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(短編集)これは昨今流行りの婚約破棄にまつわるお話の一つでございます  作者: 田子倉


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貴方が私を悪とおっしゃるのなら

異世界転生後にガチフォーマルな貴族世界にエキサイティングでフレンズィーなダンスと音楽を広めようとした、ヴィラン顔美幼女が17才の成人目前の美女になるまでの成長記録です


肩こり防止に、某ランドのフレンズィーなハロウィンダンスのゲスト向け振り付けをやってて思いついた話です

途中の歌詞はかなり変えてます、そして歌って踊れるかは微妙です

「ウィニフレッド・フリーデンっ!」


新年を寿ぐ会場で私、ウィニフレッド・フリーデンの婚約者であるサイラス王子が大広間に響きわたるような大声をぶつけてきた


「其方は聖女ベレニケ・カーモディに易く危害を加えるような者の血を王家に入れるわけにはいかない!」


新しい年を迎えた喜びを分かち合う為のパーティで、王国内の重鎮達を集まる場で第二王子たるサイラス王子は会場の視線を一身に浴びている


「よって私はウィニフレッドとの婚約を破棄し、聖女ベレニケと婚約する!」


この瞬間のサイラス王子は威風堂々と例えるに相応しく、正義の名を冠していると言っても良さそうな主役然でいたことだろう


ーだけど


(私はこの瞬間を待っていた)


私は口端を上げて微笑みをたたえる


(貴方が私を「悪」とおっしゃるのなら、ヴィランに相応しい最高の気高さをお見せ致しますわ!)


現時点の主役であるサイラス王子を前にして、ドレスの下でさりげなく足の配置を変えてから両手をへその上で重ね、スッと背筋を伸ばして、歯が見えない程度に口角を上げる


『はい、承りました』


内面に潜む後ろ暗い思惑すら感じさせない程の営業用の笑みで


『私ウィニフレッド・フリーデンは、サイラス第二王子との婚約破棄に同意致しましょう』


私は場を制するような声量でサイラス王子からの勝手な言い分に同意する


「なっ!?」


私の予想外な反応を見たサイラス王子は急に驚いたような表情を表に出したが、すぐにその動揺を隠して


「ならば!ウィニフレッドが聖女を害した罪で…『ただし』っ!?」


自身の思惑にとって一番邪魔な私と言う存在を社交界から消そうと発言を続けようとしたが、私はこの日の為に長年鍛えてきた声量と声音でサイラス王子の言葉を打ち消し


『あらぬ罪をかけられ断罪させる予定はございません』

「なんだとっ!」


サイラス王子からの一方的な言い分を塗り替えるように、私はへその上で淑やかに重ね合わせていた両手を大きく広げた


ダーダンタッ!


瞬間、lalalalala…と室内向けの比較的軽やかな演奏をしていた音楽隊達が、手持ちの楽器を足元に置いていた楽器に持ち変えて、唐突に最新の曲のイントロを流し始めた


「なっ!?」


穏やかな室内曲から突然の最新の楽器を使った大音量のイントロに、サイラス王子とその取り巻き達は驚いているのを無視して、私は曲に合わせて両手を広げたまま視界に入る人達の方へ視線を向け、そしてゆっくりとそして優雅にお辞儀をする


ダーダンダッダッ!


とAメロの始まりと同時に一番最初の振り付けを決めた時


(やっと…やっとこの瞬間が来た!)


私の心は今までにない高揚とそしてあり得ない程の冷静さを抱えていた



「うそ…なに?このかお…?」


5歳になったある日の朝、私は朝の身支度をする為に召使から差し出された鏡を覗き込んで驚いた


(別人になってる…)


鏡を覗き込んでいる幼女は、平凡な日本人特有のうすらぼんやりとした無表情顔を張り付けていた今までの私とはまったくの別のものだったのだ


(同じ黒目、黒髪なのに…こんなに違う)


その時の私は生前の自分の死因や、幼女の境遇、私が固まっているせいで身支度が整えられなくなった周囲の召使達が困っている様子など、まるっと無視して鏡の中の自分をまじまじと眺めていた

そうしてその時の私の脳裏に響いていたのは


ダーダンタッ!ダーダンダッダッ!


と始まるとある振り付けと音楽だけだった


(この顔でならあのダンスが映える)


艶やかに流れる癖一つない長い黒髪

白い肌に鮮やかにのった赤色の唇

舞台映えしそうなほどに高い鼻と彫りが深い頬

意志が強そうな真っすぐの眉

そして一番はクッキリと目尻が上がり強い眼差しを放つ両目


(フレンズィーでダーディーなあのダンスが似合う!)


あの、5人の男女で構成されたダンサー達が登場した時からずっと目が離せなくなるパレード


それはとあるランドの期間限定のシーズンにしか使われない音楽とダンス

普段は明るくて軽やかで爽やかな音楽が使われているのに、あの秋の色が濃くなった時期だけは違う

暗闇に潜むヴィラン達が表だって躍り謳う事が許された熱狂の日々!

