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(俺みたいな人間族の事を警戒もしないのか? いや違うな歯牙にもかけないという方が正しいか。ならこっちも少しは正直に話すか……)
「ではお言葉に甘えます、シオウさん。単刀直入にお伺いしますが……貴方達は私達を捕らえに来たのですか?」
俺の質問に対して今度はシースさんが驚いた表情になったが俺は構わず話を続けた。
「俺達の事は最初から警戒されていた様子でしたのでそう思ったのですが間違っていましたでしょうか?先程から門番をしていた狐人族の方々も気が抜けないように此方を見ながらでしたしね……まぁ、敵意がない事も調べていたようですので問題はないと思っていたのですが……」
俺がそう言うと、シオウさんは笑いながら答えた。
「はっはっは!面白い奴よのぉ!良いぞ……正解じゃ」
やっぱりか……
(まぁ、本来なら、いきなり友好的な態度になられても逆に警戒するだけだけどな)
「それは良かったです」
俺は頭を下げつつ言葉を続けた。
「では、本題に入りますが……私達を捕らえる目的は何なのでしょうか?」
俺がそう尋ねるとシオウさんは笑いながら答えた。
「まずはお前さん等の正体が分からんかった事が主な理由だな。次にこの島、儂らは楽園と呼んでいるが、この島に来た理由が知りたかったのだ」
「なるほど……私達の正体とは?」
俺がそう尋ねると彼は少し真剣な表情で言った。
「率直に聞くがお前さん達は何者じゃ?特にお主、ライルの気配は人族そのものなのに、儂らと張り合う胆力に他の者達を圧倒する魔力の質。とても普通の人間とは思えないのだが?」
「そうですね……この島に来た理由は嵐に巻き込まれた結果、私の乗っていた船が難破したので……此方の2人は同じく嵐の被害を受けたのですが、計器類の故障だけで済んだそうで、手分けして部品を探していた所です」
俺がそう言うとシオウさんは少し考える素振りを見せた後に口を開いた。
「なるほどな……お前さん達は嵐に逢ってこの楽園に来たと言うのか……」
(何か引っ掛かる言い方だな……)
「そうですね……それと魔力の質?という質問でしたか、私の魔力量が生まれつき多いせいだと思います」
(少し誤魔化したが大丈夫かな?)
「ふむ、そうか……」
シオウさんはそう言った後、考え込んでしまった。俺は先程の言葉が引っ掛かったので質問してみた。
「あの……魔力の質というのは魔術に関係がある事なんですか?」
そう尋ねると彼は頷きつつ答えてくれた。
「魔力の質とは個の持つ資質の1つでな、儂らなら火や風、雷に水といった具合に扱える妖術に影響する物だ。術の威力や効果が変わるので魔術師達なら1番気にするところだな」
シオウさんはそう言うと俺達を手招きした。俺達は素直に近付くと、彼は言った。
「見てみろ……」
そう言われて良く見てみるとシオウさんの手の平に火の玉が浮かんでいる
それは小さな明かりだったが、彼が狐人族であり火属性に適性がある事は見てとれた。
「ふむ……これが魔力の質ですか?」
俺は彼に訪ねると彼は笑いながら言った。
「はっはっは!まぁ、この程度は狐人族なら誰でも出来るぞ? ところでお主の魔力の質は見た事がないな?」
シオウさんの質問に俺は曖昧に答えることにした。
「私は少し変わり種なんですよ。魔力を直接扱うんです。武器に纏わせたりして」
俺の答えに対して彼は不思議そうな顔をしていたが追求する事なく話を続けた。
「それでお前さん達はこれからどうするんじゃ?」
そんな質問をされたので俺達は答えた。
「魔導鉄に計器類の部品を貰えれば、後は魔力流が止まってから、この島を離れようと思います」
俺がそう言うと彼は頷きながら答えた。
「わかった、用意させるとしよう……と言いたいが、この村では無理だ。見ての通り機械を扱う者が居らんのでな」
どうやら、無駄足に終わるようだが仕方無いだろう。
確かに、見たところ茅葺き屋根に土壁という造りの家がほとんどだ。機械的な物とは無縁そうな長閑な村に思えた。
「その代わりに機械を扱う者の集落がある。そこまで案内をしてやろう」
徒労に終わるかと思われたが、どうやらこの村以外に集落があるらしい。
詳しく聞くとこの島には集落が4つあり、其々が領分として棲み分けているとの事だ。
そのどれもが各集落に長を一人置き、独自の文化と技術を持っているらしい。
この村、妖魔の郷にはシオウさん機械を扱う集落にはロスカと呼ばれる人が住んでいるらしい。
他にも、この楽園と呼ばれる島には俺達の知らない種族が棲んでいるようだ。
「獣人族以外にもいるのか……」
そんな事を考えつつも俺はシオウさんへ返事をした。
「わかりました!よろしくお願いします!」
そうして俺達は新たな集落へと向かう事になったのだ。
「━━警告、これ以上の接近は敵対行為と見做し、攻撃します」
『機械の集落━━エザーゴノ』と呼ばれる所へ俺達が近付くと、突然目の前に機械兵が姿を現した。
「なっ!?」
俺は突然の事で驚きつつも刀を抜いて構えた。するとカヨウさんが驚いた様子で言った。
「ご主人様!危険です!!すぐにお下がりください!!」
「そうしたいのは山々なんだが……どうやら話し合いで済む相手じゃないらしい」
(これは周りにも気配がする……囲まれてるのか)
俺が周囲の気配を探っていると、機械兵のスピーカーから声が聞こえてきた。
『私は楽園防衛軍所属ロスカ•シェリーと申します。これより貴方を楽園に害する者と判断し攻撃を行います』
その言葉と同時に機械兵からガトリング砲が唸りを上げながら弾丸を放ってきた!
「くっ!」
俺はそれを避ける為に咄嗟に後退するしかなかったのだが……それでも尚、襲いかかってくる。
そして、当たった箇所が瞬時に爆発を起こした。
(炸裂弾か!?)
そんな事を考えつつ、何とか躱しているがこのままだと埒があかない! すると後方からシースさんが叫んだ。
「ライル殿、援護するぞ!殿は私が受け持つ後退を!!」
そう言った直後、シースさんが詠唱を始めた。
「火よ……」
その言葉と共に炎が竜巻の様に渦を巻きながら機械兵に向かっていった。
すると機械兵はその動きを止める事なくそのまま砲撃を続けたが……シースさんの放った炎が命中した瞬間に大爆発を起こしたのだ!
(あれは火薬に引火させたのか!?)
俺はその光景を見て驚いてしまったが、同時にチャンスだと思った。
その為に走り出そうとしたのだが……その瞬間、四方八方から宙に浮く機械の箱が現れたのだ。