第1話「賞金の誘惑」
誰もが挑戦できるわけではない、謎の選抜ゲーム。
優勝賞金は1,000万円。
顔出し可能で、やましいことのない者だけが応募できるという条件のもと、未知の緊張が参加者を待ち受ける。
画面に表示された文字を、俺は じっと見つめていた。
誰もが挑戦できるわけではない、謎の選抜ゲーム。
優勝賞金は1,000万円。
ルールは いたって簡単。将棋や囲碁、麻雀、ポーカーなど、他にも色々ある中で、あえて誰にでも分かる【ババ抜き】。ゲームの様子は配信されます。
参加資格
・顔出し可能な方
・やましいことのない方
顔出しか…。しかも、配信……まあ、俺はイケメンだし大丈夫だろ。
やましいこと? 何もない。俺は清廉潔白だ。
よし、応募してみるか。
「やましいこと……ない、よな?」
再び自問自答すると、思わず肩の力が抜けた。
送信ボタンを押す。画面が一瞬白くフラッシュして、次の文字が現れた。
『応募完了。参加できる方には後日ご連絡いたします。』
なるほど、ここで落ちる人もいるのか。
俺は思わずニヤリとした。
「優勝賞金1,000万円か……競争倍率高そうだけど、ダメ元だな」
数日後、スマホにメールが届いた。
開くと、こう書かれていた。
『悪沢 劣 様
おめでとうございます。あなたは参加者として選ばれました。参加希望の場合は、◯月◯日までに返信してください。』
返信する前に、もう一行の注意書きが目に入った。
『対戦相手は、顔も身体も覆面やマントで隠され、声も変声されています。』
ふむ、なるほど。顔や声が分からない相手と戦うわけか。
でも、俺だけ顔出し…。
「まあ、賞金1,000万円だ。多少目立っても構わないだろ」
期待と少しの優越感が混ざった複雑な気持ちで、俺は即返信した。
「参加します。」
これで正式に、ゲーム参加者の一人になった。
対戦相手も、ルールも、まだ何も知らない。
未知の世界に足を踏み入れる緊張と、賞金への期待が胸の奥で混ざり合う。
その日の夜、何度もスマホを覗き込みながら考えた。
「覆面か…。向こうは顔が隠れてるのか。俺だけ顔出して損してる気もするが、相手は運営側の人かもしれないしな」
背筋に少しだけ冷たいものが走る。
画面の向こうで何が待ち受けているのか、まだ何も知らない。
軽い気持ちで返信ボタンを押した自分を、少しだけ疑った。
「…本当に、これだけで済むのか?」
期待と不安が交錯する中、俺はスマホを手に握りしめたまま、眠れぬ夜を過ごした。
貴重な時間を割いて読んでいただき、ありがとうございました!