先頭を行く選ばれし5人のダンサー達は、美しく気高く妖艶な空気を纏いながらも堂々と、華麗なパレードを従えて只の凡人だった私の前を踊り通り過ぎていった


…のを思い出していた


(フレンズィーなハロウィンパレード!)


あの方々が凡庸だった私の心に残していった熱狂的な余韻は、異世界の幼女になってしまった私の胸の内に今なお燻っている

鏡に映る顔はまだ幼い、目に映る手はまだ小さい、体力がないせいで偶に足をふらつかせる時もある

ーだけど


(このヴィランな美顔で、私はあのパレードを率いて見せるわ!)


その瞬間、私は一介の淑女候補生に過ぎなかった幼女から、あのパレードのトップを突き進むフレンズィーにエキサイティングなダンサーになろうと決意したのだった


「その日からウィニー(ウィニフレッド)は変わった」


と、両親を始めとした身内や知人達は、かつては幼女だった私が17才になった今になっても言う時があるくらいに、私はダンスと音楽を極めべく動き始めた


ラジオ体操から始まった肉体改造の為のトレーニング

それまでの好き嫌いや美食を完全無視した栄養バッチリの食事管理

主流な音楽を習う事でこの世界に足りない楽器や音楽要素を拾い上げる作業

気高いヴィラン達に相応しい仕草と教養の為の学習

一緒にダンスを踊ってくれる未来の同志を探すべく、副産物で生み出した体作りの為の料理のレシピ、新しい楽器や楽譜を片手に流行にして社交を広げて…


その時の自分が持ちえた財力、権力、知力、体力、そしてフレンズィーなダンスに見合うほどの気高き美貌をフル活用して下地を作り上げていく

当然、それは公爵位にあった父の立場や社交界の花だった母の伝手、公爵家の嫡子である兄やその友人達からの協力を利用したとて、容易い事ではなく困難な日々だったと思う


何せ家には当然の如く召使がいるような、普段着ですら前世のドレスコードも真っ青なほどにフォーマルな世界感にいて、あの記憶の中にあるフレンズィーな音楽とダンスとパレードが世界情勢的観点から見ても十分に異端だったのは、お貴族様育ちで世間知らずな幼女の私でもよく分かっていた


この世界のダンスは全体主義で皆との調和を産む要素が多い

パーティの度に踊る貴族だって男女が1対1で踊るワルツがメインで、多数で踊るとしてもカドリールやポロネーズばかりだ

年に2,3回の春や収穫の祭りとかで踊る平民達だってマイムマイムみたいな手に手を取った結束を固めるような民族舞踊系の踊りが主流

そんな世界感でアグレッシブでエキサイティングでフレンズィーなあのパレードの、個人主義なようで同じ高みを目指す各個人の意思やテンポが揃いきったダンスの構成を作り出すのは難しい


(でも今やらなくていつやるのよ?)


思い立ったのは幼女期だったのに、私の意志は固かった


(次に生まれ変わる時に、もう一度この美貌を持ち得るなんて想像できないもの)


あのパレードの中心にいたあの女性の気高く美しいダンスを、ヴィランな美貌をたたえた自分の手でこの世界に作り出せるのならと思えば様々な苦労が想像出来た、けどいっそ本望なくらいだったのだ

当然想像以上の苦労はあった

それでも一つ一つ課題を消化していく度に胸が躍ってしょうがなかった


(この世界の皆にもあのフレンズィーなダンスを魅せたい!)


この一心で私は生きてきたのだ



そんな日々の中で凡その身内や重鎮達が御子息ご令嬢との顔合わせが終った頃、7才になった私は王国の第二王子サイラス様の婚約者となり


「お前みたいな悪者の顔なんか嫌いだ」


と初の顔合わせでサイラス王子本人から、婚約者である私に向けたと思えない程の暴言を聞いた時


(あら私ったら、あのゲームのキャラだったのね?)


切れ長で賢そうな目を持った幼女から、気高き美貌を持った美少女になっていたこの私こそ、かの悪役令嬢「ウィニフレッド・フリーデン」だとようやく思い至った

この世界の下地がとある乙女ゲーの世界感だと気がついたのもその時だった


(もし本当にこの世界があのゲームの世界なら、私は間違いなく断罪されるわねぇ?)


生前に少し齧ったゲームの中で


(確か婚約者のサイラスは時の聖女と交友を持ち、二人の慎ましい交友に嫉妬した「ウィニフレッド・フリーデン」は聖女を害し、それにより王子より婚約破棄と処罰を言い渡され断罪される)


のがゲームの筋書きだったはず


そして私と王子達が学園の卒業を目前に迎えた17才の新春、次期国王の発表が行われる王城での新しい年を寿ぐパーティーにてウィニフレッドは、在学中の聖女に対する虐めを王子から問いただされ、その罪により罰せられるのだ


(あらあらまあまあ~)


昔の凡庸なままの私であったら、ゲームを思い出したその日から理不尽な罪で断罪されるであろう未来の自分の境遇に嘆きながらその日を迎えたかもしれない…だけど


(素敵だわ!)


