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第11話 帰り道ひとりきり

 懸念だった体力は持ち、巴は無事バイトを完走した。なんだかんだ臨時ということに配慮してくれ、休憩を多めにくれたから全うできた。


 その帰り道。アルバイト先のドラッグストアから巴の家までは徒歩10分もかからぬ近さだが、信号のない最短ルートを選ぶとさらに1〜2分タイムを縮められる。ただ、そのルートは局所的に人通りの少ない道を通るので、夜は安易に使わないようにしていた。疲労がMAX寄りの日以外は。


 ……というわけで、連日のバイトでお疲れモードの巴は頼りない街灯の下、すっかり暗くなった夜道を行く。住宅街はそれなりに人や車の往来があるので、本格的に人気がないのは公園の脇の道だけだ。


 日中は小学生たちで賑わっている見知った公園だが、夜はその顔を変える。どこか不安を掻き立てる気味の悪さ。まるで得体の知れない場所のような異世界感。そんなことを思ってしまうのは、やはり昼と夜のギャップが激しいからだろうか。親しい人の知らない一面を見た時みたいな。


「ギャハハ!」

 静寂を破る楽しげな笑い声。品のない——失礼、あまりお行儀のよろしくない男女の歓声が無遠慮に夜の空気を切り裂いた。それと同時に、公園から黒い原付バイクが走り去っていく。2人乗り。後ろの女子は制服を着ていたように見えた。


 カップルだろうか。夜は人の気配がしない公園だと思っていたけど、愛を育む場にもなっていたなんて……! とはいえ、別におかしな話ではないか。夜の公園とラブラブカップルなんて、いかにもな組み合わせだった。私にもそのうちそんな日が訪れるかもしれない……とか妄想などしてみる。私は恋する乙女か! と自分でツッコミを入れる結末を迎えた。


「……?」

 公園の入口に差し掛かり、気付く。声がする。先ほどのような笑い声ではない。それとはまったく逆の……そう、すすり泣くような。

「————!!」

 それに気付いた瞬間、全身に鳥肌が立った。人は耳慣れない、あるいはそこで聞こえるはずのない声や音に少なからず恐怖を覚える。理解の外にある出来事を前に硬直し、悪寒に身震いしてしまう。


 なんで。よるのこうえんで。おとこのひとのなくこえが——。


 例えば痴漢や不良ではないだろう。それは分かっている。なのに怖い。なんでだろう。分からない。それなのに。分からないから。だから、怖いと思ってしまった。

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