰色のリス。この時代の本でも見た事ない色をしていた。そんな風変わりなリスが何故かこちらに向かうと、ユラの耳に挟んだペンを持ち出しその場から逃げ出そうとする。



「あっ、ちょっとそれはダメ!!」



 ユラが持っていたペン。それはトリスティスが勉強用にと買ってくれた大事なペンだった。すぐさま灰色のリスを追いかけると、ある人物が通路の向こう側からひょっこり顔を出す。



(アレ?………………この人って)



 それは話しかけようとしていた()()()()だった。リスがエルの足からてっぺんまで登りつめると、灰色のリスが帽子へと変化する。



「…………これはお前のか?」

「あっ、うん」



 ピンクのボブヘアが帽子でへたるとエルはペンを持ち、質問を投げかけた。



「お前……僕に用があるんだってな?」


「そ、そうだけど……」


「先生から言われたんだ……一度話をしろってな」



 鋭い水色の眼光に怯えているとエルはこちらの予想に反し、そっと優しくペンを返してくれる。



「それはお前のだろ?……返してやるよ」


「あ、ありがとう」


「ユラだっけお前?……僕はエルディン・アンリー・シャルル、エルでいい」



 おそらく寝てて聞いていないであろうと思われた名前を言われ、ついハッとするユラ。即座にペンを返した事といい、なんだかんだ性格の悪い人物じゃないのかもしれない。



「というか行くんだろ?手伝ってやる」


「へっ?……行くってどこに?」


「職員室」



 そう話すと持っていた書類を代わりに持ち颯爽と歩くエル。いきなり書類を取り上げられた事に驚いたが、不器用なだけで案外優しいのではないかとユラは思った。

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