既にその時の私は前世で見たフレンズィーなダンスに魂を揺さぶられていた後で


(その時こそ最高の舞台に出来るわよ!)


王家や多数の重鎮が集まるパーティーで


元の身分にそぐわない程に立身出世を果たした時の人でもなく

前年で一番最高の流行を生み出した重鎮の奥方様でもなく

年の暮れに行われたデビュタントで一番映えた美男美女の若者達でもなく


(私がこの世界屈指のヴィランだったなんてお誂え向きなの!)


この世界が舞台な物語上で、この私こそが一番のヴィランとして正式に扱われるその瞬間こそ、観衆の視線を私一人だけに向けられるのだと思えば


(最高のヴィラン扱いをされるからこそ、フレンズィーなダンスは一等に映えるのよ!)


逆に腕がなると言うもの

その日こそが我が人生で一番ゴージャスでフレンズィーな夜を迎えられると予感したら、もうワクワクが止まらない

だからこそフレンズィーなダンスが最高に相応しい夜を演出すべく、私はその日から一層筋トレや準備に力を入れるのは当然の話だった


たった一時の、しかし人生で一等に最高な夜の夢の為に、私はサイラス王子からの不興など拭うつもりなど一切ないまま、只管フレンズィーなダンスの為の音楽やダンスの下準備をしてきた

それは王国中の貴族の子息令嬢が通う学園に入学してからも変わらない

むしろ学園こそフレンズィーな同志達を集めるに相応しい場だったとも言える


練習用の大きな姿見を設置した練習場の設置

動きやすいドレスや紳士服や靴を考案し試着がてらの宣伝

前年までに開発してきた楽器や音楽に慣らしてきた音楽隊の誘致

ダンスが苦手なご子息ご令嬢を指導すると言う目的で学園内でのクラブを開設

いかなる不測の事態でも冷静に対応出来る程に精神性を高める為の礼儀作法の講義の改変

体力の向上の為のトレーニングや食事療法からなる体質改善などを騎士学科や社交界に向けて発信する事で、それらを老若男女問わず世間に浸透させて…と


若さがあるからこそ持て余してしまう体力や燻る意思力を発散させる場を学園内に用意して、私はコツコツとフレンズィーなダンスに魅入られし若き同志達を集めてきたのだ


そのおかげか私が入学しダンスクラブを発足して以降、デビュタント・ボールに参加したご子息ご令嬢の振舞いは目を見張る程に向上していると大人方からも高評価を得ている


つまりは私が今すぐにでも発信したくて止まないフレンズィーなダンスを、共に極めてきた潜在的な同志達が水面下で増えてきているというわけだ

勿論、幼少期から共にモダンな音楽とダンスの啓蒙活動をし、学園のクラブで私と共に体と心を仕上げてきた同志達には、今夜のサイラス王子からの断罪劇を皮切りにして今までの努力の結晶を発表する場だと伝えている

更に言えば両親だけでなく、学園関係者、パーティに負わす重鎮の皆様、パーティの警護をする騎士団の皆様、バックミュージック担当の音楽隊、それから王を始めとした王家の方々には、既に私達がモダンダンスの発表する事を報告し、各方面からも協力を得ている


(フレンズィーなダンスパレードはゲストの皆様の御協力があってこそだもの!)


あのランドでも事前にパレードの時間が決まっていて、キャスト様方の十分な警備がされた上で、規律が整ったゲスト様達の前で最高のダンスが行われていたのだ


(だからこそ私もフレンズィーなダンスの初披露に相応しい最高の場を整えなければならないのよ!)


事前の各方面に向けた報告や協力、入念な準備が無くてはフレンズィーなダンスパレードは完成されないのは承知の上で、私はあの日からずっと人生の全てを、今夜のこの熱狂的な瞬間の為につぎ込んできた


ダーダンダッダッ!


大広間の雰囲気を一気に変えた音楽共に、私は顔の前で交差した腕を大きく回して左右に広げる


ダーダンダッダッ!


今夜、この瞬間の為に、私は生きてきたのだ!


(さぁ!皆様にも最高に最上級のフレンズィーな夜を解き放ちましょう!)



ティティティンッティッティ


一瞬の間を置いてから軽やかなベルリラの音が響く


「I wish you a Happy New Year.」


(ハロウィン用のダンスだったけど)


ここにはハロウィンが無かったから敢えて新年を祝う歌詞にしたのが懐かしい


「Come to new year and feel it.」


私がフレイズィーなあの曲を思い出しながら、謳いながら、踊り出した時


(良かった)


自分の背後には複数の気配を感じていた


「dazzling our dance is Beauty, fantastic! 」


(皆も踊れている)


音楽と共に背後にいる同志達が風を切る音を聞こえてくる


「The ultimate year so pump up that vitality! 」


(場に委縮してないようね)


サイラス様の一方的な口上に惑わされずに同志達は私と同じ舞台に立っている


「Pump up that vitality! 」


(踊る為の靴のヒールは低い)


今まで練習してきた通りだ、いやそれ以上かもしれない


「Pump up that vitality! 」


(だけど背筋は真っすぐに胸を張って)


揃う足音と衣擦れの音が音楽の陰で微かに響いている


「Immaculate vitality!」


(そうすれば貴方達はいつだって)


特注の靴や服は余計な音をたてさせない


「Oh! This new year, we'll make it right 」


(気高く美しく見えるのよ)


クルリと回ってみれば同志達の呼吸一つ乱していない笑顔がチラリと見れた


「With the music and dancing step!」


(腕の動きを束縛しないドレスなんだから)


思いっきり空を切る腕の音が聞こえる


「This is a twist of ardor and enthusiasm」


(存分に動きなさい)


動き一つ乱れない高みにあるダンスを魅せつけて


「Give your vitality DAY AND NIGHT!」


(この為に全部準備してきたのよ!)


