アデリーちゃん空を飛ぶ
アデリーちゃんは、今日も元気いっぱいです。
綿羽も生えかわり、からだも大きくなってきました。
アデリーちゃんは朝ごはんを食べると、「お母さん、遊んでくるねー」と、巣を飛び出していきます。
海岸に向かって走りながらも、アデリーちゃんは局長さんから聞いた、お空を飛ぶ話が忘れられません。
『そうだ…海神ポセイドン様に、お願いしてみよう』とアデリーちゃんは思いつきました。
『一人で深いところまで潜ったらダメよ!』と言う、デリーお母さんとの約束を破って、アデリーちゃんは海の底にある神殿にやってきました。
「海神ポセイドン様〜。アデリーのお願いを聞いてくださ〜い!」と神殿にある祭壇にお祈りをします。
すると、祭壇の奥から、おごそかな声が響きわたり、海神ポセイドン様があらわれました。
『これ、アデリーよ。子どもだけで深海に来てはいけないと、母親に言われたであろう』と、海神ポセイドン様がアデリーを叱ります。
「ごめんなさ〜い」とアデリーちゃんは素直にあやまり、「でも、局長さんのお話を聞いて、ガマンができなかったの」と、短い羽をバタバタさせて、海神ポセイドン様にお願いをした。
「ぼくも、局長さんみたいに、お空を飛んでみたいよ〜!」
海神ポセイドン様は、『やれやれ、この時期になると、必ず同じ願いを言うものが出てくる』とあきらめ顔で、『そなたが思うほど、よいことばかりではないぞ?』とアデリーちゃんに忠告します。
『それでも、お空を飛びたい』と言うアデリーちゃんに押しきられ、『1日だけじゃぞ!』と、アデリーちゃんに空を飛ぶ魔法をかけてくれました。
ーーーーーー
地上にもどったアデリーちゃんは、さっそく海神ポセイドン様からさずかった魔法で、お空に飛び上がりました。
そして、『バタバタ〜 バタバタ〜』と小さな羽を、けんめいに動かしてお空を飛びました。
すると、アデリーちゃんの横に、局長さんがやってきました。
『スイー スイー』と局長さんが優雅に飛ぶ横を、アデリーちゃんが『バタバタ〜 バタバタ〜』とつづきます。
「どうだい?アデリーちゃん。お空は気持ちいいだろ〜!!」と言って、スイーっと飛んでいきました。
『バタバタ〜 バタバタ〜』と小さな羽を一生懸命に動かしますが、局長さんは、あっという間に見えなくなってしまいました。
それでも、空から見る海は、太陽の光を反射して、宝石のようにキラキラと輝いています。
しばらく飛んでいると、アデリーちゃんによく似た模様のツバメが、大きな翼を優雅にはためかせ、『スイー スイー』と飛んできました。
「何だ〜?この太ったツバメは!」と、ツバメ達がアデリーちゃんのまわりを、笑いながら飛びまわります。
それでも、アデリーちゃんは初めての空を楽しんでいました。
しかし、ずっと空を飛んでいたアデリーちゃんは、だんだんお腹がすいてきました。
『お腹がすいたな〜』とまわりのツバメ達を見ると、口いっぱいに虫をくわえて、『おいしい おいしい』とモリモリ食べています。
『え〜?』と、アデリーちゃんはおどろきますが、ツバメ達は、いっぱい虫を食べて大満足です。
アデリーちゃんも、ためしに虫を食べてみますが、「ペッ ペッ」とすぐに吐きたしました。
『何なんだ〜!このマズいご飯は?…』と、お腹がすいたアデリーちゃんは泣きそうになりました。
アデリーちゃんは、デリーお母さんが作るご飯が恋しくなって、お家に向かって『バタバタ〜 バタバタ〜』と小さな羽をはためかせました。
しかし、南極から吹いてくる風にジャマをされて、なかなか前にすすみません。
『バタバタ〜 バタバタ〜 バタバタ〜 バタバタ〜』
アデリーちゃんは、デリーお母さんとデュモンお父さんに会いたくて、一生懸命に、小さな羽を動かすけど…やっぱり前にはすすみません。
とうとう、アデリーちゃんは泣きだしてしまいました。
「エーン エーン。お空はキレイだけど、やっぱりボクは海がいいよ〜」
すると、海から優しく海神ポセイドン様の声が聞こえてきました。
『アデリーよ、わかったかな?空には空の、海には海の厳しさがあるんだよ』と言うと、『さあ、アデリーは海に戻りなさい』と、アデリーちゃんの魔法をときます。
海に戻ったアデリーちゃんは、『スイー スイー』と飛ぶように海の中を泳ぎます。
まわりを見ると、魚たちのウロコが、光に反射して、キラキラと輝いています。
アデリーちゃんはうれしくなって、「海神ポセイドン様〜。海のキラキラを見つけたよ〜」と叫びながら、『スイー スイー』とお家に帰っていきます。
海の中なら、アデリーちゃんはなんだってできちゃう。宙返りをしたり、旋回したり。
その背中を、海神ポセイドン様が作る海流が、やさしく後押ししてくれました。
その日の晩ごはんの時、アデリーちゃんはデリーお母さんと、デュモンお父さんに、大冒険のお話をしました。
一人で神殿に行ったことは叱られてしまいましたが、二人はアデリーちゃんのお話を楽しそうに聞いてくれました。
その夜は、アデリーちゃんは少し興奮して、なかなか寝つけませんでした。
でも、局長さんや、ツバメさんとお空を飛んだこと、あらためて感じた海のキラキラを思い出しているうちに、いつしか夢の中に入っていきました。
おやすみなさい、アデリーちゃん。
明日も、楽しい日になりますように。




