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緊迫(11)

 

「12万人……」


 呻くような不曲の呟きが机に置かれたメモの上に落ちた。

 それは、ロシアが侵攻して以来強制的に連行されたと言われている子供の数だった。

 大人を入れれば65万人に上るという。

 大変な数だ。

 ロシア側は連行ではなく避難だと主張しているが、そんな戯言を信じるわけにはいかない。

 実態は間違いなく連行なのだ。

『封印列車』と呼ばれる途中下車できない列車に乗せられてシベリアや極東に連れて行かれた可能性が高いのだ。


 パスポートも携帯電話も取り上げられて可哀そうに……、


 どんな扱いを受けているのか考えるだけで背筋が凍る思いがしたが、ユニセフの報告にも驚愕(きょうがく)した。

 ウクライナで自宅を追われた子供の数が500万人に上るというのだ。

 これは全体の三分の二に相当するらしい。


 この子たちはどうしているのだろう……、


 国外に逃れられた人たちは安全で支援も手厚いだろうが、問題は国内にとどまっている人たちだ。

 ライフラインが破壊され尽くされている中でどういう生活をしているのか気になって仕方がなかった。

 飢えていないだろうか、

 病気になっていないだろうか、

 精神的に参っていないだろうか、

 などと考えると気が滅入るばかりだった。


 支援物資の遅延も心配だった。

 戦闘が続いているために必要な人に届いていないのだ。

 水や食料、医薬品といった必需品は正に命を繋ぐものなのだが、それを届けられないとすると、直接の戦闘以外で命を落とす確率が高まってしまう。

 だからなんとかして届けたいのだが、補給ルートが遮断されたり妨害される中で、現地のスタッフも思うように動けないでいる。

 打つ手が限られているのだ。


 それに、人身売買も心配だった。

 避難している先で巧みに声をかけられて被害に遭う人が少なくないのだ。

 戦争に追われて、やっと逃げたら今度は人身売買の危険が迫ってくるなんて、なんということなんだろう。

 不曲は頭を抱えるしかなかった。



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