第16話 World of in Cage Bird
「では自己紹介を」
「ユラ・メイドリーです、よろしくお願いします」
「では席について」
今日から新しく入る記憶喪失の子という名目で自己紹介を終えるユラ。クラスは前日言われたようにたった1クラスのみ。最初はあまりの少なさに驚愕したユラだったが、いざ入ると人数の少なさゆえに仲良くなりやすいのではないかと考えた。
「よろしく」
「え、ええ……あたしはシャンディ、シャンディ・スフィア、よろしく」
席の指定は特にないとの事で。何となく一番後ろの左外側の席に座るとシャンディという子が話しかけてくる。
「あなた本当に記憶喪失なんだってね、大丈夫?もし分からない事があったら言って」
「あ、うん!ありがとう」
お互いの自己紹介が終わったところで朝の朝礼が終わる。
「では授業に入る、新入生もいる事だし……早速だが小テストを行う、今回はこちらの用紙を使わせてもらう」
このクラスの担任のクロノス先生がそう言うと、テストで使用するであろう用紙が空中でパラパラと渡されていく。
おそらく魔法だと思われるが……なぜこの時期に小テストなのかと考えているとユラの方にも用紙が行き渡った。
「いつもどおりでいい、各自この用紙で空の模様を描け」
必要な筆記用具は机の中にあると助言を残した後、その場を去るクロノス先生。空の模様とはどういう事か。そういえば最近空を眺める時間なんてなかったなと校庭に出て上を見上げてみると、そこには【うっすらと描かれた大きな魔法陣】があった。それも見れば見る程くっきりと映るようなそんな模様だ。
(こんな模様、前の時代にもあったっけ?)
不可思議な出来事につい隣にいたシャンディに聞いてみると思わぬ反応をされる。
「えっ!そうね……普通にあるわ……ごめんね、この授業あまり人と接触しちゃいけないみたいなの!」
「えっ……そうなの?」
「うん、一応テストだし……あまり教えられなくてごめんねっ!」
そう言うとシャンディは遠くの方でスケッチを始めた。確かに先程の行為はカンニングに近かったかもしれない。シャンディの反応についしょんぼりしていると空の模様がまた新たな色へと変化する。
「えっ、また色が変わった!?」
ユラが空を再び眺めると今度は白から紫へと変化した。どうやらこの空の魔法陣は見れば見る程色が変わるらしい。空に巨大に広がる魔法陣をスケッチするとユラはめくるめく変化する模様に困惑した。
(この空模様……一体どうなってるの?)
助言を言い渡されたのはいいものの……どんどん色が変わる魔法陣の姿に色鉛筆で描ききれないと感じたユラ。きっとこの空模様は例えどんなに便利で素晴らしい筆記用具だとしても描き切る事はできないだろうとユラは思った。
◆ ◇ ◇
「それでは各自提出するように」
なんとか書ききったユラは授業終了後に虹色の空模様が描かれた用紙を提出する。
「こ、これは!?」
提出後、何を言い出すかと思うとクロノス先生は驚くような顔でこちらを伺う始末。
「どうされたんですか?」
「いいから職員室に来い」
もしかしてまた何かやらかしたかと慌て出すと一度職員室に来るよう指令される。何がなにやら分からないままだが、恐る恐る彼の言うとおり職員室まで行ってみる事にした。
◇ ◆ ◇
職員に入るやいなや彼からある事を聞かれる。
「……これを書いたのはユラ、お前だな?」
はいそうですと呟くとやはり何かしでかしたのか。先生の様子が少しおかしなものへと変化する。
「ユラ、これが何かわかるか?」
「いえ、分かりません」
「これは【古代から存在する魔法陣】だがここまで見えるとなると……おそらく君はかなりの魔力があると見た」
そう告げると頭を抱え何やらブツブツと話す先生。クロノス先生がここまで頭を抱えるのは何か事情があるのだろうか?そう考えていると先生はある事を言い出す。
「お前、街中で大きな魔法とか使ってないだろうな?」
(ギクッ!)
実は使いましたと白状すると先生にため息をつかれてしまうユラ。
「いいか!この力を無闇に使うな!お前みたいな魔力量の多い奴がもし使ったら国の連中から狙われるかもしれないんだぞ!」
もう手遅れです先生と述べたくなったが必死の形相に思わず言葉を飲む。本当の事を言ってしまいたくなったユラだが一先ず様子を見ようと彼女は思った。
「まあ、ただ自身に身の危険が迫った時は使っても構わない。ただしこっそりだぞ!こっそりだ!」
「……はい」
そうは言われたものの……薄々気づいてはいるが常時変身と移動等の魔法を使ってるせいで、魔力コントロールが疎かになってるとみたユラからすれば難しい問題で。この先同じ事があった時どうしようか悩んでいると先生はある事を呟いた。
「君、魔力操作はどれぐらいできるんだ?」
「……実のところからっきしです」
「……正直なところ私直々に君に対して色々叩き込んでやりたいところだが……まあこちらでも後々考えてみるよ」
こちらとしてはなんとも有難い話だが……先生自ら教わるとなるとやはり厳しいのだろうか。などと考えていると2限目に入る鐘が鳴り始める。
「ではこれから予定どおり普通科の授業に入る、大人しく席につくように」
そう述べると彼は即座に職員室から出る。彼の言うとおり魔力操作ができる手立てのようなものがあるといいのだが。そう考えていると先行きが見えないのもありなんだか足が重くなった気がした。