ずっとずっと「フレンズィーなダンスを!」と唱えながらも


結局は保守的なこの世界で長い裾のドレスを足首より短くなんて出来なかった

音楽だって電子音源無しの大人しめなクラシックアレンジだし

躍り慣れたワルツやカドリールを下地にした優雅な振り付け少し弄っただけで、かのキッレキレなダンスとは程遠い

足を大きく上げたりガニ股になったりなんて、以ての外過ぎて絶対に許されない

ここで踊ってくれる同志だって私を含めてたった5人

…だけど


『さあ皆様!ここからが新年を祝うダンスの始まりですわ!』


そう私が拡声器代わりの大声量で大広間にいる人達へと声をかけると


ンダッ!ンダッ!タンタター!


音楽隊が奏でる音楽が軽快なテンポへと変わり、健康増進の為にと幼少期よりずっと流行として広げてきた軽運動の曲へと変化した


『さあ両手を上に!』


最高の笑顔で私が両手を上げれば


『星空を東西に動かして!』


王を初めとした大御所様方が揃って両手を上げて下さった


『腕を左右に地平に広がる麦を刈って!』


ランドに来場したゲスト向けだったあの両腕を使うだけの簡単な振り付けを行えば


『東に太陽を!西に月を!』


サイラス王子以外の方達もここ数年で聞きなれた音楽に合わせて大きく腕を動かして下さる


『両手の星達を空へ放って!』


このダンスは私達、ダンスクラブの先鋭たる同志達だけでは成り立たない


『音楽に合わせて若々しく!』


(フレンズィーなダンスを見た後だもの、誰だって体を動かしたくなるわ!)


『震える両腕に抱いた炎を空に掲げてー!』


(あのフレンズィーなダンスにはゲストの熱狂が必要不可欠なのよ!)


大広間の皆も私達も両腕を掲げるダンスを踊る


(何てフレンズィーな一時なんだろう)


心は熱狂的になりながらも、体は冷静にリズムを刻んでくれる


『ありがとうございまーす A Happy New Year!』


大振りに両手を動かして踊って下さった大広間中のゲストの皆様に向けてお礼を言った後


ダーダンダッダッ!


音楽がまたあの特徴的なイントロへと戻る


「I wish you a Happy New Year.」


大広間の真ん中にいた私達が


「Come to new year and feel it.」


ダンスをしながら壇上の方へと少しずつ進む度に


「dazzling our dance is Beauty, fantastic! 」


大広間の灯りも少しずつ消されていく


「The ultimate year so pump up that vitality! 」


神秘的にも思える暗闇が


「Pump up that vitality! 」


音楽とダンスに合わせて大広間を包んでいく


「Pump up that vitality! 」


暗闇の中で警備の騎士団方が動いているのが目の端に映って


「Immaculate vitality!」


(警備を厚くして良かった)と冷静に思う


「Oh! This new year, we'll make it right 」


大広間の視線を私達に集める


「With the music and dancing step!」


音楽と私達が奏でる足音と衣擦れだけが大広間を支配した


「This is a twist of ardor and enthusiasm」


その瞬間


「Give your vitality DAY AND NIGHT!」


サビの終わりと共に(まるでスポットライトのように)第一王子であり王太子であるメルヴィル王子のみがライトアップされる



「 … 」


フレンズィーな音楽は一斉に止まり

それまで大広間全部の視線を集めていた私達ダンスクラブの先鋭達は、たった一人直接照明でライトアップされた壇上のメルヴィル王子の方へと手を掲げ、全ての視線を壇上へと集めた

そして私達は静かに優雅にカーテシーをしながら頭を垂れる

それに倣うように大広間中にいる方達も礼をしているのか、耳には微かな衣擦れの音が入ってくる


「皆、表を上げよ」


フレンズィーなダンスで生まれ出でた熱狂はどこに消えたかと言わんばかりの、静寂の中で暗闇の中から王が声を発せられた

言われるがまま頭を上げれば、メルヴィル王子が立っている唯一の灯りの中へと王や王妃が入っていくのが見えた


「次期国王は」


皆が一斉に頭を上げたのを確認したのか


「以前より王太子と決めていた第一子のメルヴィルになる」


大広間内を軽く見渡した後に王は言い切り、更には


「そして慣例通りにメルヴィルの婚約者には神殿より聖女ベレニケ・カーモディを配する」


と繋げたのだ


「なっ!ベレニケは…私の!」


緊張を伴う程の静けさの中で、父親である王の言葉に唯一難を示したのは壇下にいたサイラス王子

サイラス王子の背後にいた取り巻き達は何を慌てているのかせわしない衣擦れの音が聞こえ始めている


「サイラス、私が入学前に頼んでいたのは「学園に通う聖女ベレニケの護衛」であった。それを自ら破るとは…な」


どこか心労が隠し切れていない声音で王は告げる


(本当にどこをどう勘違いなさっていたのでしょう?)


