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マルス適合者~二度死ぬ彼女は雑草の姿をした魔法使い~  作者: しがない草
第一章 一生から三生へと変わる物語
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第1話 私は草

 幸い中の不幸というべきか……救いを求めた男性に雑に抱えられた私はなぜか()()()()()()()。なぜ椅子でなく机なのか。目の前に座るための家具があったというのに……妙に気持ちが晴れない。



「あー……そうだな。まず君には色々聞きたいことがあるのだが……」


「その前に1つ質問してもよろしいでしょうか?」



 私が運ばれた部屋はおそらく彼の家。質素だけど人が過ごしている証があちこち顔を覗かせている。



 家主と思われる目の前の若い男性はというと……さっきから柔らかなシフォン色の頭をかいては少し怪訝そうな表情を見せていた。今の言葉といいどうやら私に何か気になることがあるみたいだ。普段の私ならとっくに質問内容を聞き、答えているところだと思う。でもそれ以上にどうしても今の自分の状態が気になり、私は彼からの問いを中断させる。



「なぜ私は机に座らされてるのですか?」



 というのも今現在なぜか私は身体が動かせないでいた。もっともさっきまでの私の状況よりはだいぶマシなので、不満に思うのはお門違いではあるのだけれど。



 ◆ ◇ ◇



 彼の部屋に運ばれる少し前の事。死んだはずの私が再び目を覚ますとなぜか知らない土地の野原にいた。それも足が埋まったまま動けない状態で。



 おそらく目覚めてから現在までそれほど経ってはいないのだろう。でも、もしあのまま見知らぬ場所で誰にも気づいてもらえなかったら……そう思うととてもゾッとした。



 目覚めたら身体が動かないのだ。かろうじて声を出すことはできたものの……あの時私が大声で叫び続けていなければ彼に救われることもなかったかもしれない。



 ところどころ不可解な点はあったものの、私を見つけて助けようとした時点でこの人はとても優しかったと思う。動けない私を治療のためか、ひとまず自分の家まで運ぶことを提案してくれたのだから。もちろんそこまでは感謝の気持ちでいっぱいだった……ただし彼がまるで私を物みたいに鷲掴みにして運ぶまでのことだけど。



 ◇ ◆ ◇



(恩人に対してこんなこと思いたくないけど……さすがに……ね?)



 今の私にとって彼は命の恩人に等しい。正直掴まれた時点で一言言ってやりたかったけど、自分の立場を考え咄嗟に不満を胸にしまい込んだ。だけど彼の失礼な言動はこれだけにとどまらなかった。さすがに部屋に入るまでは我慢した。自分でも分かってはいる。分かってはいるけれど、しまいには机に座らせるという雑な振る舞いをしてきたため、とうとう我慢できず先程の質問を不躾に投げかけてしまった。



「……なるほどな、君からしてみると今はそういう状況なのか。すまない、悪気はないのだがその方が君が話しやすいと思ったんだ」



 私からの問いに対し少し困った顔をしながら話す彼。琥珀色の瞳が一瞬興味深そうに輝いたようにも見えたけど……彼の言うように悪気はないらしい。それでも、どうしても今の姿勢に納得ができず、今度は机ではなく椅子に座らせるよう懇願する。



「そうですか……ですがやはり一般的には椅子に座って会話をするのがいいと思うので、体勢を変えていただきたいのですが」


「そうか……そうだな、そうしよう……すまなかった」



 なんとなくこちらの苛立ちが通じたのか、彼が椅子から立ち上がって即座に動こうとしている。ようやく椅子に座れるという安心感はあったものの……さすがに私もあからさまに態度に出してしまったなと少々罪悪感を感じていた。この人もそんな私の気持ちを察したのか、今度は優しく両手で抱え近くにあった椅子に座らせようとしている。やはり私を物のように持つ彼に少々ムッとしたが、それよりも別のことが気になり再び彼に問いただす。



「あの、この椅子座高が結構低くないですか?この椅子だと低すぎて前が見えません」



 上から見た限りだとそうは思わなかったが、椅子の座高がかなり低いようだった。命の恩人に対しあれこれ言うのもどうかと思ったけれど、机に敷かれた白いテーブルクロスで前が見えないため私は彼に状況を話す。すると……やはり言いすぎたのか、予想通りの反応で。当の本人にはため息をつかれてしまった。さすがに怒られてしまうかも。そう考えていると怒るどころか困惑したように彼はこう話しかけてきた。



「やはり……君は今の自分の置かれた状況を理解していないようだ。まあいい、そういうことならば直接鏡を見て確かめるといい」



 理解していないとはどういう事なのか。何も分からずそのまま黙っていると今度は大きな姿鏡の前に運ばれる。



「えっ……?」


「これが今の君の姿だ」



 鏡に映っていたのはどう見ても小さな植木鉢の中に植えられた黄色い花だった。動かないなりに一生懸命頭をふろうとしながら自分の姿を見つけようとするが、どこにもそれらしい姿が見当たらない。



「あの…………どこをどう見ても小さい植木鉢に入った黄色い花しか映ってないのですが……」


「ああ、どこをどう見ても植木鉢に入った黄色い花にしか見えないな今の君は」


「……………………………はなあっっ!!????!?」



 頭の悪い私でもようやく理解する。今ここに映し出されているのは黄色い花とそれを持ったショートヘアの男性だということを。そして私は元の黒髪の少女でも金髪が入り交じった少女でもない、ただの花だということを。



(なっ、なな、なんで私()()()()()()()()()()()!!???)



 静かに冷や汗が流れたような気がした。もっとも汗をかける身体すら見つからないのだけれど。

 私を持つ彼が複雑そうな顔でこちらを見ているが、自分でも混乱していてとても構ってはいられなかった。私自身なぜこんな姿になったのか、何も知らないのだから。



(いや……本当になんでこんな姿に…………? ……いや、なんで!? ……………………で、でも、私ばかり驚いてても仕方ない……よね……この人も困惑してるようだし……)



 確かにここに来るまで色々なことがあったけれど。もしかしたら一連の出来事が関係しているということなのだろうか? そう思いひとまず気持ちを落ち着かせるため、私は少しずつ記憶を辿ることにした。




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Xから参りました 面白い設定に驚くのと同時に、これからの展開を楽しみに拝読しております
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