後悔
三題噺もどき―ごひゃくごじゅうきゅう。
温かな陽気が窓から差し込む。
カーテンを開き、日向に当たる。
最近は突然冷え込んできたもので、家の中がものすごく寒い。周りにも家が建っているせいか、このリビングは割と影になるのだ。自室に行けばそれなりに……二階なので陽は入ってくる。そうなればそれなりに温かいが、本棚があるので正直あまり陽に当てたくない。
「……」
ので、冷えはするけど、日中はまだ暖かいリビングにいる。
日向ぼっこをするつもりで来たわけではないが、ソファが窓側に置かれているので、結果日向ぼっこ中みたいになっている。暖かくていい。
「……」
何か食べようかと思って部屋から降りてきて、何時間たっただろう。
ソファに座り込んでそのままの流れで寝転がってしまったから何もやる気がなくなった。
毎日変わらず、バイトの求人探しをしては、結局何も決まらずに終わっている。
なんというか……田舎というのもあってか、どの求人も似たように見えるし、時給に対して差があるわけでもないし。最低賃金もいいところだ。
「……」
大抵はスーパーとかのレジ打ち、品だしというところだろうか。
まぁ、それでもいいんだけど、正直接客をしたくないと思っているところがあって。そう簡単に、じゃぁこれでとは言えない。
「……」
そういうなら、さっさと自分のしたいことでも探して、正社員として仕事にでもつけばいいのにと、母に言われたのだけど。
母は専門の学校に行って資格を取ったから、今の仕事をずっと続けているわけだし。父は高卒で今の仕事についているから……正直、両親が就職活動らしい、そいう活動をしていたとは思えない。というか父は自分でそう言っていた。
「……」
その癖に、次をさっさと探せだのなんだのと言われると、なんとなく腹に据えかねてしまう。
そう簡単に事が済めば苦労はしないし、今こんな状況に陥っていないと言うのに……。
「……」
最初から。
最初の就職活動とやらの時点から、私は間違っていたのだと思う。
頭のどこかに、やりたいことは確かにあったはずなんだけど、それを仕事にすると言うことは無理だとずっと昔に言われていたから。やりたいことをするなんて発想自体がなくて。
なんとなく、できそうだったし、という理由で仕事を選んだから、現状に至っているのであって。
「……」
やりたいことを仕事には出来ないと言ったのは母の癖に。今になって、やればいいじゃないなんて言われも……そう簡単に出来るような性格ではなくなった。
「……」
夢を語れる人が羨ましいと、SNSやテレビを見ていて思うことが多くなった。
楽しそうに、誇らしげに、瞳を輝かせて、つらつらと。
あれがやりたい、これがやりたい。
あの人にあこがれている、この人を尊敬している。
「……」
あんな風に。
私は、僕は。
生きていきたい。
「……」
そんな風に。
私は、語るものも、語ることも、出来ない。
「……」
自分のやりたいことを、否定されると言うのは、それなりに、誰もが経験がありそうなことだとは思うけれど。それを跳ね返す力が、私にはなかった。それをばねにしようなんて気持ちにはなれなかった。
「……」
一度だけ。
そんなことをしたこともあったけど。
やりたいことがあるのだと言ったことがあったけど。
鼻で笑われて、終わったのだ。
「……」
そんな風にあった人間が、今更になって。
やりたいことをやればいいのと言われでも、できるわけがないだろう。
少なくとも、私は、出来ない。動けない。そう簡単に、ならやろうとは思えない。
「……」
毎日、時計の針が進む度に。
今日も一日無駄にしたと後悔して、無駄に生きたと後悔して。
起きるたびに、さっさと死にたいと後悔して。
「……」
そうして、後悔し続けるだけで、何も出来ない。
後悔をして。
後悔をして。
終わり。
「……」
今日もこんな無駄な思考をぐるぐるとし続けて。
一日を無駄に生きている。
お題:夢・日向・時計