何を勘違いしたのかサイラス王子ときたら、兄であり嫡子でもあるメルヴィル王子の許嫁の聖女ベレニケ様が学院入学して以降、ベレニケ様の周辺をウザく纏わりつき、コソコソと嗅ぎまわっては、一方的な秋波を送って…と、王に頼まれていた護衛一つすらまともに出来ずにご迷惑ばかりをおかけしていたのだ

しかも自身の後ろ盾になるはずの婚約者である私を放り出して…とまぁ…呆れるほどのハズレ役満ばかりを揃えて下さったわけだ


「しかし私とて次期国王の候補です、私がベレニケを娶っても良いはずだ」


変な自信に溢れた発言をなおも続けるサイラス王子を見て、王だけでなくメルヴィル王子も揃って溜め息を吐かれた


「己の勝手で王命の一つすら守れない者に国王の座は座らせぬ」

「せめて王弟として王家に籍を残すか、公爵の位を贈るかと思っていたのだけどな…(怒)」


王家のトップ2からいよいよ明確な社交界からのサイラス王子の排斥を示唆するような言葉が出てきてしまっている


(あらら…これはまた随分とお怒りの様で)


何せメルヴィル王子とベレニケ様は相思相愛で有名だ

それなのに、勘違い野郎なサイラス王子が一方的にベレニケ様に言い寄っているのだ。メルヴィル王子が怒り心頭になるのは至極当然


(前世のゲームもいかにして残念王子サイラスの魔の手からベレニケ様が逃げきって学園を卒業して、メルヴィル王子とくっつけるか~な内容だったしね)


因みにゲームの中のウィニフレッドもこれまた残念系悪役令嬢で、学園入学時に「ベレニケ様を正妻にしたい」と言い出したサイラス王子の願い事を叶えてあげた上で、せめて正規の婚約者としてサイラス王子の側妻の座には居座ろうとしてしたお馬鹿でお邪魔な雑魚敵キャラだった

そしてメルヴィル王子とベレニケ様の交際を邪魔する為に、ウィニフレッドはベレニケ様を実家のコネと金を駆使して虐めぬいては妨害し、最終的に17才の新春にサイラス王子ごとウィニフレッドもメルヴィル王子から断罪されるわけだ


(にしてもほんまもんのサイラスは女の敵だったわ)


前世からの感性を抜きにしても、アレはマジで無理な物件だった


入学最初の年にサイラス王子は「ベレニケを妻にして王になる」と言い放ってきたので、私は即刻王家にその発言と学園での行動を報告

当然、私からの報告を聞いた王家は調査した上で事実確認後、サイラス王子に「王家どころか貴族止めさすぞ」とでっかい釘を刺しているのだ

それでも残念な思考力しか持ち合わせていないサイラス王子は懲りなかった

接近禁止を食らっているはずなのに、ベレニケ様を言い寄るだけでなく痴漢行為もしていたらしい


ベレニケ様からの「サイラス王子からの痴漢行為が辛い」と泣きの訴えを最初に聞いた私は当然怒った


(一回目の報告時点で、ダンスの合間で女性にも防衛術をと学園のクラブ内「女性向け護身術」の臨時講義を打ち出してからは学園内の痴漢、セクハラ案件が減ったって聞いた時は「世は世紀末かよ」って思ったところに、聖女様のケツ触って痴漢だもんなぁ~)


ハッキリ言って罰当たりも良いところだ

あからさまな性的接触ではなくスルッと触るだけだったらしいが、気持ち悪い事には変わらない

勿論、速攻王家にもう一度その旨を報告し、再度王とメルヴィル王子双方からの怒りの鉄槌がサイラス王子に落ちた

してその時のサイラス王子の言い訳ときたら


「ベレニケ様の二の腕や尻はモチモチとして気持ちよかったからタイミングを見て何度も触れた、ウィニフレッドの体はどこもかしこも硬くてかなわん」


とまぁ…メルヴィル王子を筆頭とした王家、フリーデン公爵家、ベレニケ様所属の神殿、三方に喧嘩を売るような事を悪びれもせず易々と言ってのけたわけだ


(まったく私の体が固いってダンスで少し一緒に踊っただけでしょうに、筋肉の柔さ舐めんなよ)


その発言があった瞬間、サイラス王子の学園退学、私とサイラス王子の婚約白紙、フリーデン公爵家の後援の取り消し、神殿祭事からの永久追放、と斜め45度の役満を決め散らかす事になったわけ

