アデリーちゃん危機一髪
今日も元気に、朝ご飯を食べたアデリーちゃんは、「行ってきま〜す!」と巣を飛び出して、『クレイシュ』と呼ばれる保育園に向かいます。
クレイシュには、アデリーちゃんと同じくらいの子どもペンギンがいて、先生ペンギンがお世話をしています。
「もう少しで、みんなは、このクレイシュを卒業になります。一人で出歩くときには、ヒョウアザラシやシャチには気をつけるのですよ」と、先生ペンギンがアデリーちゃん達に注意をします。
その先生ペンギンの言葉に、「はーい」と、クレイシュにいる子どもペンギン達は、元気に返事をしました。
クレイシュからの帰り道、アデリーちゃんは海岸に、何かキラキラと光るものを見つけました。
『あれは何だろう?』と、アデリーちゃんは気になってしかたありません。
先生ペンギンから、『より道をしないで、まっすぐに帰るのですよ!』と言われたことを忘れて、つい、アデリーちゃんは、その光るキラキラのほうに近づいていきました。
『な〜んだ。魚のウロコが光っていただけか』と、アデリーちゃんは海岸に横たわる死んだ魚を、小さな羽でつつきます。
その時です。
突然、海の中から一匹のヒョウアザラシが、アデリーちゃんに飛びかかってきました。
『あぶない!!』と、とっさにアデリーちゃんは身をかわします。
すると、ヒョウアザラシは陸の方にまわり込んで、アデリーちゃんを海の中に追い立てました。
初めての経験に、アデリーちゃんはパニックになって、海の中を逃げまわります。
しかし、ヒョウアザラシはアデリーちゃんよりも泳ぎが速く、今にもアデリーちゃんは追いつかれそう。
「エーン!助けて〜。お父さ〜ん、お母さ〜ん!!!」と、泣きさけびながら、必死になって逃げまわります。
『もう泳げない!』と、アデリーちゃんがあきらめかけた時、ヒョウアザラシに何かがぶつかり、ヒョウアザラシが動きをとめました。
「アデリー、あの岩の後ろに隠れなさい!」
それは、アデリーちゃんの悲鳴を聞きつけたデリーお母さんでした。
『でも、泳ぐのをやめたら追いつかれるんじゃ?』と、アデリーちゃんは考えますが、もう泳ぐ力がありません。
しかたなく、デリーお母さんの言うとおりに、岩かげにかくれると、デリーお母さんがアデリーちゃんに覆いかぶさりました。
それまで、デリーお母さんがぶつかった衝撃で、動きをとめていたヒョウアザラシが、岩かげのデリーお母さんと、その下にいるアデリーちゃんをニタリと見て、舌なめずりをします。
「ダメ!お母さんだけでも逃げて!!。言いつけを守らなくてごめんなさい!!!」とアデリーちゃんが叫びました。
そんなアデリーちゃんを、デリーお母さんが優しく見つめかえし「アデリーちゃん。あなたは強く生きなさい」とささやきました。
デリーお母さんは、アデリーちゃんの身代わりになる覚悟をして、目をギュッとつむります。
するとそこに、いきなり真っ黒な何かがあらわれ、ヒョウアザラシをくわえて、泳ぎさっていきました。
そして、「もう大丈夫だよ」と、デュモンお父さんがあらわれました。
なんと、デュモンお父さんは、自分のからだをおとりにして、ここまでシャチを連れてきたのです。
岩かげで動かない、デリーお母さんとアデリーちゃんに気を取られ、油断していたヒョウアザラシは、シャチに気づくのが遅れたのです。
このため、ヒョウアザラシの手前で急旋回したデュモンお父さんから、標的をヒョウアザラシに変えたシャチにアッサリと食べられてしまったのでした。
「さすがに今日は、あぶなかったね」と、晩ごはんを食べた後で、デュモンお父さんがしみじみ言った。
アデリーちゃんは「お父さん、お母さん…助けに来てくれてありがとう」と、あらためて両親に感謝しました。
そして、「言いつけを守らなくて、みち草をしてごめんなさい」とあやまった。
デュモンお父さんと、デリーお母さんが笑いながら、「これからは、気をつけるんだよ」と優しくアデリーちゃんの頭をなでてくれました。
アデリーちゃんがお布団の中で、今日の出来事を思い出すと、涙があふれてきます。
南極の自然の中には、キケンなこともいっぱい。
『これからは、もっと気をつけよう』と考えているうちに、アデリーちゃんはいつしか夢の中。
今日はあぶなかったね、アデリーちゃん。
明日は、楽しい日になるといいね。
おやすみなさい、アデリーちゃん。
ゆっくり休んでね。