んで同時にゲーム雑魚敵キャラだったサイラス王子の取り巻き達の身辺調査は終了してるし、この新年の祝いの席の後に二度目の意識調査が開始されて、その結果次第で良くて村八分、最悪サイラス王子と似た様な処分が降りるだろうと見なされている


(あの時点でサイラス王子が成人前にどっかの塔に幽閉は決まっていたわけだけど、神殿を怒らせたせいで結婚どころか病気治療に葬式や埋葬すら出来なくなったんだから、前世の村八分より大分酷い処分だわね)


あんなクズは例え死後であっても天の神様すら目の前に置いて裁きたくもないだろう

それに前世の父が言ってた


「ほっとくと被害が勝手に広がる火事と葬式(病気感染防止)以外は手を出さないのが村八分だ」


って

多分近い未来サイラス王子が幽閉された塔が火事になったら、誰ともなく脇から薪がくべられて中身がこんがりと焼けあがるのを待ってそうな気がする

そんな文化圏から放逐された泡沫な処分が落ちるとはまだ知らないサイラス王子は、大広間の真ん中で拳を握りしめ震えているのが目に見えるほどにわかった


「兄上はズルい!」


体と一緒に声を震わせてサイラス王子は声を上げる


「俺より先に生まれたってだけで…」


まぁ…確かに先に正妃の腹から男児として生まれたから兄は王太子に選ばれたって現実だけは同情してやろう


「王の座もベレニケの柔い体も手に入れて!」


それでもサイラス王子がどうあがこうとも彼本人に貴族の資質が身についていなければ意味がない、何なら人として性根が腐りきっている


「俺にはこんな男女を宛がってきて!」


と(後ろ盾だった)私に向かって指を指す無礼もありえない、人としても論外だ


「俺から全てを奪いやがって!」


どこでそんな汚い言葉を覚えたのかしらん?取り巻きと行った平民街の娼館かしら?


「許さない!」


そう言いながら脇にいた取り巻きがソっと差し出してきたナイフを手に取って


「殺してやる!」


サイラス王子は壇上へ駆け出した、が


(遅い)


1,2,3っとステップを踏んで


(男性貴族の必須課程をちゃんと受けてなかったのかしら?)


私はサイラス王子との間合いを一気に詰める


「なっ!?」


4、と私はナイフを持ったサイラス王子の手を捻ってナイフを落とし


「あ痛っ!」


5,6と体を落としてからサイラス王子の背後へ周り込んで


「痛だだだだっ!」


7で捻り上げた手を後ろ手にしてから体ごと床に叩きつけて固定


「痛っあっ!」


8で床に落ちたナイフを警備している騎士団へと蹴って開いた手元から離す


『制圧完了』

「離せぇぇぇ~っ!」


私の膝下で押さえられたデカいだけの体が無様な泣き声を上げている

背後では警備していた騎士団達が取り巻き達を取り押さえて失神させたのか、一瞬の衣擦れと呻き声の後に静かになった


「お前は俺の婚約者だったろう、破棄されたからと嫉妬でこんな事したら許されないぞ!」


このままではどうにもならないとようやく気付いたのだろう、サイラス王子は体を抑え込んでいる私に声をかけてきた


『私達の婚約は既に白紙になっております』

「この手を離してやれば、たとえお前が相手でも結婚しても良いぞ!」

『王より沙汰が下されるまでは離しませんよ』

「嫉妬か、悋気のせいでお前はこんな事を!」

『サイラス様との初の顔合わせをしてから、一度も嫉妬した事がございません』

「嘘だ!俺への嫉妬が無くて、どうしてお前は学園のクラブでベレニケをあんなに虐めぬき、痩せ細らせたのだ!」


確かにベレニケ様は学園に在学中、私が設立したダンスクラブに在籍しダンス特訓を受けていた


『あのクラブはダンス上達の為のもの、ベレニケ様を虐めぬいた記憶なんてございませんわ』

「練習中ベレニケはあんなに痛がっていたではないか!」


ベレニケ様が当クラブに通われていた頃には既にサイラス王子は接近禁止の沙汰が下っていたはずなのに、どこでソレを見ていたのだろうか?


(まさか盗撮?いやそんな技術はまだ無いはず…望遠鏡かなんかで覗きを?)


(床を這う体を抑えつける力はそのままで)一瞬だけ思考を巡らした時


「私にとってはウィニフレッド様のダンス特訓は、単純に痛みを伴うものだっただけです」


そう言いながら美しく着飾った聖女ベレニケ様が、メルヴィル王子を照らす灯りの中へと入ってくる


「見習いの騎士が訓練で手に豆を作り潰すように、刺繍を始めたばかりの淑女が刺繍針を指に刺すように、ダンスが不得手だった私も相応の痛みを伴ってウィニフレッド様のダンス特訓を受けていたのです」


(ああ…懐かしいわ)


学園内のダンスクラブの発足直後に、ベレニケ様がダンスクラブの門戸を叩いた日を私は思い出した


「メルヴィル様とのダンスを美しく踊りたいのです」


と初々しくおっしゃる姿は非常に愛らしく眩しいものでしたとも

しかし彼女にとってダンス特訓は決して楽な事では無かった

元平民の神殿育ち、幼少期からの淑女教育のおかげで非常に品がよろしい方でしたが、元より淑女兼王妃教育、神殿の運営や祭事など仕事が多い方で圧倒的に練習時間が無かった、しかも


胆力、持久力は下手な淑女より全然あったが、柔軟性とリズム感が死んでいた


柔軟の為にベレニケ様を床に座らせて少し背中を押せば


「痛だだだだだぁ~!」


軽くステップを教えてみれば、何故か自分で自分の足に引っかかって


「う、わっ!と、ギャン!ブベっ!」


と何もないところで一人で転ぶ…と、稀に見ないほどのダンス劣等生だった


足を踏まれるどころか、ダンスステップをする度に転ぶ彼女に巻き込まれて一緒に顔面を床にぶつけた回数は数知れず

当然鼻血が出たり、突き指、捻挫、全身のあちこちに青タンや痣が出来る日も、酷い時は歯が折れた事もあった

でもそこは聖女様の癒しパワーでノーカンにして、只管練習してきたあの日々が今や懐かしい

当然ベレニケ様も頑張って下さった

その頑張りの甲斐あって、門戸を叩いた頃は少しポチャ気味だった柔らかバディも、特訓が終る頃は出る所は出ているのにしなやかな筋肉で構成された完璧で究極の聖女様スタイルになっていた


(先日のデビュタント・ボールで踊られたお二人は素晴らしかったわ)


ベレニケ様の苦労が実って、メルヴィル王子の寄り添われるように軽やかにダンスのステップを踏んでいたベレニケ様のお姿を柱の陰から見ていた私は、マジで泣いた


デビュタント・ボールが終った日の夜、ベレニケ様やメルヴィル王子を筆頭に、ベレニケ様のダンスセンスの無さに苦労していた王家や神殿のお偉方が揃って、ダンスクラブの設立者で責任者である私に礼を言って下さった時は「苦労の甲斐があった」と思ったもの


(だからこそベレニケ様のあの努力を悪し様に言うお前は許さん)


「痛だだだだだっ!」


只抑えつければ良いはずなのに、つい余計な痛みが発生させるような抑え方しちゃった!私ったらいっけなぁーい!てへっペロ!


「ウィニフレッド様、後は部下が預かりますので、どうかお手を」


とサイラス王子を取り押さえたままの私の元へ寄ってきたのは、先年騎士団長になったばかりのフーベルト様だった

私の足元から拘束術が得意な部下へサイラス王子を預けたフーベルト様は、すかさず私の手を取り軽やかなステップで立ち位置を変える


(この人にも苦労したわ…)


何せフーベルト様も当ダンスクラブの臨時生徒だったのだ


(ダンスが壊滅的に出来ないからと、ダンスが必須なデビュタント・ボールを避けるために貴族から騎士になった方だものねぇ…)


それでも(ダンスセンスは無かったが)運よく剣捌きの方は天賦の才を持っていた様で、剣一つで着々と実績を積み上げて、気づけば副団長

しかし団長クラスに成れば、パーティに主賓として招待されたり嫁問題やら何やらが一気に勃発して、いよいよダンスが必須になってしまったそうだ

それでも何度か団長候補に上がれど「ダンスの一つも出来なくては…」と毎回拒んでいたら、前団長が泣き泣きフーベルト様を当クラブに連れてきて


「こいつのダンスセンスをどうにかして下さい、このままだと私が死ぬまでずっと団長をしなくてならなくなるんです!ウィニフレッド先生!」


と先生どころか只の学園の生徒でクラブ長に過ぎない私に向かって、初老に入りかけた前団長が自ら三つ指ついてお願いしてきたものだから、とっくの昔に成人していた彼を当クラブは臨時生徒として迎え入れたのだ


(このステップを踏ませるだけでも苦労したわ)


何せこの爽やかな好青年フーベルト様ときたら足が長すぎたし、力も強すぎし、大雑把すぎた


この人の一歩は、淑女の二歩

少し高めに片手を上げたつもりが、プランと淑女の体がぶら下がる

軽くクルリと回れば、淑女の足も軽く床から離れて遠心力を体感できる

そのくせ緊張しいで軽く握らなければならないはずの淑女の手を、うっかり剣を握る手でギッチリと握ろうとしたものだから、速攻止めさせた


おかげでずっと練習に付き合った私の指も何回か折れた、そこをベレニケ様の癒しパワーで無かった事にして練習を続けてここまで出来るようになったのだ


(最初は少しダンスが苦手な子を求めてクラブ始めたのに)


ほんの少し苦手だったダンスを、楽しくてフレンズィーな雰囲気でダンス好きにさせてから、競技ダンスレベルまで出来そうな同志を増やそうとしていた…はずなのに

先年までの当クラブきっての2大問題児が揃って「聖女」と「騎士団長候補の副団長」という世間では非常に高名な二人達だったから、同期として入部した子達はしばらく萎縮と恐怖の中で練習していたのは本当に不憫だった


(まぁ…二人が下手すぎて、逆に「アレよりマシ」って皆がやる気が出たんだから怪我の功名だったけどさぁ)


私自身が本当に怪我まみれになるとは思わなかった

二人の練習に付き合って怪我ばかりしている私を見て、世の女性がいかにか弱い存在かと認識しまくったフーベルト様が、同じ時期にサイラス様から痴漢行為されていたベレニケ様の境遇を不憫に思って「女性向け護身術」の内容を実用レベルにまで洗練させて、今やナイフを持った凶漢(サイラス王子)を私一人で拘束出来たのだから、本当に塞翁が馬、禍福は糾える縄の如しってやつだなとしみじみ思う


「今後はあの様な無茶はしないで下さい」


コソリとフーベルト様が囁きかけてくる


『勿論ですとも、今回の件は予定調和でしたしこれを最後に致しますよ』


そう何度も危険物を持った凶漢なんぞ相手取りしたくない、私はフレンズィーなダンスを愛するだけの一般的な淑女だもの


「絶対にです、王家から頼まれても断って下さいね」

『王家とてそう何人もあの様な不埒モノを世に出したりしないでしょう』


そう、今回のサイラス王子の婚約破棄の宣誓から断罪劇までの流れは、最初から仕組まれていた事だった


王家も見放すレベルのサイラス王子から、如何にして二心持つ貴族達の思惑から外させるかと考えあぐねた果てに、今回のフレンズィーなダンスパーティーを準備してきている


だから通年通りに新年を寿ぐパーティーの式次第を完全無視して、己が欲の為に婚約破棄しようとしていたサイラス王子の杜撰な計画はそのまま見逃して

婚約破棄された私が、サイラス王子が生み出した空気を食うように長年同志達と練習してきたダンスを披露し

ダンス演出を利用してメルヴィン王子を視線を集中させてからの、正式に次期国王の発表


という流れを作れば、後はサイラス王子が勝手に貴族の籍から外れていくだろうと考察した結果がアレ


何なら取り巻きの一人が隠し持っていた小さなナイフ「だけ」式典前の持ち物検査でわざと見逃しているし

ダンス中にライトが消された暗闇の中で、警備の騎士団方はシレっと人数を増やし警戒態勢をとっていたし

サイラス王子や取り巻き達がいた周辺の貴族達は荒事に慣れている方達ばかりで、人質にとられるより先に拘束できる方々で固めていた


(それにメルヴィル王子の次に命が狙われそうだった私は、騎士団長お墨付きの拘束術をマスターしていた)


…というのが実情だった


(最後だけはお役にたって下さったわね、二度とお会いする事は無いでしょうけど感謝致しますわ)


この件で王家や騎士団ともぎっちりコネが得られましたし、当クラブもベレニケ様の口コミで来年から新入部員で一杯になるわぁ~


(私は今年の夏で卒業を迎えるけど、きっとフレンズィーなダンスクラブは続いてくれるわよねぇ、うふふ)


フーベルト様のエスコートで貴族の皆様が立ち並ぶ場所へと移動しながら、内心でほくそ笑んでいた私は知らなかった



「貴女様とのダンスでなければ私は怖くて踊れません、だからどうか私の生涯のパートナーになっては頂けませんかっ!?」


とフレンズィーな一夜が終った後にフーベルト様から正式に求婚される事を



「あのダンスで私の戴冠式の開始演出をしてくれないかな?君達の先導で王冠を持ってくるベレニケの姿が見たいんだ」


と次期国王のメルヴィル王子から直接フレンズィーなダンスで戴冠式演出の依頼される事を



「サイラス王子を取り押さえる姿が格好良かったです!」

「どうかあの技の伝授を!」


と何故か私が設立したのはフレンズィーなダンスクラブだったはずなのに、「女性向け護身術」を身に着けたい生徒達ばかりが入部殺到した事を



「君がクラブ長を辞めては来年からのデビュタント・ボールが立ち行かなくなるから、これからもクラブ活動は続けてね」


と学園長と国王になったメルヴィル様から、学園を卒業した後もダンスクラブ直属のコーチ役を打診された事を



「どうかこの子にあの時のダンス特訓をお願いします、ウィニフレッド様ぁ~!」


とあの婚約破棄劇から十数年が経ち、王子一人に王女二人を設けたベレニケ様が泣きながら母親似の運動神経を生まれ持ってしまった末っ子姫様のダンス特訓を頼んでくる事を



後に私のゴージャスでエキサイティングでフレイズィーなダンスが「得物無しで拘束する護身術」という名前で後世までに独り歩きしていくのは、私がこの世界で息を引き取った後の事で



サイラス(元)王子が私の事を「悪」とおっしゃる程の、ヴィランな気高さをフレンズィーなダンスで世に知らしめようと奮起していたこの時の私は全然知らなかったのだ



p.s.

サイラス(元)王子が詰め込まれた塔は5年もしないうちに不審火にあったそうで、中身丸ごと焼失したとの事で、古い物語の如く予定調和的に終わりましたとさ

ご拝読して頂きまして誠にありがとうございます

感想や下の☆からの評価等頂けましたら幸いです

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